slackを利用して,「全員の前で」スピーチさせるスピーキング活動

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はじめに

先月,先々月で記事をいくつか投稿していますが,一般教養英語の遠隔授業(オンライン授業)で,slackを活用してます。

今まで書いてきた記事は,基本的にテキストチャットスペースとしてのslackの使い方の話でしたが,今回はスピーチをメインにした活動の話です。タイトルをおおげさにつけましたが,やってることは目新しくもなんでもありません。ただ音声ファイルを投稿してコメントし合うような活動です。

活動の概要

私は,現在受け持っている一般教養英語の授業の全4クラスでslackを利用しています(すべてが違う科目・レベル)。そのうち2クラスで,ペアやグループ活動ではなく,個人で1分程度のスピーチを録音したものを投稿してもらうという課題を出しました。そして,任意の人数にコメントをし,コメントをもらったら必ず返信をすることも求めました。時間はいつものペア・グループワークに費やしているのと同じ時間で,授業開始30分後から授業終了10分前までの50分です。

これまでの3, 4週は基本的に事前にペアやグループを作っておき,その中でなにかしらのタスクを与えるようにしていました。ただ,一応テキストに関連付けたタスクを毎回考えているので,教科書の内容によってはタスクを作りづらい場合もあります。たまたま2つのクラスがそういう状況で,どうしようか考えあぐねていたときに,別にペア・グループワークに拘る必要もないし,スピーキング&リスニングのクラスなんだからスピーキングさせる機会,そしてそれを聞く機会があってもいいよねというのがきっかけでした(もちろん,LMS上で音声ファイルを提出させたりリスニングの課題を出したりはしています)。

いつも,LMS課題の最後にslack上でやる課題の簡単な指示を日本語の資料として載せているのですが,そこにいつもとは違って今回はスピーチを録音したものを投稿する課題にするということを事前に連絡しておきました。また,私がサンプルとしてスピーチを録音したものを課題の公開と同時にslackにアップロードすることで,どういうスピーチをすればいいのかわからないという場合に,言語面や内容・構成面などで役立ててもらうリソースを提供しました。

この活動をやるにあたって,私の教師としての狙いはいくつかありましたが,ぱっと整理すると次のようにまとめられます。

  • 全員の前でスピーチをするわけではないにしろ,全員が聞ける場所に音声ファイルを投稿するのだから,普段教師だけにファイル提出するよりも緊張感がある(ので普段よりクオリティにこだわるはず)
  • クラスメートのスピーチから学ぶことが多くある
    • 内容的に(そういう意見あるのかとか,単純に面白いなとか)
    • 言語的に(発音が上手とか,真似したい表現とか)
    • delivery的に(聞きやすい喋り方はどんなものか)
  • 純粋に,クラスメートの「声」を聞けるだけでも今はプラスになるはず
  • グループワークにもそろそろ慣れとともに飽きがきてるかもしれないので,ここで少し違ったものを挟んでおきたい
  • リスニングすることに意味づけができる(内容を理解してコメントしないといけないので集中して聞くため)

このような活動をするのに,やっぱりslackは適しているなぁと思いました。

なぜslackが適しているか

ダウンロードしなくていい

まず,slackは音声ファイルをいちいちダウンロードしなくても再生ができます。パソコンであれば,タイムライン上で再生が可能なので,教師としても聞いてフィードバックをしたりするのが楽です。スマホアプリだと,再生するための画面に切り替わりますが,それでもいちいちファイルを保存しないといけない制約がないだけで聞くのはずいぶんと楽になります。

自分のペースで聞ける

これは,slackの良さというよりも,対面で人のスピーチを聞く課題ではないからこその良さと言えると思います。誰か1人のスピーチを聞き直したり,一時停止したりすることができるので,聞き漏らす心配をする必要がありません。もちろん,本当にスピーチを聞く際には聞き漏らさずに聞く必要があるわけなので,そこがゴールである以上はこの課題はあくまで”simplified version of the target task”と言えます。

もう一つ,自分で聞きたい人のものを,好きな順番で聞けるという意味での「自分のペース」というのもあります。これは例えばポスター発表的な形式をとると自由度が確保されていますが,全員またはグループの中で誰か1人が話すという形式では聞く側には順番を選ぶ権利はありません。これも前段の話と同様で,そもそもスピーチを聞くときに選ぶことができないのが普通なんです。そこは私も理解しています。その上で,ある程度学生側に選択が委ねられているというある種の「ゆるさ」は授業の中に持たせておきたいというのが個人的な信念です。とくに,今は状況が状況であるがゆえに,極端にガチガチのルールに縛られた授業か,そうでなければ無法地帯のように学生に丸投げされる授業に二極化しているような印象があります(あくまで印象です)。その中で,学生がsecured and comfortableな心理的状態で授業に臨むためには,学生の側に選択権がある状況というのも意味があると考えています。

