KELESセミナーでいただいたコメント・質問に答えます(前半)

先月のKELESセミナーでは,最後にフロアからの質問やコメントを紙で受け付けて,それに各講演者が答えていくというようなセッションがありました。その場でうまく答えられなかった質問もありましたので,ここで改めていただいた質問やコメントについて,私なりの回答を書いておきたいと思います。質問に答える順番は単純に今持っている用紙を上から順番に書いていきますので,特に他意はありません。


コメント①

You need to study more and experience teaching English before giving your presentation in a seminar.

The data on 言語活動 might be rubbish if you don’t define 言語活動 clearly.

What you said today sounded sharrow [原文ママ] or fake.

It’s waste of time for us to listen to you. Sorry to be harsh but it’s quite true.

お返事①

大変率直なご意見をお聞かせいただき,ありがとうございました。講演のお話をいただいたときから,「私のようなものに講演者が務まるのだろうか」という不安はありました。その不安が的中してしまったようです。年末の貴重な土曜日のお時間や参加費が「無駄」になってしまったこと,大変申し訳ありませんでした。

さて,言語活動の定義についてですが,補足させていただきたいと思います。投影資料の11ページ目からになりますが,授業時間における言語活動の割合というお話をさせていただき,中高で比較して,中学校の方が多いということを申し上げました。言語活動は学習指導要領においては概念的に定義されているというよりも,具体的な活動として示されていると私は理解しています。また,中学校で求められる言語活動は,高等学校で求められる言語活動よりも基礎的・基本的なものも多いです。その意味で,高等学校での言語活動の割合が低いというのは,言語活動という言葉でカバーされる活動がそもそも中学校の方が多いので,授業時間内に占める言語活動の時間の割合が高くなっているのかもしれません。質問者の方のコメントが私が推測したような論理に基づいているのだとすれば,その点についてはご指摘のとおりかと思います。

ただし,もし仮にそうであったとしても,中学校と高等学校で全く同じ内容の指導が行われるのだとすれば,それは中学から高校へとあがっても教科内容が発展していないことになります。その点で,高校でより発展的なことが言語活動として設定されることは自然なことだと思います。もちろん,現実には中学校での内容が身についておらず,高校でもまた中学校の内容から,という場合も多いかと思います。それは理解した上であえて申し上げるならば,「これは現実として仕方ないのだ」としてしまうのではなく,松村さんが指摘したように,英語教育が「どこで躓いて落ちるかのゲーム」になってはいないだろうか,と考えることもできるかと思います。

このように考えると,言語活動が指し示すものが中学と高校で異なっていることや,そのことで言語活動の割合が変わることは事実かもしれませんが,それだけで私がお話した内容が”rubbish”になるとは思っていません。なぜなら,言語活動の話はその後の19ページ目からの教員の意識という話と接続していくからです。高校での言語活動の割合が低いから高校教員はダメなんだ,というようなことを私はお話したかったわけではありません。また,最初にお断りしたように,大規模調査の結果は日本のすべての教室の現場と100%一致するわけではありません。言語活動をたくさん取り入れた授業をしておられる先生方も多いかと思います。私が言語活動の話や教員の意識の話を持ち出したのは,「ざっくりと」現状を見て,言語活動の割合が低下したり,音読・発音練習・文法説明が行われる頻度が高かったりするとき,それが必ずしも教員の意識改革だけで達成される問題かという部分に焦点をあてたかったからです。ある指導の選択に関わる要因は教員のビリーフだけではありません。つまり,どれだけ優れた指導力があって,タスク・ベースの言語指導にシンパシーを感じても,それが実行に移せないケースもあるということです。その状況で,どれだけ理念を説いたり理解を促そうとしても,「できないものはできない」となってしまいます。これは,研究者1人が何か研究をすることで,あるいはそれを広めることで打開できる問題ではありません。しかし,だからといって,いわゆる「現場」への介入や干渉を求めるような外国語教育研究者が無視していい問題でもありません。

質問者の方に満足していただけるかはわかりませんが,私からのコメントは以上です。これからもっと勉強して,また,指導の経験も積んでから出直してきたいと思います。ありがとうございました。

コメント②

学習者の自由度を保障することと,学習者が発案した言語形式・表現形式(インターランゲージであっても)を形式的に評価すること,コミュニケーションが成立した事例を相互分析して次のタスク達成へのヒントとすることで,学習に発展が期待できるのでは?

