Slackを授業で使ってみてわかった課題

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はじめに

ちょうどオンライン授業だなんだということで,様々なツールの授業利用の情報がネット上に溢れ出した頃,私は下記のような記事を書きました。

オンラインで語学の授業をする際に取り入れたい「やりとり」のためのSlack活用

Slackを授業で使ってみて,色々課題が見つかったので,どんなふうに使っているのかということと,どんな課題があるのかということをここに書いておこうと思います。

基本的な利用方法

  1. 学生は授業開始時間になったらLMSにアクセスし,教科書に沿った課題を順番にこなす
  2. LMSでの課題が終わったら,slackに移動し,#discussionというチャンネルに投稿されたトークテーマでペアと会話する

おおまかな授業の構成はこの2点です。1の部分では基本的にリスニングやリーディングベースの課題をやります。その内容に基づいたペアまたはグループのインタラクションをslackでやるというのが2の部分です。slackでのやりとりについては,下記のような資料をLMS上にアップして見れるようにしています。slackでは英語でしかinstructionを出さないことにしているので,ポスト機能を使って英語版の資料を投稿しています。

1. 10時より前にここまでたどり着いた人は,一旦休憩してください。

2. 10時になったら,Slackを開いて,ShufflからのDMを確認しましょう。DMが一緒に来た人が今日会話するメンバーです。

3. まず,はじめましての挨拶だけして,誕生日を確認しましょう。誕生日が一番早い人が,最初に#discussionのチャンネルに投稿をして会話のスレッドをスタートさせます。例えば,”Let’s talk, @AAA and @BBB!”のように投稿してみましょう(AAAとBBBには同じグループの人の名前を入れます。こうすることで,どのスレッドに自分が参加すればいいのかグループメンバーがわかりやすくなります)。

4. グループの中で一番誕生日が遅い人は,司会役として会話をうまく回す役です。まず誰の話から聞くかなどを考え,全員が均等に発言できるように工夫しましょう。目安としては,1人が5回以上発言することが最低ラインです。

5. グループの中で誕生日が真ん中の人は,会話のまとめ役です。全員が5回以上発言し,話題も出尽くしたなと思ったら,会話を終わらせます。この合図は,”Shall we invite Mr. Tamura to this thread?”です。みんなが,同意したら,私にメンションをつけて会話が終わったことを教えて下さい。”@Yu Tamura We finished!”みたいに。この投稿があったら,私が確認しに行きますので,少し待っていてください。私からOKをもらったら,グループワークは終了。この日の授業は終わりとなります。グループメンバーにお礼を行って終わりましょう。出席登録だけ忘れないようにしてください。

25名以上のクラスはShufflというappを使ってペアリングまたはグルーピングをしています(注)。ただこのappは平日の指定した曜日の午前10時にDMを送るという仕様なので,1限の授業(私は全学教養英語の4つの担当のうち3つが1限)だと授業時間中に自分がだれとワークするのかを知ることになります。1限だと,9:00-10:00でLMSの課題,10:00-10:30はslackでコミュニケーションタスクという分け方にしています。

見えてきた課題

時間配分の問題

上記の方法でやって最初に困ったのは,グループの指定が10時で,そこから役割分担決めて話し始めるまでに10-15分くらいかかってしまうという点です。もちろんこれは慣れの問題で,回を重ねれば解決するのかもしれませんが,始まるまでの時間が長くかかると,やり取りの時間が実質短くなってしまい,授業時間中にタスクを完遂できなくなってしまいます。また,グルーピングの時間に余裕をもたせておかないと,グループが集まらなかったときに話をスタートできない人ができてしまいます。教室のときのように自分のペアの相手,グループのメンバーが欠けている(欠席orLMSの課題が遅れていて間に合ってない等)というときに,slack上での課題に入れないことになります。教室であれば,グループやペアができていないことは見れば一目瞭然ですが,なにせこちらも学生から報告されないとわからないので,問題の発見,報告,対応も対面授業に比べて遅れてしまいます。自分の相手と連絡がつかなかったときのガイドラインは作っておいたほうが良さそうです。例えば,

  • 3分経って相手から連絡が来なかったら教員に連絡
  • 連絡の際は,「ペアの人がいません」とかではなく,「私の今日の相手は○○さんですが,XX時XX分にこちらから連絡をしましたが反応がありません」のように情報を伝えること
  • 教員からの指示を待って,Shufflで指定されたペアとは違う人とタスクをやるように指示された場合,自分につけられたメンションを確認し,会話に参加すること

