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slackでテキストチャット型テストをやってみた感想

はじめに

以前,下記のようなブログ記事を書きました。

ペアやグループでの「会話テスト」もテキストチャット (Slack) なら効率的に回せるかもという話

この記事の中で,通常のスピーキングテストなら複数人と同時にやりとりはできないけれど,テキストチャットならそれが可能かもしれないという話を書いています。実際にいくつかの形式でテキストチャットで同時に学習者とやりとりする形のテストをやったのでどんなふうにやったのかと,その感想をこの記事では書きます。

やり方

クラスによって,いくつかのパターンでやってみました。

教師は複数のグループのやりとりを同時に観察するだけ

このパターンは,普段私が授業で使っているslackの使い方とほとんど同じです。この形式だけが,教師相手に会話するのではなく,学習者同士(3〜4人)で会話する形式でした。時間は60分間に設定し,全グループが同時にスタートする形としました。

お題はテスト開始と同時にリスニングで与えて,いわゆる悩み相談的なタスクにしました。悩みに対する解決策を示すというのがタスクのゴールです。

この形式だと,教師は学習者のやりとりだけに集中できます。よって,事前にルーブリックをグループごとに用意しておけば,ある程度はテスト中に評価をしていくこともできます。スピーキングテスト中に机間巡視するのとは違い,学生たちのやりとりはすべて教師に見えますので,どのようなプロセスを経て現在地にいるのかを逃すことがない点は便利です。

ただし,やはり複数のグループの評価を目的にやりとりを見ていると,なかなか教師がやりとりに介入していくのは難しいように思いました。積極的な介入を重視して評価はテスト後にするか,介入は極力控えて評価を優先するかのどちらかだと思います。もしもこの2つを同時にしようと思ったら,一度に観察するグループは3~5くらいが限界でしょう。

グループ対教師のやりとり

この形式は,3~4人の学習者グループが教師とやりとりする形式です。お題は教師に何かを提案する形式としました。例えば,「オンライン授業において導入してほしいツールの提案」や「この授業において,学生・教師・学生と教師が守るべきルールの提案」などです。これらのお題とグルーピングは事前に学習者には伝えていて,どのように提案するのか,もし提案を断られた場合や懸念を示された場合にどう対応するのかというところまで考えておくように指示しました。

当日は,授業時間を35分×2セッションに分けて,6グループずつとやりとりするようにしました。教師はあえて極端に提案を突っぱねる(もちろんロジカルに)ようにして,そこでの学習者の出方を見るようにしていました。この程度を調整することで,学習者のレベルをある程度判定できたように思います。例えば,こちらの反論に対してすぐに再反論や問題の解決策の提示ができるようだとさらに反論をしてみたり,あるいはこちらの反論に「ぐぬぬ」となってしまい有効な反論が出てこなければ,その点は深追いせずに別の論点を提示するなどしていました。

教師対学習者の1対1のやりとり

この形式は,いわゆるインタビューテストで,教師と学習者が1対1で会話する形式です。内容は,教科書のユニットごとに決まったテーマについてのフリートークで,学習者側にホスト役になってもらうようにしました。ただし,こういう役回りにすると事前に用意した質問をただただ投げるだけになってしまうので,echo, reaction, follow-up questionを使ってやりとりができているかどうかを評価の観点の1つとして取り入れました。

時間は17分で,90分を4つのセッションに分け,セッション間に5分間のインターバルを入れました。学生には事前にスケジュールを提示しておき,時間になったら教員にDMを送って会話をスタートするという形です。

42.5インチモニタを6分割表示設定にして,ブラウザを複製してslackを6箇所で開いてやりとりしました

5分間のインターバルがあるといってもほとんど休憩なしで,17分間ひたすら学生からのポストに返事をし続ける感じでした。少しの遅れでも学生の不利益になるので,とにかく返事は1分以内にすべて返すということを徹底しました。よって,めちゃくちゃ疲れました。

流暢さがある学生だと,だいたい15〜18ターンくらいはやりとりができました。もし仮に90分を24人で割ると1人3分くらいしか会話の時間は取れないことになります(それでもたぶん交代にかかる時間とか考えるとカツカツ)。3分で15ターンだと1分で5ターンなので,だいたい単純計算で12秒で1ターンくらいのスピードでやりとりする必要があります。レベルから言って口頭でそのくらいのスピード感で進むかと言われると厳しいかなというのが私の見立てなので,テキストチャットの利点をうまく生かして学習者とのインタビューテストができたなと思っています。