お返事②

コメントありがとうございます。「形式的に評価」というのがどのレベルでの評価かはわかりかねますが,学習者が使用した言語形式や表現と,タスクが成功したか否かを分析するというのは意義があると思います。タスクの達成の鍵となるのは言語にかぎらず非言語的ストラテジーである場合もありますが,タスクの後のフィードバックでは基本的に「どのようにしたらタスクができたか,あるいはもっとスムースにできたか」といった点に焦点をあてるようにしています。質問者の方のご指摘のとおり,自由にやらせてみて,そのあとに「こういう質問をしてたけど,でも質問の仕方をこういう言い方にしたら相手も答えやすかったんじゃないかな?」というような具合です。

研究的に考えると,タスクの達成と非達成を分ける言語的要因を探るということになるかと思います。これは,言語形式を細かくみるということではないですが,例えば流暢さ,正確さ,複雑さの要因のうち,プロダクトの全体評価を予測する要因は何か,といったようなかたちでの研究はすでに行われています(e.g., Plakans, Gebril, & Bilki, 2016)。これを,あるタスクを達成したかどうかと,言語形式の使用という観点で見ていくというのは面白そうです。ただし,このアプローチの問題点の1つは,帰結として,タスク達成のためには「この形式を使えば良い」ということになり,それはつまり会話パターンを覚えて使えばよいということになってしまいます。これは,タスク・ベースの言語指導のもつ理念とは相容れないものです。

だからといって,あるタスクを達成するためにどんな言語的・非言語的リソースが役に立ちそうかというフィードバックを一切与えないわけにもいきません。大事なことは,どんなときでも「それを選択する」機会が保障されていることかなと思います。つまり,あるタスクが与えられたとき,自分が持つリソースの中からそのタスクでusefulな言語的表現をその場で学習者自身で選んで使えることを保障したいということです。

コメントをいただきありがとうございました。

コメント③

本日はお話ありがとうございました。教員が感じている課題に対し,発想の転換を提案していただき,考えさせられました。

少しずつでもタスク・ベースを取り入れていける様,努力したいと思います。

お返事③

コメントありがとうございます。少しでも私の話しを肯定的に捉えている方がいらっしゃってホッとしています。実践のことについてはタスク本をご参照ください(宣伝。ただしリンクは貼りません)。

コメント④

本日はありがとうございました。御著書を事前に拝読してから,今日のお話をうかがったので,より理解を深めることができました。

  • PPP型の授業より,かなり教員の指導力(手腕)が問われるかなと感じます
  • ”何ができるようになったか”生徒自身に言語化させる(ふり返らせる)時間はやはり取るべきでしょうか?
  • タスク型の自宅で取り組む課題を考える時,留意すべき点はありますか?(T-S,S-S間のinteractionは授業中の活動のように行えないので)また,例としてどのようなものが考えられますか?
お返事④

コメントありがとうございます。タスク本をお読みいただいたとのこと,誠にありがとうございます。3つの質問とコメントについて順番に答えさせていただきます。

1つ目,教員の手腕ということですが,「よりも」かどうかは明確に言えないかなと個人的には思います。PPP型であっても,oral introductionやpattern practiceをスムースに展開したり,最後の言語活動をどう構成するかやどう取り組ませるか,についてはそれなりの指導力が必要かと思います。ですから,PPP型で良い授業をされる先生は仮にタスク・ベースでこんな指導やってみてもらえませんかとお願いしても,うまくやれるのではないかと思います。

どのような指導形態であっても,英語力や学習者への臨機応変な対応などはよい授業を作るために教師に求められる能力だと思います。ただし,事前に準備したり,学習者の対応を予測しづらいというのはタスク・ベースの方が少しあるかもしれません。ただどんな授業でも予測できないことが起こるのが教室という場所だと思いますし,それをうまく学びに変えたり,教師自身が楽しめるのが大事かなと思います。

