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英語教育2.2CASTスタート

私のこのブログ名の由来(?)でもある「英語教育2.0」というブログを運営しているanfieldroad先生と,英語教育2.2CASTというポッドキャストを始めることになりました。

前から,anf先生が対談形式の番組をやれたらなぁという話をされていて,私もそういう試みに興味があったので,呼んでください!と見境もなくアピール試続けていたら,なんとコラボでポッドキャストをやっていこうという話になりました。

私が実践的な部分で興味のあるTBLTの話を最初はしていこうということでやっています。収録はお互いに離れた場所で会話しているので,なかなか難しいところがあったり,なるべく専門的な話をわかりやすく伝えられるように言葉を選んだりと難しい部分も多いです。ちなみにですが,台本とかは特になく,話す内容だけ大まかに決めたら後は即興でやっています。anf先生の振り方とかがまたいやらしくて,「絶対わかってるでしょ!」みたいなこととかも「これってどうなの?」とか聞いてくるんですよね笑 でも,そういう視点はむしろリスナー目線の質問だと思うので,そこにどうやって僕が答えるのか,というところがとりあえずのところはポイントなのかなと思います。

noteのマガジン機能を使っていて,初回は無料で聞くことができます。

英語教育2.2CAST

第2回目以降は300円の有料で,「12月号」を購入いただくと,4回分の放送を聴くことができます(1回の放送は10分くらいです)。最初はTBLT関連の話ですが,ゆくゆくはもっと広く英語教育の話題について議論したり,さまざまなゲストの方も交えて英語教育について語っていけたらいいなと思います。アウトリーチ活動的な意味では有料にするのはどうなんだという意見もあると思います。その辺りについては、上記のnoteのページにある下記のエントリをお読みいただくと,anf先生の狙いもご理解いただけるかなと。

英語教育を語るポッドキャスト始めます!

私もまだまだ未熟なところがあるとは思いますが,こういう形で英語教育に貢献できたらなと思っています。このブログをお読みいただいてる方にも是非聞いてもらいたいなと思っています。よろしくお願いします。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

スピーキングの授業の話

はじめに

私は,1年生対象の共通教養科目のListening&Speakingの授業を昨年度から担当しています。昨年度色々と試行錯誤を重ねて,今年度からはその反省も踏まえて改善できていると感じています。一方で,自分の中で授業の型はそれなりにできてきてはいるのですが,課題もそれなりに感じています。この記事では,授業の進め方と今感じている課題の両方についてまとめておこうと思います。

授業の概要

教科書はPearsonのImpact Issues2というものを使っています。版が新しくなったのですが,色々あって(学務的な意味で)新版ではなく旧版を使っています。細かいミスがちょくちょくあったりとかしておいおいと思うところもあるのですが,なんといっても掲載されているトピックというか「ネタ」がとても面白くてタスク向きなので,それが気に入って使っています。

教科書の構成はおもに,次のようなものです。

  1. 会話や語りのリスニングパート
  2. 内容確認
  3. 4人の視点からそのユニットの問題についてのopinionが提示される
  4. 主にペアやグループで行うディスカッション系のタスク
  5. スピーチ

私は授業では1しか扱っていません。2の内容確認はLMSで予習として行わせていて,授業中では教科書に載っている内容確認問題とは少し違う問題をいくつか提示してその答えに注目して聞くようなリスニング活動をやっています。そして,それ以降はスピーキングタスクのための時間です。スピーキングタスクが終わったら,どのような意見にまとまったか,どういった解決策にたどり着いたかなどを教室全体でシェアし,言語的なフィードバックを与えて授業は終了です。

スピーキングタスク

スピーキングタスクの題材は教科書で扱われているものを元にオリジナルで作っています。例えば,「クラスメイトから嫌がらせをされて困っているが,事を荒立てたくないので黙っていようとする女の子と,誰かに相談したほうがいいよと提案する友達」の話であれば,第三者の視点からこの問題を考えるタスクを作ります。2人の共通の友人という設定で,この問題を解決するためにはどうしたらよいかをペアで話し合い,お互いが納得する解決策を出せたらタスク達成というようなものです。