スレッド機能とメンション機能

この記事の最初の方でリンクを貼っている記事でも書いていますが,音声ファイルの投稿に対してスレッド形式でコメントが書き込まれることで,チャンネルのタイムライン上では音声ファイルが並びます。そして,何件コメントが有るのかも一目瞭然なので,コメントがあまりついてないファイルを探してコメントすることも簡単にできます。

もらったコメントに返信をするときにはメンション機能を使えば,誰のコメントに返信したのかを明らかにすることができるので,会話の流れも追いやすくなります。

私が驚いたことは,スレッドへの書き込みをチャンネルのタイムラインにも流す機能を意図的に使っていた学生がいたことでした。チャンネルのタイムラインへの書き込みは,クラス全体への通知にもつながる(もちろん通知切ってれば来ないですけど)ので,「みんなこれ面白いよ!」的なコメントをメインのタイムラインに流していたようでした。

目印としてのreaction

slackには絵文字でリアクションすることができます。学生のコメントに対して,「いいね」の意味で絵文字をつけることもありますが,私が重宝している使い方は,チェックしたという目印です。いつものペアワークをやる際も,タスクが完了して,私がOKを出したスレッドには目の絵文字(👀)をつけて,終わっていないのがどこのグループかがわかるようにしています。今回のスピーチは聞いたら耳(👂)で,課題として私がこういうことを含めるように,という条件を満たしたスピーチをしていたら100点(💯),スピーチはしているけれど,その情報が含まれていない場合にはなにもつけないというようにしました。こうすることで,その場で簡易的に採点しておくことができますし100点(💯)がついていない学生に対してはその情報がないことをフィードバックすることも簡単にできました。

今回の課題の最初の部分。一番上が私のサンプルの音声で,音声ファイルを聞いたら耳(👂)のリアクションをつけ,課題の要件を満たしたスピーチの場合に100点(💯)のリアクションをつけています。

学生からの感想

学生からの感想を読んでいると,概ね上記の私の狙い通りに活動ができたのではないかと思っています。

例えば,質問しないといけないのでより注意して聞くし,他の人が質問していないことを考えるのに頭を使ったというようなコメントがありました。ただ質問するだけではなく,他の人の質問を読んだ上で質問を考えるのは,実は今回が初めてではありませんでした。授業の初回で実施した自己紹介タスクでも,音声ファイルではなく書き込む形でしたが,自分の自己紹介を投稿してコメントを○人につける,という課題をやったので,そこで必要だったスキルと同じです。もしも,他の人が聞いていないことをコメントすることに対するハードルが高いと感じられれば,自然と時間的にあとの方に音声が投稿されていて,まだコメントがついていない学生のファイルを聞いてコメントすればいいので,何も指示しなくても自然とある程度コメントがばらつくようにはなっていました。

基本的には早く投稿すればするほどコメントが集まりやすいので,早く投稿して自分が思った以上にコメントが集まって返信が大変だったという「嬉しい悲鳴」も聞こえました。でもやっぱり,自分が言葉を使ったことに対して,レスポンスがもらえるっていうのは,誰でも嬉しいことだと思うんですよね。そういう経験をしたことで,この活動に対してポジティブな印象を抱く学生が多かったのかなと思っています(注)。

私がサンプルとして音声を投稿していたのが参考になったという意見もありましたし,何をコメントすればいいかわからなかったけど,他の人のコメントを参考にすることができたというコメントもありました。この,他の人の取り組みを参考にできるのがslackを利用する際のメリットだというのが,私がまさにTASK TALK で話したことでした。

タイトルにつけたように,全員に聞かれるということを考えて録音するのはすごく緊張したというコメントや,(自分のパフォーマンスが未熟なので)恥ずかしかったというコメントもありました。この事自体はネガティブに捉えられるかもしれませんが,普通に30人の前で話すことよりはハードルが低いはずで,しかも録音なのでやりなおしもできます。前述の通り,全員の前で話すことをゴールだとしたら,その前の練習課題として,ここで紹介したような活動は効果的かも知れません。

おわりに

この記事では,slackにスピーチを録音したファイルをアップロードし,それに対してコメントし合うスピーキング活動を紹介しました。今回は全員が同じチャンネルで活動しましたが,いくつかの大きなグループに分けた上で別々のチャンネルでやらせることもできると思います。また,ファイルをアップロードする順番や時間を指定すれば,それこそ全員がほとんど同時に同じスピーチを同時に聞くような状況を作り出すこともできるかもしれません。

slackはテキストチャットメインで使っていましたが,残り半分の中であと何回かは今回のような形式の課題を取り入れてみようかなと思っています。

注. そもそも,授業後にコメントをわざわざ残すような学生はengagement高いだろうというツッコミはあるかと思いますし,それは差し引いた上で考える必要はあると思っています。ただ,一応苦情・改善要求なども受け入れるようにしていて,最初の数週間は改善要求コメントもかなり多くありました。それと比較してポジティブなコメントが多いので,控えめに見積もってもそれなりには機能したんだろうなと考えています。

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