2つ目,振り返りの時間のことですが,これはやったほうがいいと個人的には思います。どんな授業をやったとしても,その日になにを学んだかや次の授業にどんな目標をもって臨むかということを少しでも考えてもらわないと,学びが蓄積されていかないのではないかなというのが個人的な考えです。特に,学習の成果が教科書やノートを見ればわかるようなものではなく,その日に教室で自分がした行動が学習の成果になるわけですので(もちろんワークシートに何らかの軌跡は残るでしょうが),それを蓄積していく手段をなんらかの形でとらないと,「なんかやって楽しかった」,で終わってしまうと思いますし,最悪の場合「結局なにもできなかった」,となってしまうかもしれません。

振り返りをするにも,ただ単にふり返らせたり,できたこと・できなかったことを自由に書かせると有意義な振り返りにならないこともあるので,その授業時間の目標を明確に提示して意識させたうえで,場合によってはそれを学習者自身に書かせた上で,それが達成されたかどうかを書かせたり,達成されなかったとしたら原因はどこにありそうかを考えさせたりという方法で最初はやっていくのがよいかもしれません。

3つ目,自宅学習についてですが,自宅学習でタスクと考えるのではなく,授業の構成を考えて,教室場面でしかできないことと,教室でなくてもできることに分けてみて,教室でなくてもできることを自宅学習に回すと考えるのが良いのではないかと思います。例えば,メインのタスクに入る前の事前タスクとして何かを読んでくる,あるいはキーワードの意味を調べてくる,といったようなことを自宅学習の課題にするという発想です。こうすれば,メインのタスクのために十分な時間を授業内で確保することが可能ですし,タスクを繰り返し行うことにもつなげられるかもしれません。また,話した内容について,事後タスクとしてのライティング課題を宿題として書かせてくるということも考えられます。個人的には,教室に学習者が集まっているからには,その中で1人1人が黙々と個人で作業する時間はもったいないと思ってしまうので,そうした時間を自宅学習に回すようにと考えています。ただし,1人ではできないというケースもあるかもしれませんので,授業でいきなり全員が事前タスクをやっている前提で始めたりせず,まずはペアやグループ,隣近所で確認したり教え合ったりする時間を少し設けることも必要かもしれません。事前タスクが渡された授業を休んでいたという場合も,ここでcatch upさせてあげられます。

もう1つ考えられるのは,どうしても文法演習や単語学習,音読などを含む,「既存」の英語授業と併用してタスクベースの授業を運営しなければならず,授業時間が足りないという場合に,文法演習やその解説を自宅学習にまわしてしまうということも考えられます。今風の言葉でいえば,「反転学習」とも言えるでしょうか。私は昨年度後期から,教科書の文法演習のセクションについてはすべて宿題として,授業用ウェブサイトにアップロードした自作の解説動画を見て答え合わせをさせるようにしています。もちろん,このことによってほとんど宿題をやらないというケースも出てくることは危惧されますよね。そこで,その対応として,やった「証拠」として,答え合わせ後のページを写真に撮って提出させています。これを見れば,「全部赤で書いてあるやん」とか「答えを全部書き写してから全部○したな」とかすぐにわかってしまいます(たまに答えを間違えているのに○されていたりとかしますので)。もちろん,これだけで全員に100%で取り組ませることはできていないかもしれませんが,それは教室内で時間を取って解説したり問題を解かせたりしても同じことかなと割り切ってしまっています。

ということで,自宅学習については事前タスク・事後タスクとして1人でもできる部分があるものを自宅学習課題として位置づけるという方法が1つです。もう1つは,文法演習や単語学習,音読課題など,既存の英語授業で行っていた活動を授業外の学習にあてるという方法です。

ご質問にうまく答えられているかわかりませんが,私からのお返事は以上です。コメントありがとうございました。


あと4枚残っているのですが,ここまででだいぶ長くなってしまったので,後半は別の記事としてアップしたいと思います。ここまで読んでいただいた方,また,この記事を御覧頂いているかわかりませんが,コメントを書いてくださった方,ありがとうございました。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

KELESセミナーでいただいたコメント・質問に答えます(前半)」への1件のフィードバック

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