言いたかったけど言えなかったことリスト

授業で使うワークシートには,毎回「言いたかったけど言えなかったこと」を記入するスペースを設けています。授業中にここに書かれたものを見ながらフィードバックを決めたりしています。ただし,もちろん全部を取り上げることはできないので,あとで集めてリスト化して英訳と簡単な解説を付けたものを「言いたかったけど言えなかったことリスト」として翌週に配布するようにしました。最初はワークシートに直接書いていたのですが,同じようなことを書いている学生もいて同じことを何度も書くのは面倒だし,どうせなら全員で共有したほうが学生にとっても有益だろうと考えてこの形にしました。学生には,「自分が思ったこと」をそのまま書くのではなく,できるだけ日本語で「意味順」の形に落とし込むところまではやるように言っています(なかなか浸透していかないのですが…)。

授業の中で,同じタスクを繰り返してやることは時間の制約上なかなか難しいのですが,中には汎用的な表現も出てきたり(「絶対に嫌だ」みたいなのとか)するので,そういう表現は翌週や翌々週の違うタスクで使ってみている学生がいたりします。また,テストでは同じユニットのタスクにあたる可能性もあるので,こういったリストがあることでスピーキングテストのテスト勉強にも少しは役に立っているのかなと思っています。それ覚えさせて言わせているだけじゃんと思われる方もいるかもしれませんが,私は「覚えろ」という指導は一切していませんし,授業中に表現の口頭練習なども一切していません。ただリストを渡しているだけです(注1)。また,どの場面でどの表現を使うかは完全に学習者にゆだねていますし,会話の流れも流動的なので覚えたら必ず使う場面が訪れるとも限りません。

私が重視しているのは,なにか言えなかったことがあっても,それをワークシートに書けばフィードバックが与えられ,そこで新たなリソースを得て次に少しでも「言えた」と思える機会を増やすチャンスが与えられるということです。手間は確かにかかるのですが,学生からも結構好評なので継続してやろうと思っています。

テスト

このテキストは全20ユニットの構成なので,15回の授業やそれを通年で使うことを考えると微妙に回数が合わせずらいということがあったりします。私はむしろそれを逆手にとって,中間と期末をそれぞれ2週に渡って行うように設定しています。テストはペアでのスピーキングとリスニングテストです。

スピーキングテスト

前述のように,私の授業では,各ユニットごとにそのユニットでの話題に関連したなんらかのスピーキングタスクに取り組むことになります。テストの週では,それまでに授業でやった各ユニットのタスク(具体的にはロールプレイ型の意思決定や問題解決タスク)と同じ内容でやや性質の異なるようなタスクに取り組むことになっています。内容は似ているので表現などはそのまま流用できますが,到達すべきゴールやロールプレイの状況設定が異なっているというようなものです。

ペアは毎授業でランダムに組んでいて,テストのときもこちらがランダムに決めたペアでやってもらっています。ただ,当日になるまで誰とやるのかわからないというのは不安もあるだろうということで,テスト1週目の前の週にはテストの実施要領や評価方法の詳細(ルーブリックの観点は後述)とともに2回のテストで誰とペアになっているかのリストを渡しています。

テストを2週に渡って行うことの理由として15週の授業とテキストのユニット数の数合わせという問題に触れましたが,それよりも大事な理由があります。それは,一度ではどのタスクにあたるかでパフォーマンスが変わるという点と,ペアがランダムなのでペアの相手によってもパフォーマンスが変わってしまうという2つの点への配慮です。

中間テストまでは5つのユニットをこなしますので,5種類の中から2つのタスクにテストとして取り組むことになります(中間テスト後から期末テストまでも同様に5ユニットです)。もちろん各ユニットで難易度に差が出ないように作っているつもりですが,学生によっては内容的な親密度や自分の関心などで自分の言いたいことをパッと思いつくようなタスクとそうではないようなものがどうしても(例え内容は授業である程度カバーされていたとしても)出てきてしまいます(この問題については後述)。そこで1度きりではなく,チャンスを2回与えるというわけです。ペアの問題も同様で,さまざまな要因で話がうまく進んだり進まなかったりということは容易に起こり得ます。ただし,自分が話しやすい人とばかり話すのも私としてはいいことだとあまり思っていません。また,友達は考え方も似ている場合が多いので,特に意思決定タスクのように自分の考えと相手の考えを共有してすり合わせていく必要があるようなタイプのタスクでは情報のギャップが生まれづらいという面もあります。

