The Writing Mentorを使ってみた

Twitterで下のツイートを見かけました。

 

Google Docsで使える無料のライティング・フィードバックツールだと!?ライティングの授業を担当している私としてはこれは試してみるしかありません。というわけで,どのような機能がついているのかと,私の感想を書いておこうと思います。

はじめ方

  1. https://mentormywriting.org/に飛んで,”Download”をクリックします。
  2. Google Chromeのウェブストアに飛ぶので,インストールします(Googleアカウントの認証があります)
  3. Google Docsにアクセスしましょう。
  4. 下の画像のように,アドオン->Writing Mentor->Startをクリックします。

  1. 右側に,Writing Mentorが出てきます。下の画像の前の段階で,何の目的でライティングすることが多いかと,自分のレベルがどれくらいかを自己申告するものがあります(Grammarlyにもありますよね確か)。

  1. あとは,Google Docs上で何か書いて(またはどこかからコピペして),”Get Feedback”という緑のボタンをクリックすれば,フィードバックがもらえます。

どのような機能があるのか

フィードバックをもらいたいライティングプロダクトを入力して,緑のボタンを押すと,下のような画面が現れます。今回は,私が修士課程にいたときの授業の1つで,”Explain Bourdieu’s three kinds of capital.  Give some examples and tell how they are related.”というお題で書いた短い文章を使ってみました(他にパッと使えるものが思い浮かばなかったので)。

語数カウントと類義語検索

この画面では,左下に全体の語数のカウントが出ます。その隣には,目標語数が入力可能です。真ん中下の緑の”I’m finished”の右にある”Unfamiliar Words”は,単語を入力するとその類義語を表示してくれる機能のようです。テキスト中に含まれていない単語でもOKです。語数カウントは別にGoogle Docsの標準機能にありますし,類義語検索はGrammarlyのChrome拡張機能が入っていればダブルクリックで表示してくれるので,そちらのほうが便利ではないかなと思います。文中にないような類義語が知りたいという場面がどういうときに発生するかはわかりませんが,そういう用途があれば使えるということでしょうか。この2つは特にメインの機能ではないと思います。ただ,一ついいかなと思うのは,類義語検索した語とそのリストをテキストファイルで出力して保存できる点です。

includeは文書に含まれていたもの,insane(なぜこの単語)は文書に含まれていないものでした

フィードバック機能

フィードバックはConvincing, Well-developed, Coherent, Well-editedの4つの観点から提供されます。順番に見ていきます。

Convincing

Convincingはさらに”Claims”と”Sources”の2つに分かれています。要するに,書き手の主張はちゃんとサポートされているのかをチェックするよということのようです。”Claims”をクリックすると,”Hedge”, “Boosters”, “Standard”の3つの種類の表現がハイライトされます(全部一度にハイライトもできますし,個別にハイライトも可能)。

例えば,”Headges”では,can, could, tend toなどの表現がハイライトされます。ハイライト部分をクリックすると,下の画像のような文章が現れます。

ヘッジ表現を使っているけれども,ちゃんとこの主張はサポートされているのかい?ということですね。

“Booster”は逆に強めの主張で,willなどの助動詞や,Especiallyなどの副詞がハイライトされ,クリックすると上の画像と似たような感じで「これは強めの主張だけど,ちゃんとサポートされているのかい?」というメッセージが出てきます。

“Standard”はheadgeでもboosterでもないニュートラルなものと書いてありますが,ハイライトされたものを見てもどういう基準でハイライトが入るのかはちょっとよくわかりませんでした。

”Standard”でハイライトされた単語

おそらくですが,価値判断や主観が入るような単語や表現がハイライトされるのかなと思いました。クリックすると出てくるメッセージは「これはclaimかい?ちゃんとサポートされているのかい?」というものでした。

今回試しに入力した文章ではレファレンスがなかったのですが,レファレンスがあると”Sources”で確認できるようです。つまり,レファレンスに書いてあるものが本文中に書いてあればハイライトされるというような機能なのかなと思います。長めのレポートのチェックにかなり便利でしょうね。

