博士後期課程で学んだこと

2014年4月に名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程後期課程に入学してから4年,たくさんの先輩の背中を追いかけていたらいつのまにか自分が追いかけられる立場になり,そしてついに博士後期課程を修了しました。

名大に来てからたくさん学んだことがあって,それが今の,そしてこれからのベースになっていくのだろうと思います。そんなたくさんのことから,私自身が学んだことをいくつか書き記しておきたいと思います。自分のために書きますが,今名大に残っている後輩や,これから(名大に限らず)大学院で学ぶ人たちにも何か得るものがあれば良いなと思います。

以下に書くことは,あくまで私が「学んだと思えること」,そしてその中で「その事を学べて良かったと思っていること」です。これが唯一ということでもないですし,色々なやり方や考え方があると思います。

まず1つ目は,議論する事を恐れないということです。当たり前のように思われるかもしれませんが,これが意外と難しかったりするようです。ゼミや授業の中でも,プライベートな飲み会や休憩の中でも,とにかくたくさんのことを議論したことは本当に財産だなと私は思っています。ただ黙って聞いているだけでも,得るものは多い環境だったと思います。ただ,その何倍も自分を成長させてくれたと思うことは,自分が考えたことを口に出す経験を毎日繰り返したことでした。

私は以前,アカデミックな議論ができるようになるにはインプットだけでいいのか,それともアウトプットが必要なのかという記事を書いたことがあります。今思うのは,おそらくアウトプットが必要なのではないかということです。修士の後輩を見ていても,よく発言する人はグンと伸びるなという気がします。

私はブログを始めてかれこれ5年近く経ちますので,自分が考えていることを言葉にして,そして発信するという経験は名大に入る前からある程度は積んでいたつもりです。また,一時期ツイッターにはまっていて1日平均100ツイートくらいしていた時期もありました。その時も,ネット上ではワーワー言っていてツイッター上で議論もたくさんしました。そういう経験もあったからこそ,すんなりと入っていけたというのもあるかもしれません。ただしその経験を抜きにしても,アカデミックな議論をする際にはみんなが平等であり,先輩・後輩だとか,先生と学生だとか,そういう垣根なく自由に活発な議論を行える場があったということは本当に貴重な経験であったと思います。そういう日々の積み重ねがあったからこそ,学会での質疑応答にもそれなりに参加できるようになったのだと思っています。

2つ目は,とにかく研究に没頭するということでした。これも意見は分かれるところかもしれません。あまりに研究ばかりしていて周りが見えなくなったり,あるいはメンタル的に落ち込んでしまって病んでしまうということもあるかもしれないからです。私はメンタルが多少はタフだったのか,毎日毎日1日のほとんどの時間を研究室で過ごすことは苦ではありませんでした。もちろん,時期によっては気分が乗らずに部屋から出ないということもありましたが,そうしたことは数えるほどしかありませんでした。むしろ,周りの先輩たちは毎日研究室にいましたので,それが当たり前だと思っていたということもあります。それに,大学院生でも博士後期課程となれば研究活動は給与の発生しない「仕事」ですから,お給料をもらって働いている方と同じかそれ以上に「勤務」しないのはサボっているのも同じだとも思っていました。

念のためですが,こうしたしばき根性を正当化したいわけではありません。わたしにはそうした環境が合っていたというだけです。また,名大に来る前には中学校で働いていましたから,辛いとか大変だとか色々はありつつも,毎日研究室に来て自分のやりたい研究に没頭できるということを「大変だ」と思ったことはありませんでした。「中学校の激務に比べればなんてことはない」という気持ちでいました。

もちろん,息抜きは適度にしていたと思います。たまに外でキャッチボールしたり,少し足を伸ばして飲みに出かけたりということも院生仲間でやっていました。個人的にはAmazon Primeビデオで映画やドラマをたくさん見たり,DAZNでサッカー中継を見たりもしていました。

話を戻すと,2つ目の研究に没頭するという事と,1つ目の議論する事は,相乗効果を持っているとも思っています。1人で頭の中で考えててもやはり限界があると思うので,その時に自分を次のステージに連れて行ってくれることが多かったのは人に話す機会を持った時だったなと振り返って思います。学会やゼミでのフォーマルな発表に限らず,色々な機会で人と話すことで思考が整理されたり,自分には見えていなかった視点が見つかったりしました。そして,この人と話す機会を増やすということが3つ目です。