こうしてスピーキングテストを2週に渡って中間と期末で行う,つまり合計で学期中に4回のスピーキングテストがあることで,学生は授業中でも意欲的にスピーキングタスクに取り組んでくれています。授業で一度も経験したことのない話題についてをいきなりテストで話すのは難しいわけですから当然です。結局,授業中でスピーキングタスクをやらせるだけだとなかなかうまくいきませんが,評価のうちの少なくない割合を占めるテストがスピーキングだということを明示し,それが授業中のタスクに基づいているものだということを繰り返し伝えていくことで,授業中の取り組み具合も変わってくるなというのを今学期は実感しています(昨年度は秋学期からこのやり方を導入)。

ピア評価

スピーキングテストでは,学生同士の評価も取り入れています。よって,ペア2組で1つのグループとして,どちらか一方がタスクに取り組んでいる場合にはもう一方のペアはタスクに取り組むペアを観察し,教員が評価するのと同じルーブリックで評価をつけるようにさせています。評価の観点は,(a) 日本語の使用,(b) 沈黙,(c) 共同的なやりとり,(d) タスクの達成の4観点で,(a) ~ (c)は0-2の3段階,(d)のみは0-3の4段階評価にして重み付けしています。これは私がタスクの達成を重視しているからです。このことはもちろん学生にも伝えています。

リスニングテスト

リスニングテストは,1週目は内容理解を中心としたもの,2週目はディクテーションのテストにしています。詳しい内容は割愛。

スピーキングテスト後の書き起こし

順番が前後しますが,スピーキングテストが終わったらリスニングテストの前に書き起こしをさせています。書き起こしの目的は主に2つあります。1つは文法的または音声的誤りに注意を向けさせることです。テスト中はどうしてもタスク達成のためのやり取りに夢中なため,なかなか言語的な側面に注意を向けることが難しくなります。そこで,録音したものを書き起こす機会を作ることで,発話の内容以外の言語的側面に注意を向けさせようという狙いです。

書き起こしといっても全てを書き起こしさせるのは時間的にも無理ですし,10分となるとかなり長くなるので作業自体もしんどくて飽きもきますので,書き起こす部分を一部分に限定する必要があります。限定するには,どの部分を書き起こすようにするかを選択する必要が出てきます。「最初の数分」というような指定ももちろんできますが,せっかくなのでもう少しこの選択に意味を持たせようと考えました。そこで2つ目の目的として,やりとりの中でうまくできた部分に目を向けさせるようと考えました。こう考えたのにもいくつか理由があります。

1つ目は,やりとりのポジティブな部分に目を向けさせることです。なんとかタスク達成できても,どうしてもできなかった部分にばかり目がいってしまうことはよくあります。これ自体は,「もっとうまくできたのに!」とか「なんでこうできなかったんだろう」のように,次への向上心があるという部分もあるので,一概に悪いことだとは思っていません。そうはいっても,うまくできたポイントに目を向けさせることで,タスク後にネガティブな感情だけが残ってしまうことを防ごうという狙いがあります。

もう1つ,いい側面を書き起こさせる理由は,教員が評価する際に聞くポイントを絞るという点です。学生には,「会話の中で,ここの部分はよくできたので,ぜひこのやりとりに注目してほしい,というハイライト部分を書き起こす」ように指示を出しています。こうすることで,「自分の意見を伝えつつ,相手の意見も尊重しながら解決策を見つけることができた」のように,やりとりの内容的な側面に学生の注意を向けさせることもできます。そして,教員が評価をする際にもその部分は特に注意をして聞くようにすることで,ある程度の採点の負担を軽減する狙いがあります。

課題

採点つらい

これが一番の悩みです。正直,ここの部分以外はかなりうまく授業設計ができてきたなという実感があります。しかしながら,どうしても36人~38人のクラスでスピーキングのテストをやろうとすると個別に呼んでというような方法はなかなか時間的にも制約が厳しく,それ以外の時間を有効活用するのも現状では難しいです。そうなると,授業中に録音させたものをあとから聞いて評価するということをせざるをえません。まだペアにしているので18ペアの10分間で済んでいますが,それでも2週に渡ってやっているので,採点にはかなりの時間がかかります。コメントは聞きながら書いているのでそこまで負担には感じませんが,15回目にやるテスト以外は翌週に結果を返す必要があるので1週間という時間的制約の中で採点するのはどうしても自分の時間の他の部分を犠牲にする必要が出てきます(注2)。LMSを活用して効率化を図りたいなと思う部分もありますが,LMSではペアリングして同じ採点を同時に2人に与えるというところが不得意なのでうまい解決策が見つかっていません。