ざっくり感想

一度に6グループ(6人)なら全然いける

まず,6グループ,あるいは6人なら同時のやりとりも可能だなと思いました。もちろん最初は戸惑うことはたくさんありましたが,やはり学生の入力スピードとこちらの入力スピードだとこちらに圧倒的に分があるので,そのアドバンテージを生かしてやれました。ただ,1人とやりとりするよりはグループとのやりとりのほうが難しかったです。なぜなら,グループだとこちらの1の返事に向こうから2, 3の返事が返ってくるからです。論点がまとまっていればまだしも,たまに複数の論点に対してこちらが返答しなければならない場合があり,結構しんどかったです。1対1だとそういうことはあまり起こらないので,比較的ラクでした。

コピペを多用できる

複数の学習者を相手に同時にやりとりするのを可能にしたのは,コピペ戦法です。私はランダムにお題を与えていたので,お題がある程度被っているときと,ほとんど被っていないときとありました。お題が被っている場合,同じような質問だったりコメントだったりが学生から出てくることも多いので,その場合別のグループですでに答えたことを,同じお題でやってる別のグループにコピペして投稿するようなことも頻繁にやっていました。学生側からすると「ずるい!」となるかもしれませんが,こちらとしては同じ内容なら何度も同じこと書くよりコピペしたほうが早いから許してくださいという感じです。もしもセッションごとにお題を固定して,6人・6グループがすべて同じお題で取り組むのであれば,コピペの頻度はもっと高くなることが見込まれるので,より一層教員側の負担は減るかなと思います。

後から評価するにしても楽

学生と教師がやりとりするパターンの場合,やりとりしながら評価は無理でした。これやるのであれば,おそらく3人・3グループが限界でしょう。それ以上だと,いくらルーブリックを事前に練っていてもその場で評価だと絶対に返事のタイミングが遅くなってしまうと思います。

ただ,もしも評価をテスト後に行うとしても,音声を録音させたものを後から提出させ,それを聞いて評価するよりはよほど楽でした。なぜなら,すべてやりとりした記憶があるからです。

とくに,学習者同士のやりとりを録音させるようなケースだと,ほとんど内容はわからない状態で音声を聞いて評価をしますので,頭から最後まで聞かないと評価できないケースがほとんどです。

一方で,自分がやりとりの相手だった場合,「あーそうだこのグループはちょっとこの話題で詰まってたところあったよなー」とか「○○がほとんど話題に入ってこれてなかったなー」とかいうエピソード記憶的なものがやりとりの断片を見るだけですぐに思い出せます。また,音声を聞くより文字を眺めるほうが圧倒的に早く全体を処理できますから,評価にかかる負担感は間違いなくテキストチャットのほうが低いと思いました。

オンラインだからこそ待ち時間を有効に使えた

ちょっと話はそれますが,もし教室内で,グループ,個人ごとに教師のところに来させてテストしようと思うと,待ってる間をどうするかが問題になります。

同じ教室内でリスニングテスト受けてもらおうにも,会話がワイワイ盛り上がったらリスニングテスト受けている人たちに迷惑ですし,かといってコソコソ話すのもなんか違う。2教室用意して別室でLMSでリスニングテストさせているなんていう話も同僚の先生から聞いたことがありますが,ちょっとハードルが高いですよね。その点,LMS上での課題に慣れていて,なおかつ全員が同じ場所にいる必要がない今のような状況だからこそ,待っている時間はLMSで別のテストやっててねというのが何の違和感もなくできたなと思いました。

秋学期に対面授業になったら大教室で少人数で授業みたいな環境になる大学もあるかもしれません。そうすると,ある程度離れた場所で普通のボリュームで会話していたらリスニングテストの邪魔にはならないのかもしれませんが。

おわりに

この記事では,slackを使って,学習者同士,学習者グループ対教師, 学習者個人対教師の3つのパターンでテキストチャットテストをやってみたという報告のようなものを書きました。秋学期にどのような形態の授業になるのかうちの大学はまだわかりませんが,テキストチャットでインタラクティブな側面を評価するテストをやるというのはオプションの一つとして使えるなと思いました。今後,対面のスピーキングテストは難しいなぁという場合に活用していこうと思います。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