というような感じです。appを使ったペアリング・グルーピングは,こちらで誰と誰が組んでいるのかわからないため,「相手がいません」と言われても教員は対応ができません。そこで,「相手誰?」と聞くので1ターン分のロスが生まれてしまいます。最初に相手がわかれば,LMSのログイン状況や課題の進捗を見て,そもそもLMSの課題をやってなかったら欠席の可能性が高いし,課題をやっているのであればあとどのくらいでslackに来そうかもある程度予想がつきます。グループであれば,情報が分割して与えられているようなジグゾー系のタスクでない限りは人数が欠けていてもとりあえず,スタートはできます。ペアだと相手がいなければどうしようもないので,すぐに対応しないと待ちぼうけで時間を無駄にしてしまいますので,対応方法は明確にしておく必要があります。

おそらくですが,slackのやりとりだけで1時間くらいの余裕をもたせても良いのかなと思いました。実際にやりとりが始まってから終わるまでは,平均して30-40分くらい,投稿数としてはだいたい20-30 per threadくらいでした。ただ,始まる前の時間を確保し,その上である程度余裕を持って終了するためには(そうでないとやり取りを急ごうとしてしまうので機械的に終わらせようとしてやりとりが無味乾燥になる),1時間くらいの余裕を持ってやるのがいいかもいしれないなと思いました。むしろもっと長くてもいいかもしれません。これが慣れによって改善されるのかどうかはもう少し回数を重ねてみないとわかりませんが,少なくとも30分という時間設定では不十分であることは間違いありません。

となると,shufflの指定を前日10時にしておいて,前日にはメンバーがわかっていて,役割分担も確認できていて,10時になったらすぐに対話をスタートさせられるようにしておいたほうがいいのかもしれません。slackで行う対話の内容自体はLMSでのインプットベースの課題に基づいているので,LMSをやってからslackへという流れだけは変えたくありません。つまり,LMSはアクセスの時間を1日中,あるいは1週間可能にして,slackだけ授業時間中にやるというのはしたくないしできないと思っています。ただ,LMSの課題を1時間で終わらせるのが厳しい学生もいるようでした(こちらとしては授業開始と同時にスタートすれば30分程度で終わると見込んで作っています)。

時間配分問題の解決策

1. 授業開始即slack

大幅な仕様の変更になってしまいますが,授業開始と同時にslackを始める仕様にするという手があります。 そうすると,グルーピングについて2つの方法が考えられます。1つは,shufflでグルーピングするタイミングを前日に設定しておき,役割分担も授業開始時点では完了するように指示するというもの。2つ目は,こちらであらかじめ毎週のグループ(ペア)リストを作って公開し,それを見て各自がグループDMを作って役割分担をしておくというものです。リストの中でグループDM作る人を指定しておき,グループDMの始め方の資料も作っておけばなんとかなりそうですが,学生がどこまでできるのかは未知数なので不安があります。

上記いずれの方法を取ったとしても,授業開始時点からslackをするのであれば,授業開始前にインプットタスク部分であったりoutputのpreparation部分(自分の考えを決める等)が終わっている必要があります。それが可能となるためには,前週から授業週までの1週間で準備となる課題を終えて(これについては授業時間内に終わらせなくていいこととする)おくように授業計画を変更することが必要になってきます。

むしろ,前もってグループがわかっていれば,役割分担の確認も前もって終えた状態で授業に臨めるので,会話スタートまでの時間をタスクそのものに費やすことができるかもしれません。そうなれば,これまで通りの時間でも十分にタスクを完遂できる可能性もあります。

授業時間後にすぐslackスタートという案は大幅な授業計画の変更になりますが,その一部分であるグループ(・ペア)リストの公開は考えてしまってもいいかもしれません。

2. slackは授業時間内でなくても良いとする

2つ目の解決策は,slackのやりとりを授業時間内で終わらせることに限定せず,むしろLINEのグループチャット的な使い方(時間のあるときに返信する)とするものです。こうすれば,なにかトラブルが発生してもそれに余裕をもって取り組めますし,時間を空費してしまうリスクは抑えられます。一方で,ライブ感が損なわれてしまいます。また,学生がslackの通知設定をどうしているのかに依存してしまうので,「返事忘れてました」となる可能性もかなりあります。

逆に,24/7でslack課題から逃れられないというプレッシャーを与える可能性もあります。これは,亘理先生が先日ブログで書いていた授業内外の話にもつながりますが,授業の時間内という縛りをなくすことによって,slackの課題が他の日常生活の時間や学生が受講している他の授業との競合を迫られることになります。場合によっては昼夜問わずにslackの返信が迫られる(ように学生が感じてしまう)かもしれません。もちろん,学生が自分で様々なことに費やす時間の管理やタスク管理をできれば問題はありません。ところが,「社会人」とか「オトナ」であってもタスク管理の本がわんさか世に溢れ,そのためのアプリケーションやライフハック術を求める人がたくさんいるわけです。つまり,かなりレベルが高い,身につけるのが難しいスキルなわけです。自律的学習者の育成という意味では大学生のうちにそういったマネージメントスキル的なものを身につけてもらいたいという思いもある一方で,それをすべて学生側に投げることもあまり誠実とはいえないような気がします。