課題の難易度のばらつき

前述したように,テストに用いるタスクは教科書の内容に基づくので内容的な難しさにどうしても差が出てきます。しかしながら,「難易度」を調整することは非常に困難です。なぜなら,どのような内容を難しいと思うかに個人差があるからです。ある学生はUnit5が一番簡単だと思っていても,別の学生はそのUnit5は話しにくいと思うということは起こりえますし,実際にそういうことが起こっていると思います。教科書で扱われる内容に差があるため,それに基づいた課題を作成するとどうしても内容面やトピックに対しての親密度(どれくらい馴染みのある話か)である課題が別の課題よりも難しいと思ったり簡単だと思ったり,ということが発生してしまいます。テスト作成時にも,なるべく難易度の差がでないように工夫してはいますし,これからその精度をより高めていく努力はするつもりですが,どうしても難易度が同一のタスクを作ることはできません。

この問題の解決のためには全員が1つのタスクに取り組むということが考えられます。しかしながら,そういう形を取ることで,「1度うまくいかなくても次はもっと頑張ろう」,という2度取り組むことのメリットを失ってしまいます。私としては,難易度の問題を解消するためにテストタスクを1つにすることで生じるデメリットよりも,2回取り組むことができるということのメリットを重視しており,2回取り組むことで生じるデメリット(課題の難易度の差)についてはやむを得ないと考えています。

テスト用に教科書の内容とは関係のないものをやろうとすると,語彙や表現のレベルで授業でやったことを活かしづらくなり,授業とテストを関連付けることが難しいという別の問題も発生するため,その方向での改善も難しいかなと思っています。

ペアリングとタスクの組み合わせが複雑

ペアリングとタスクの割り当てをランダムにすると言っても,完全なランダムにはできません。なぜなら次のようなことを考える必要があるからです。

  1. 同じタスクを2週続けてやらない
  2. 同じグループの別のペアがやったタスクはやらない
  3. 同じ相手と2週続けてやらない

1をしてしまうと,相手は違うとはいえ同じタスクを繰り返す方が設定や流れがわかっている分難易度が下がってしまうのであり得ません。また,2についても誰かがやっているのを見ていればやりやすいでしょう。もちろん,原理的には1週目が終わった時点で自分が当たらなかったタスクをやったクラスメイトに内容を聞くことは可能です。そうではあっても,やりとりをすべて聞いた状態と内容だけ聞いた状態ではやはり違うと思いますので,前者は現実的に対応可能なので対応するが後者は目をつむるというようにしています。3は内容的な側面以外でのやりやすさへの考慮です。現実的には,学期の中で1度でもペアになったことがあるのとないのとでも違うと思いますが,さすがにそこまでコントロールすることは不可能なのでその部分にも目をつむっています。また,上の1~3を考慮すると,2週目にスピーキングテストに取り組む際には自分がやったものと相手がやったものは絶対にあたらないことになるので,2週目にどのタスクに当たるのかは3つに絞られます。そうした意味でも2週目のほうが対策を立てやすくなりますが,この点についても全員が同じ条件なので学生間の不公平は生まれないと考えています。

3はそこまで確認が難しいわけではないのですが,誰がどのタスクをやったのか,あるいはやっているのを見たのかを確認して,1と2の条件を満たしてタスクを割り当てるのは多少めんどくさいなと思っています。RやExcelの関数を駆使してある程度自動化できないかなと考えたこともあるのですが,ぱっと思いつかないので手作業でやっています。この部分ももっと楽にできたらいいのになというところで,課題だなと思っています。

おわりに

この記事では,私が2018年度,2019年度と取り組んできた1年生向け共通教養科目のListening&Speakingの授業について書いてみました。タスク中心にするという点と,指導・テスト・評価に一貫性をもたせるという点を意識して作ってきて,ある程度形になってきたかなと思っていますが,まだまだ課題も多いです。余談ですが,テキストが来年度は新版になるので,ベースは維持しつつタスクやテストは1から作り直す必要があるので来年度はまた少し大変になるかもしれません。授業での気づきを反映させながら,自分自身にとっても学生にとっても良い授業になるように,これからも考えていきたいなと思います。