オンライン授業での「顔出し問題」(2)

Photo by Edward Jenner on Pexels.com

前回(といっても正確には2つ前の記事)の記事の続きです。オンライン授業で,zoomみたいな同時双方向型でやるときに,カメラをオンにしないといけないという話への反論みたいなところです。前回の記事では顔出ししない理由や,不正についての私の考えを書きました。今回は,前回書ききれなかったコミュニケーションの問題について書きます。

まず前提として,コミュニケーションは顔が見えてなんぼだみたいなのがあるみたいなんですよね。そのこと自体については否定しないし,私もポッドキャストの収録なんかをやっているとやっぱり相手が見えない状態で,声だけでコミュニケーションするのって難しいなと思うことはよくあります(特に3人以上の場合)。ヒトのコミュニケーションは非言語的なものも含まれますし,それが重要な役割を担うことは否定しません。「顔が見えないようではグループワーク時にコミュニケーションが取りづらい」というのもそれ自体はそのとおりだと思います。

この記事では,むしろその状態を逆手に取って授業を構成するのもアリなんではないか,顔出しをしない(できない)からこそ教えられることもあるのではないか,ということを考えてみたいと思います。

何が顔出しコミュニケーションを円滑にするのか

私達は,ジェスチャーだったり顔の表情だったり,そういう非言語的な情報も使ってコミュニケーションしています。例えば1対1の状態で考えても,アイコンタクトでいろんなことを伝えられますし,複数人のやりとりのときに顔や体をある特定の人に向けることで,「あなたの話を聞く態勢です」というメッセージになったりもします。そうやって,相手が見えている状態と見えていない状態のコミュニケーションで何が違うのか,顔が見えないとやりとりしづらいと感じるのはなぜかを考えてみるというのも,大事なことなのではないかなと思います。普段の授業だと,コミュニケーションをメタ的に見るのって意識してもなかなか難しいと思います。今の状況ならむしろ,「顔出し」しないとなんかやりにくい,みたいなことをきっかけにして,コミュニケーションを考えさせることができるように思います。

顔出ししないからこそ言語でのやりとりが大事になる

これは私の個人的な考えですが,顔が見えない状況だからこそ(これはテキストチャットでも当てはまると思いますが),言語というツールしかない状況でのコミュニケーションを円滑に進めるためには,言語で伝える情報というのは普段以上に大事になってきます。そう考えると,いつもは非言語的な情報に頼ったコミュニケーションでごまかせた部分がごまかせなくなります。だからこそ,言語コミュニケーションのスキルを今磨いておけば,それはきっと対面のやりとりをも円滑にすすめることに役に立つはずだよと言ってあげたら,顔出ししない状態でうまくコミュニケーションを成立させることに意欲的に取り組ませることもできるのではないでしょうか。

非言語的情報でのやりとりを言語化しないといけない

私がポイントかなと思うのは,非言語的な情報を言語化できる(する)ことです。わかりやすい例でいえば,相手が何かを言ったとき,眉間にシワを寄せて少し首を横に傾けたりすることで,「話が理解できてません」というようなことを伝えていたとしたら,それをはっきり言わないと表情が見えない状況では相手には伝わりません。じゃあ,ということでそれをどう伝えるのかが次に問題になります。

I don’t understand.

I don’t know

I’m sorry but I don’t think I’m following you.

What did you say?

Sorry?

Could you say that again?

Excuse me, can you repeat what you just said?


どの言い方が相手にどんな印象を与えるのか,相手に何を要求しているのか,そういう言葉の機能的な面に注意を向けさせることができるように思います。そして,それって対面のやりとりだと結構おざなりになってしまうというか,あまり意識しなくてもなんとかなってしまう,無意識になんとかしているようなものでもあります。しかしながら,言語のみのコミュニケーションであれば,その言語が持つ機能的な側面を意識せざるをえません。

そして,そこでの失敗だったり,コミュニケーション・ブレイクダウンが原因となって発生する意味のやりとりもまた,言語習得上重要な要素がたくさん含まれることになるでしょう。