人と話す機会を増やすには,学外に積極的に出て行くことも必要になります。同じ環境でいつも一緒にいる人と話をしていると,お互いの考えが似通って来たり,ある話題に対して共通の見解を持ちやすくなることが多いと思います(私はそうでした)。その時に,学会や研究会に行って普段話す機会の少ない人たちと話をすることはすごく刺激になりました。私はあまりソーシャルなタイプではないので,知り合いが全くいない学会では尻込みしてしまうタイプです。そういう方は,小さな勉強会や研究会に行ってみると良いかなと思います。人数が少ない方がコミュニケーションも取りやすいですし,小さな会は週1や月1など,学会の大会よりも頻度が高いので,つながりも構築しやすいです。私はD1の夏くらいから名古屋で行われている研究会に毎月参加するようになりました。そこに参加して毎月輪読と発表をしていたことで,自分の研究のみにのめり込みすぎず,視野を広げていられたと思っています。

最近は休止してしまっていますが,Skype読書会で学んだこともたくさんありました。イントロ系の本でも,何回も読めばその度に違う視点で読むことができましたし,自分の意見を述べたり,要約して説明したりする練習にもなりました。論文の輪読になっても,普段なかなか議論する機会のない先生方と論文を批判的に読む機会は貴重で,勉強になることだらけでした。そのツッコミは考えつかなかったなあということや,そのツッコミに対してこういう切り返しもあるかあなど,いつも頭をフル回転させて考えていました。和気あいあいな雰囲気でしたが,実は毎回緊張しながら参加していました。自分の意見は的外れじゃないかとか考えてしまって。それでも,そうやって自分の考えをまとめたり,意見を述べたりという機会を定期的に持ち,そして多様な考えを持った方々と議論できたことは自分を成長させてくれたなと思います。

1つ目の議論することを恐れないということも,こうした研究会や読書会に定期的に参加していたことと無関係ではないでしょう。読書会や研究会に参加して,「何も言わずに過ごす」ということはないわけで,「とにかく何か自分も発言して,貢献しないといけない」という状況が当たり前だと思うようになりました。ゼミだとそれでも誰も何も言わない環境でしたから,プライベートで議論する機会や研究会や勉強会に出ていなかったら,今のようにアカデミックな議論をする力は身についていなかったかもしれません。

最後は,とにかくたくさんのデータを見て,触って,考える,ということです。これは個人的になんらかの量的データを扱う研究をしているからですが,生のデータを自分の手で(というかRで)分析するという経験をたくさんしたことで,統計の知識だったり考え方だったりが割とスムーズに入ってくるようになったと思います。とにかく手を動かして,わからないところは調べて,「こういうもんなんだ」というところはひとまず「そういうもんだ」と思って先に進み,ということの繰り返しでやっていたかなというのが私の経験から言えることです。

統計の技術的なことについては,解析技術の進歩がものすごく早くなっていることを鑑みて,「身につける必要がない」という人もいます。むしろ,そのベースになる数学や背景にある思想こそを身につけるべきだという意見です。これには一理あると思います。しかしながら,私は100%同意はできません。なぜなら,実際にデータを扱って分析してみるという経験無しには難しいと思うからです。つまり,ふつうの文系(とくくりましたが言語教育系まで狭めた方がいいかもしれません)には数学や思想の理解はボトムアップ的な経験なしでは容易ではないように思います。

生のデータに数多くあたってデータ処理や分析をやるからこそ,数学的なことも付随的についてくるのかなというのが個人的な印象です。私はそうでしたし,数学的なことは強いけど分析技術は全然ないという人を同じ分野で見たことがありません。あと20年したらそういう人も出てくるのかもしれませんが。

というわけで,皆さん色々お考えはおありでしょうが,私が思う院生として大事なことを4つあげました。4年間お世話になりました。今後ともよろしくお願いします。

なにをゆう たむらゆう

おしまい。

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博士後期課程で学んだこと」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 2018年の振り返り | 英語教育0.2

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