Well-developed

この機能は,入力した文章の中で最も高頻度で現れた”main topic”と呼ばれるキーワード(多分名詞か形容詞に絞られていると思います)が示されるとともに,”topic keywords”と呼ばれるその他の重要そうな単語がハイライトされます。”topic keywords”は自分で追加・削除が可能で,変更するたびに”Apply Changes”をクリックすると変更が反映されます。

これは正直このフィードバック受けたあとにどうしたらいいかが先ほどのConvincingの部分よりもわかりにくいかなと思いました。入力した文章のせいかもしれませんが,文章のメインのトピックとそれに関連したサブトピックスのつながりとかそれぞれのサブトピックスについてちゃんと書けているのかといったことを確認していくことになるのかなという感じでしょうか。つまり,キーワードの周りを注意して読みましょうね,という。

Coherent

この下位分類として,Flow of ideas, Transition Terms, Long Sentences, Title&Section Headers, Pronoun useの5つがあります。Title&Sectiobn Headersはヘッダー入れようねということなので,長めのペーパーを意識したフィードバックかなと思います。今回は短い文章なので,それ以外の4つを見ていきます。

Flow of Ideasは,前のWell-developedとほぼ同様ですが,トピックが複数ある場合に有効なようです。今回は短めだったからかメイントピックは1つと認識されましたが,メイントピックが複数ある場合はそれに関連したキーワードのみを表示することが可能なので,複数のメイントピックがごちゃごちゃになっていないのかを確認することができるのだと思います。つまり,メイントピック1を書いている部分にメイントピック2のtopic keywordsが混ざっちゃってるよ!というようなことが視覚的にチェックできるということなのでしょう。このあたりは未確認なので,もっと長い文章で試してみる必要がありそうです。

Transition Termsはおなじみのやつですね。いわゆる接続語句で,Howeverなどの逆接や,for exampleなどの例示,first, secondなどの順序を表す語句などがハイライト表示されます。ハイライトされた語句をクリックすると,その単語の機能(As a resultをクリックすると,”Consequence”と出てきます)と類義語がリストで表示され,リストのうちの一つをクリックすると元の語句と入れ替わります。注意が必要なのは,この段階では文法のチェックはされないということです。よって,例えば文頭の”In contrast”の類義語として”in stead of”が出てきますが,それをそのまま使うと誤りになってしまうというようなことが起こるので,接続語句の使い方をわかっていなければいけません(in contrastとin stead ofはなんか違うような…)。

Long Sentencesは文字通り一文が長いものをハイライトしてくれて,2文以上に分割したら?と言ってくれます。これは一文に含まれる節の数で判断しているようですが,単純にそれだけではないようで,割と単純そうに見えるものでもハイライトされたり,逆にthat節の中に関係節が埋め込まれているというようなものはハイライトされなかったりしています。

 

Pronoun useは,文章中の代名詞をすべてハイライト表示し,

Do pronouns in your assignment refer to one clear noun referent? Read aloud the sentences containing pronouns to make sure that the references are clear to you!

という指示を出してくれます。さすがに代名詞の照応ができているかとかそんなことは見てくれませんが,「この代名詞なに指してんねん!」みたいなのは学生のプロダクトを見ているとしょっちゅうあるので,そこに意識を向けさせるだけでも良いでしょう。

Well-edited

最後に,文法などの誤りへのフィードバックです。下位分類として,Errors in Grammar, Usage & Mechanics, Claim verbs, Word choice, Contractionsがあります。

Errors in Grammar, Usage & Mechanicsは,文法の誤り,綴りの誤りなどを訂正してくれます。冠詞や数の一致はしっかり拾ってくれますが,統語的な誤りについては難しいようです。例えば,次の文(もとの文から関係詞を削除したもの)は誤りとして検出されませんでした。

it is obvious that children (who) have cultural and linguistic capital which is considered to be valuable would be able to achieve high social status, symbolic capital.