ほかにも,ターンテイキングも普段より難しくなることが予想されます。ビデオチャットは若干の時差がある場合もあり,それが原因で同時に話し始めてしまうというようなこともよくあるかもしれません。ただ,そういうことがまったくない状態であったとしても顔が見えないとターンテイキングはとても難しくなります。顔が見えていれば,相手が話し始めるのは口元を見ていればある程度わかります。それがないと,1対1であってもどのタイミングでこちらが話し出せばいいのかは結構難しい判断が伴います。「あ,少し間があいたからいまだ!」と思って話しだしたら,実はまだ相手は話の途中だったり,一区切りついて新しい話題を出してくるかもしれません。また,3人以上になると,「割って入る」のも難しくなります。どうしても,誰かと誰かがやりとりをしているのを聞いているばかりになってしまい,自分が会話に参加するのが難しくなるわけです。顔が見えていたって難しいわけですから,顔が見えていなかったらハードルは余計あがります。このようなことを避けようとすると,明示的なターンの移行を推奨するのもひとつの手かもしれません。意見交換だったら,自分の意見を言い終わった後に,”That’s what I think.”のように終わりだとわかるようなセリフを入れたり,あるい言い終わったら”What do you think, Ann?”のように誰かに必ず振るようにしたり,という工夫です。

こういうのにあまりに縛られすぎると本来の会話のダイナミクスみたいなのが失われるような気もするので,それは難しいところだったりします。ただ,普段そこまで表面化しないようなことが,顔が見えないからこそ表面化する,そのことは実はコミュニケーション上指導する意味のあることをたくさん含んでいるように思われます。

おわりに

この記事では,オンライン授業において「顔出し」しない,つまり顔が見えない状態でのコミュニケーションは語学の授業においてマイナスの影響しかなく,良い授業を行うためには取り除かなければいけない問題なのかということを考えました。私の考えは,むしろ逆で,その状態だからこそコミュニケーションとか,言語の機能的側面をメタ的に考えるいい機会になるというものです。そしてそれは,実は通常の対面授業ではあまり扱われてこなかった,だけれども言語教育上は意味のあることなのではないかなと思っています。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

ペアやグループでの「会話テスト」もテキストチャット (Slack) なら効率的に回せるかもという話

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はじめに

今まさに思いついたことをブログ記事に書いてしまうシリーズ(そんなシリーズがあったのかどうかはわかりません)。顔出し問題の続きがまだ公開できてませんが,それよりこっちを先に出してしまいます。表題のとおりで,今定期テストのことを考えていたら振ってきたアイデアです。

スピーキングテスト実施の大変さ

対面授業のときにスピーキングテストしようと考えると,その選択肢の1つに授業時間内でテスト実施&評価を終わらせるというパターンが出てきます。クラスを半分に割って,1ペアずつ教員のところに来て….とかやるような形式です。40人のクラスをペアにしても20ペアもできてしまうわけで,90分をフルに使ったとしても入れ替えとかも考えて3分できればいいほう。だけど3分の対話って結構短いんですよね。特に,用意してきたものを話すのではなく,その場で即興で話させようと思うと特にそうなります。もっとこうstruggleしながらその中でことばを道具として使って意思疎通するというその醍醐味を味わってほしいと考えると,3分じゃ間違い探しみたいな簡単なのすらできないかもしれません。

じゃあもう評価は授業外でやろうということになると,授業内では録音させるという選択肢になります。私は昨年度はこのパターンをやっていて(過去記事参照),しかも学期中に4回もテストしてました。だいたい1クラスが18ペアくらいで,1ペア10分なので1回で合計180分(3時間)の会話を聞いて評価することになります。これを中間で2回,期末で2回なので,合計12時間を費やして評価していたことになります。

いや厳しいですよね。今考えるとよくやってたなと思います。

テキストチャットならテストできそう?

オンライン授業になったので,基本的にインタラクションはslackでやっていこうと思っています(過去記事参照)。それで,このテキストチャットを使ったら,授業時間内でもテスト実施できるのではないかと思いました。なぜなら,ある程度「複数ペアの同時評価」も可能だからです。

口頭産出のやり取りを評価しようと思ったら,2ペア同時に呼んで,同時に聞きながら評価するって相当訓練積んでもかなり厳しそうですよね。口頭発話は聞き逃したら終わりだからです。また,同じタイミングで話してたら両方聞いて意味理解するのはかなり難しいと思います。ところが,テキストチャットは少し遅れてもやりとりは残っていますので,会話に追いつくことがそれほど難しくありません。どんなにタイピングが早い人のやりとりであっても,一方が投稿して,それを読んで,そして返答を考えるというのは口頭発話よりも確実にタイムラグが生じるので,会話の流れ自体も緩やかになることが予想されます。学生はそこまで英語のタイピングに慣れていないでしょうから,ペースはさらに遅いでしょう。同時性の点でも,もし仮に同じタイミングで投稿があってもどちらかを先に読んでどちらかをあとに読むこともできます。これはスピーキングなら絶対に不可能なことです。