以上のような理由で,2つ目の解決策はメリットもありますが,個人的にはデメリットも大きいなと思っています。

教師の介入のタイミング

時間配分の問題は,どちらかというと授業の運営上の問題でした。2つ目の問題は,むしろ指導技術に関わるものです。それは,学習者同士の会話にどうやって介入するか,どのタイミングで介入するのかという問題です。

私は先週の授業である「失敗」をしました。その日のslack課題は,「教科書の登場人物の情報を読み取り,その人達が参加するパーティに自分も招待されたとしたとき,誰と一番仲良くなりたいと思うか?その人にどんな話題で話しかけるか?」を考えるというものを各自で考えて,意見交換するというものでした(合意形成は必要なし)。

この課題に対して,いきなり”What’s yoru hobby?”とペアの相手に話しかけているペアがいたのです。私はそれを見て,「しまった。課題が正しく理解されていないぞ」と判断して,”Why are you two talking about hobbies?”ってすぐ突っ込んでしまったのです。ところが私のその投稿の直後に,メインの話題に入ろうかという言う話になっていたのです。その時に「あ,そういうことか。趣味の話はconversation starterだったのか」となったんです。その意識が自分にはまったくなかったので,反射的に流れを乱してしまったことを反省しました。ランダムに話す相手決めてるので,いきなり話すんじゃなくなにか最初にアイスブレイクじゃないけどそういう会話を入れるというのを,誰にも何も言われていないのにできるというのは素晴らしいことですよね。もちろん,そこでいきなりWhat’s your hobby?が適切なのかっていうのはあります。ただ,コミュニケーションとして大事な要素を意識してやりとりしようとしたという行動に何か水差してしまったなぁと思いました。

教員側としては,勘違いして変な方向に行ってしまうのはなるべく早く止めて軌道修正してあげたいとは思うわけです。ただし,それを仮に教員が指摘しなくても自分たちで「あれ?この話でいいの?」などとやりとりしながら,「先生!この話であってますか?」とか「もう一回インストラクション読み直そう!」とかいうやりとりをして自分たちの力で軌道修正ができるのだとしたら,それ最高っていうかそれが英語でできるというのは素晴らしいことだと私は思います。むしろ,それこそが私が身につけてほしい「英語力」だと思っています。その学びを奪うことは絶対にしたくありませんが,かと言ってそれを黙って見てるのももどかしいというのがジレンマです。

また別の視点で見れば,合いの手を入れるタイミングもテキストチャットは独特です。誰かがタイピングしている最中であればそのことがSlack上で表示されるとはいえ,何十人も同時にやっているので自分がコメントしようとしてる学生が何か書いてるのかまでは把握できません。そうすると,スレッドが止まっているのは沈黙なのか,はたまた書いてる最中だから止まってるのか,ということはわかりません。沈黙しているから何か会話を促すような投稿をしてみよう,と思って何か質問を書き込みんだらその直後に次の話題に移行するような投稿がされてしまって逆に対話の流れをそいでしまったりということもありました。意外にというか,教師の介入は結構難しいなというのがリアルタイムのインタラクションをテキストチャットでやらせてみての正直な感想です。

このように邪魔をせずに何かしらのメッセージを伝える方法としては,reactionの活用も可能かもしれません。つまり,絵文字でレスポンスすることですね。slackには豊富な絵文字があるので,いくつかに絞ってフィードバックを関連付けておけば,会話を邪魔せずに何らかのフィードバックを与えることもできそうです。

また,このリアクションをうまく利用して成績に反映させる事も考えられます。今のところ,「いいね!」と思った投稿には100点のマーク(:100:)をつけておくようにしています。それをあとからslackのAPIを利用してログを取得して,どの学生が何回そのマークをもらったかを集計するというものです。このことはまた別の記事で紹介できればと思います。

おわりに

とりあえず,slackを利用して何回か授業をやってみてわかった課題と,それをどうしたら解決できそうかについて書いてみました。前回の記事を書いたときは,まだ実際に実践をしてみる前の段階でしたので,この記事に書いたようなことは見えていませんでした。これからまた授業を重ねるごとに,新しい問題が出てきたり,あるいはここに書いた課題を克服できたりといったこともあるかもしれないので,また時間をみつけて記事を書こうと思います。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

注. ちなみに,Shufflは無料でも2人,3人,4人と人数が選べます。一方で,donutだと時間の設定やhostをペアリングから外す等の設定は便利ですが,無料版では2人しか選択できないので,Shufflとdonutは一長一短という印象です。

Slackを授業で使ってみてわかった課題」への1件のフィードバック

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