こうして書いていて,Twitterで実践(研究)に興味なくなってきたとかつぶやいたのに「自分だいぶ実践に興味あるな」と思い始めています笑

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

 

注1. 本当なら少しくらい口頭練習してもいいかなとも思いますし,LMSとかで音声モデルを提示するだけでもやったほうがいいかなという思いは多少あります

注2. やはり採点してフィードバックして2回目はそこを改善してほしいというところもありますし,学生からしてもそうでないと何をどうすれば良い評価になるのかがわからないので2回目に臨むモチベーションも上がりにくいだろうと考えています。

タスクタイプとengagementの関係

久しぶりに論文の簡単なレビュー的なものを残しておきます。下記の論文です。

書誌情報
Dao, P. (2019) Effects of task goal orientation on learner engagement in task performance. International Review of Applied Linguistics in Language Teaching. Advance Online Publication doi: doi.org/10.1515/iral-2018-0188

ざっくりとした概要

独立変数

convergent task (意思決定タスク)とdivergent task (意見交換タスク)の2種類
 

従属変数

  • cognitive engagement: idea unitとLanguage Related Episode (LRE)
  • emotional engagement: タスク遂行中に楽しんでるかどうか(笑ったりしていると1とカウントされる)
  • social engagement: 相手の発話への貢献(acknowledging, repeating, commenting, developing each other’s idea, or providing backchannels)
 
これら3つの変数は,全体のターン数で割って比率として分析しています。この他にもemotional engagementについては質問紙調査を実施しています。(5項目で10ポイントのリカートスケール)
 
例:
  • I felt enjoyable when interacting and doing the task
  • I felt interested when interacting and doing the task
  • I felt bored when interacting and doing the task (おそらく逆転項目)

詳細に見たかった部分

 
どんなタスクをやったのかというのが一番気になるところでしたが2つのタスクはそれぞれ次のようなものです。
 
 
意思決定タスク
自分たちの通う大学の問題点をいくつか挙げ,それに対する解決策を提示する。タスクの最後に,問題点と解決策をリストアップしてレポートを書く。問題点と解決策については合意が必要。

意見交換タスク
ペアの相手と共同経営することになった新しいビジネスについて,オンラインショッピングのシステムを作るか,実店舗での店頭販売をベースにするかについてのディベートタスク。タスクの最後に自分の主張の根拠となる理由と,相手の主張に対する反論をリストアップし,それをもとにしてどちらが良いかについてのレポートを書く。論文中には記されていないが,おそらく学習者はランダムにどちらかの立場に立って議論するように求められ,最終的なレポートについても決められた立場から主張を述べなければならないことになっている。2つのタスクの比較については下記の表参照。

 

 
 
Outcome optionの”opened outcome”というのは,答えが決まっていない(学校の問題点や,オンラインショッピングのほうが良いと主張する理由等については学習者の考え次第)という意味で,「誰が犯人かを推測する」,「バラバラの物語の一部を正しい順序に並び替える」といった答えが決まっている問題解決型のタスクとは異なるという意味(だと思われます)。
意思決定タスクは合意に向かう議論になりすが,意見交換型タスクは自分の立場を主張し,相手に反論するだけで,合意形成は求められないというのが大きな違いです。この2つのタスクについて言いたいことがあるのですが,とりあえずそれは後で述べるとして,結果のまとめとして下記の表を見てください。
 
 
 
 
2つのタスクを比較して,統計的な有意差が認められたのはcognitiveとsocialのみでした。emotionalについては,タスク中の発話に基づく分析も,質問紙に基づく分析(本文中のTable 3)もともに統計的な有意差は認められず。この結果は,goal orientationがdivergentかconvergentかでタスク中のやりとりに違いが認められるということを示すとともに,Pica et al. (1993)で言われているように,divergent型の意見交換型タスクは学習者のインタラクションを促進するかという観点において”least effective”であるということを示していると著者は結論づけています。
 
 
LREについては,意思決定タスクのほうが高いという結果が出ていますが,そもそもの回数が少ないので結果の解釈には注意が必要だと述べられています。意思決定タスクでも,1回のタスク中(10分)で平均して2.44回しかLREは出現していません(しかもSDが平均値に近いくらいの値なので,0回というペアもかなりあったことが推測されます)。
 