そうなれば,デバイスが3つ(PC,タブレット,スマホ)あればリアルタイムで3ペア(あるいはグループ)の会話を同時に追いながら評価することも意外にできるかもしれないと思いました。デバイスを複数使わなくてもthreadを行き来すればいいわけなんですが,見やすさは1デバイスにつき1スレッドだと思うので,それがいいかなと。

なんなら私の今の在宅ワーク環境は,Mac mini, HP Spectre x360, iPad pro 10.5インチ,iPhone8 Plus,の4つのデバイスでSlackを使えるので,4組いける可能性もあります。試したことないのでわかりませんが,ブラウザで同じワークスペースに複数タブでログインして表示すれば,別に複数デバイスでやる必要もないのかもしれませんが。

普通の口頭のやり取りとは違うので,テキストチャットのやりとりに合わせて評価の観点だったりルーブリックだったりは改変しないといけませんが,テキストチャットでインタラクティブなスピーキング(?)テストをやることにしたら,授業内で時間を分割すれば全員がテストを受験することもできるかもしれません。

ここまでの話は学生同士のテキストチャットを第三者として教師が評価する想定でしたが,教師対学習者の1対1のやりとりをするような面接型のテストも,複数人と同時にやりとりすることが可能かもしれません)。評価するのはかなり工夫しないと難しいかもしれませんが,テキストは残るので,あとで見直しての評価もできそうです。録音してもらったのを提出するときのように,自分が初めて全部のやりとりを聞いて評価する方式に比べれば,自分がしたやりとりを振り返りながら評価するのであれば評価にかかる時間と労力も格段に減るでしょう。

問題点

もちろん,すべてがハッピーというわけではありません。やりとりに時間がかかるということは,テスト時間も口頭でのテストよりは長く確保する必要があります。口頭なら10分もうけていればよかったのが15分や20分になるかもしれません。このへんは,タスクの難易度を少し下げてあげるのも手かもしれません。そうすればタスク達成にかかる時間が短くなるはずなので,そこまで長い時間かけなくてもテストとして成立しそうです。

また,そもそもそれスピーキングじゃねぇよっていう話もあります。もちろんそうで,やってることは「ライティングのコミュニケーション」です。スピーキングという技能の代替手段であって,「やりとり」を重視しているのでテキストチャットにしていますが,音声言語のやりとりとは違うものだという自覚はあります。ただ,こういう特殊な状況で,手近に使えるボイスチャットツールもないですし,zoomのようなものも導入できないスピーキングのクラスはどうしてもあります。その限られた状況の中で,「ましな」そして「実現できそうな」テストの形を考えたらテキストチャットのテストもありなんじゃないかなと思いました。

おわりに

時間の設定や課題の難易度については,授業の中でテキストチャットのやりとりをさせながら感覚をつかんでいくことになりそうです。テキストチャットをオンラインでやらせるという試みをまだ始めたばかりなので,アイデアとして面白いかもしれないという程度で実際にやろうとしたらいくつも超えなければいけない壁もあるような気がしています。

とりあえず授業をやりながらテキストチャットテストで複数ペア同時評価をして授業時間内に終わらせる,ということができるのかどうか模索していこうと思います。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

オンライン授業での「顔出し」問題 (1)

Photo by Julia M Cameron on Pexels.com

はじめに

今,オンラインの授業で「顔出し」問題がちらほら聞かれます。要するにビデオ会議システムを利用する際に,ビデオをオフにして音声のみで参加するということです。1対1のやりとりであれば,それこそもともと電話って音声だけのやりとりだったわけでそこまで違和感あるものでもないと思います。ただ,人数が多くなったときに音声のみだと,「話聞いてるのかわからない」とか,「本人であることが確認できない」という問題を指摘する人がいたり,「顔が見えないようではグループワーク時にコミュニケーションが取りづらい」「そもそもコミュニケーションは顔が見えてなんぼ」ということを指摘する人がいるようです(私の周りでは)。この記事では,この2つの問題点ついて考えてみます。

そもそも「顔出し」しない理由は?