Grammarlyでも誤りにならなかったのでこういうのは機械では難しいのですかね。

Claim verbsはthinkなどをハイライトしてくれます。自分の主張をするときには有効だけど同じ単語を繰り返し使っちゃうこともあるから,見直して言い換えてみようというようなアドバイスがあります。ハイライトされた単語をクリックすると類義語が見れて,リストの単語をクリックすると入れ替わります。

ただし,文脈と関係なしにハイライトされることには注意が必要でしょう。例えば,上の画像の”thinkは”the ability to think”という名詞句の一部であり,書き手の主張を表すthinkではありません。

Word choiceは,主に余計な副詞がハイライトされるようです。very, really, absolutelyなど,おそらくですが主観に基づく強意副詞等について,「これ本当に必要なの?」とサジェストしてくれます。

Contractionは,省略形(don’tなど)がある部分をハイライトして,それを直すように言われます。これはワンクリックで直してくれたらありがたいですが,自分でタイプして修正しなければいけないようです。

感想

まずはじめにものすごくプラクティカルな問題なんですが,ウィンドウを大きくしてもWriting Mentorの部分は大きくならず,左右のスクロールをしないと本文とフィードバック部分を同時に見れないというのはかなり使い勝手が悪いです。これはフィードバック機能そのものとか以前の問題です。

 

私の環境の問題かもしれませんが,せっかくの42.5インチディスプレイがこのざまですよ。

というのはさておき,肝心なフィードバックの部分についてですが,教師が手とり足取りそれぞれのフィードバックの意味や改善方法を教えないと無理だろうなというのが率直な感想です。もちろん,何が問題か,どう直すべきかは英語で書いてあります。「英語で書かれている時点で厳しい」というレベルの学習者にとってはそこすらハードルになりえるかもしれませんが,そうではなかったとしても,「直し方」についての具体的なフィードバックはありません。私のような英語教師(高熟達度で自律的な英語学習者)だからこそ,「あーヘッジ表現ね」とか,「んーたしかにここはちょっと強く言ってる割には根拠レスだな」とか,「キーワードがぐちゃぐちゃってことはいろんなアイデアが混ぜこぜになってるわ」というようなことがわかるわけで,そのレベルにないほとんどの学習者にとっては教師のヘルプなしにこのツールを導入することは逆に大きな混乱を招きかねないと思いました。

また,文法チェックについては,上に書いたようにGrammarlyのGoogle Chrome拡張機能がGoogle Docsに対応しているので,そちらで対応するほうがシンプルだと思いました。もちろん,GrammarlyはCoherenceの部分は対応していないので,そこについてはWriting Mentorのフィードバックが活きてくるでしょう。

自分の授業に取り入れるかどうかはまだわかりません。Writing Mentorの導入段階でどのような指導が必要になるかをよく練った上で,上手にツールを組み合わせれば教師の仕事が減ることは間違いないだろうということは言えますが,問題は使い手次第ですね。「どう使わせるか」がかなり大事になってくると思います。繰り返しになりますが,ライティングで大事なことは何かがわかっている段階でないと,Writing Mentorがくれるフィードバックを活かしてよりよい英文を書くというのは難しいです。私が受け持つ外国語学部1回生のことを思い浮かべてみても,彼らですら使いこなせるかわからないと思ってしまうくらいです。エッセイライティングにフォーカスした授業だとしたら,カリキュラムのその後半部分や学年があがった段階で導入するのはありかもしれません。

最後に,私の印象ですが,これはタームペーパーのようなものが課題として想定されているのかなと思いました(最初の設定で変わるのかもしれません)。パラグラフ・ライティングや短めのエッセイだと,Writing Mentorのフィードバックのいくつか(例えばreferenceの部分やトピックのことなど)はそこまで有益なものにならないかもしれません。そのあたりの見極めも,実際にどのようなものを入力すればどのようなフィードバックが返されるのか,いろいろなタイプの文章で試してみる必要がありそうです。

おわりに

というわけで,Writing Mentorをちょっと使ってみたレビュー記事を書いてみました。機械の限界はあれど,こういうツールをどう使いこなせばいいライティングの授業ができそうかを考えるのは楽しいですね。みなさんもいろいろな文章で試してみてください!そして,ぜひぜひそれを共有してください。

なにをゆう たむらゆう

おしまい。

 

 

 

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The Writing Mentorを使ってみた」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: MS Word Online vs. Google Docs | 英語教育0.2

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