「顔出し」の問題を自分にとって都合の悪い問題だと考える人って,「顔出し」しない側について配慮することが足りない場合もあると思っています。顔を出さない理由がなぜなのか,考えましょうよっていう。

プライバシー

とくにオンライン授業でZoomなどのビデオ会議システムの利用が盛り上がり始めた当初,この問題を指摘する人もいたと思います。インターネット上で実名顔出ししてる人って少ないですよね。それをしたくないと思うのと同じ理由で顔出ししたくないと考える人はいると思います。

通信量の問題

ビデオをオンにした状態は,音声のみの場合よりも通信量がかかります。学生側の環境をあまり把握せず,または把握したけど大部分は大丈夫そうだからとZoom等の利用に踏み切った場合,このケースが該当するかもしれません。「顔出し」したくても通信量の問題を考えてできない,あるいはできるだけ控えたいと考える学生がいてもおかしくありません。家にWi-Fi環境があったとしても,親や兄弟姉妹もインターネットを使って仕事をしたり授業を受けたりしていれば,通信が遅くなったり途切れたりしやすくなり,だったら音声だけのほうがトラブルが少ないので音声のみにするという選択をすることもあるかもしれません。

画面の問題

この問題もあるかもしれません。スマホしかデバイスがない場合の問題です。そうなると,スマホでZoomに参加しつつ,スマホで授業の資料を見ないといけないかもしれません。バックグラウンドでもZoomは動きますが,この場合ビデオはオンにできませんので音声のみでの参加を強いられてしまいます。教科書や授業資料がデジタルファイルとして配布されていて,それを自宅で印刷できない,コンビニのネットプリントの使い方もわからない,という状況だと,スマホで完結させざるを得ないのかもしれません。ただでさえ教員には質問しづらいものなのに,この状況ではそのハードルも普段以上に上がっていると思います。そうした学生にも顔を出しなさいというためには,スマホはzoomだけを使っていればよいという状態にするのは教員の仕事だと思います。それがめんどくさいと思うなら,安易に顔出し強制とは言えないでしょう。

「話聞いてるのかわからない」問題

これはもうしょうがないとしか言いようがないと思います。というか,ビデオがオンになってたら話聞いてるとも言えないと思います。話聞いてるかどうかは,話の内容を理解していないとできない課題をあとでやらせるとか,話の内容をメモさせるようにしてあとで提出させるとか,そういう部分で確認していくしかないと思います。

「本人であることが確認できない」

これについても前節と同じで,ビデオがオンでも本人かどうか確かめることはできません。それこそ入試のときのように受験票の写真をチェックしたり,あるいは定期試験で学生証の写真をチェックしたりしなければ,なりすましを防ぐことはできません。対面授業のときだって,名前を呼んで,手を挙げた人がその学生に間違いないと信じて授業をしていますよね。わざわざ一人ひとり本当に本人かどうかを確認しているのでしょうか。それをしていない時点で,ある程度学生を信頼して授業しているということだと思います。オンライン授業になった途端に,本人かどうかを疑うのはなぜなのか理解できません。そもそも一度も会ったことのない,名簿の名前しか知らない学生相手に授業をするわけですから,ビデオがオンになっていて顔を見ても本人かどうやって判断するのでしょうか。

ただ,この本人確認問題はLMSで課題をやらせるときなんかでも問題視されますよね。一応IPアドレスは残るので怪しいのを特定することは可能ではあると思いますが,100%防げるかというと難しいかなと思います。

こういう不正に繋がりうる問題があることも一因で,成績のつけ方をこれまでと同じにしていて問題はないのかという意見も出てきていると思います。この「本人確認問題」を重要な問いとして研究している分野もあると思うので,今後成績とか試験どうすんだという問題をもっと真剣に考えないといけなくなったときに(今もそうかもしれませんが),そういう分野の方々の知見がいきてくるのかなと思います。

おわりに

この記事では,オンライン授業のなかで,とくに同時双方向型の授業をするとき,Zoomなどでビデオをオフにして参加する学生がいるということについて,その問題ってほんとに問題なのかなということを書きました。長くなってしまったので,コミュニケーションに関わる問題点については,また別の記事で書きたいと思います。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。