 
Emotional engagementについては,goal orientationが違うことはあまり影響しないという結果でした。意見交換型のタスクでも,質問紙の結果では10段階で平均8.2(意思決定タスクは8.45)ですから,どちらのタスクもemotional engagementは高いのだろうと思われます。ただし,どちらもSDが5を超えている点には注意が必要になります。
 

タスクの問題点

意見交換型タスクが意思決定タスクに劣ったというのは,予め立場が決められていたことが問題なのではないかと思います。自分が与えられた立場に同意できればともかく,ディベートの場合必ずしも自分の意見と一致する立場で主張を述べなければならないことも多く(コレ自体はcritical thinking的な意味で言えばそこまで問題とも思わないが),それがengagementを低くしてしまったという点もあるように思います。ディベートはどちらの立場からも意見を述べられるようなトピックを扱うのだと言われたらそれはそうかなと思いますが。
 
 
また,意思決定タスクが自分たちの学校についての問題であるのでトピックに対する親密度も関係があったのではないかという点も指摘ができるかもしれません。モノローグタイプのタスクではありますが,トピックの親密度が高いほうが発話が豊かになるという指摘もあります(Qiu, 2019)。
 
 
意見交換型はビジネスの問題で,普段からこの問題に関心がある学生だったのかどうかがわかりません。ビジネス系の学生であれば背景知識も豊富でたくさんのidea unitが出てきたでしょうけれど,そうではない場合にこの問題を語るのは難しい気もしますし,英語の熟達度的にもこちらのほうが専門的な用語が多く必要となってくるのではないでしょうか。もっとも,p.7のセクション2.4のすぐ上のパラグラフで
 
With regard to practical reasons, both tasks were included in the learners’ syllabus and course materials, and the teachers of the participants reported to have used them frequently in their previous teaching activities. The two task topics (university issues and shopping) matched the themes covered in the learners’ theme-based course materials. To reduce a possibility that task topic might have impacted learner engagement, the two topics were selected based on the informal survey that reported university and shopping topics as the learners’ two most favorite topics.
 
という記述はあります。査読者に指摘されたのか,あるいは最初から書いてあるのかは定かではありませんがトピックの親密度という観点についてはディフェンスしてあります(つまり,著者もそういうことを言われるだろうという認識はある)。
 
 
とはいえ,あえてトピックを変えなくとも学校の問題点と解決策というトピックに固定して,意思決定型は合意を求め,意見交換型はおのおのが思う問題点と解決策をペアでシェアするという構成でもよかったように思います。というか,そちらのほうが「意見交換型」としては個人的には問題なく受け入れられます。ただし,debateという相手への反論が要求されるようなものでなければ,今回観察された以上に意思決定型との差が大きくなってしまうかもしれないとも思います。debateという形式を取ることで,相手の言ったことに対してただ単に「へー」で終わらせることができなくなっているという点はあるでしょう。そうした点で,合意を求めずともインタラクションが活発になるように仕組むための工夫がdebateを持ち込むという結果になったのかもしれません。
もう一つ個人的なことを言えば,ディベートという形式を取らない私が考えているような意見交換型タスクであれば,多様な意見がかわされればかわされるほど盛り上がることが見込まれるので,2人よりは3人,3人よりは4人というグループ構成で行ったほうが議論が盛り上がるのではないかと思います。1人で様々な角度から物事を分析的に考えて意見を提示できるような学習者同士のやりとりであれば2人でも議論は大いに盛り上がるでしょうけれど,大学生1年生や2年生でもそうしたことが2人で成立することがそこまで一般的に当然として考えられるとは言えないと思うからです。
 
 

この論文のポジティブな点

とまあいろいろ言いましたが,この論文の著者の狙いとは違うかもしれませんが,この論文を自分がポジティブに受け止めている点もあります。それは,タスクに関わる変数ではなく,タスクのタイプを主題として取り上げていることです。もちろん,上のTable 1のようにタスクをある観点(変数)で見たときに違いがあるということではあるのですが,実際にはdivergent-convergentという2つの異なるタイプのタスクを比較しています。これまでのタスク研究は,良くも悪くもタスクを操作する際の要因に着目して細かく検証することが多かったように思います。それも意味のあることで,準備時間の有る無しであったり,タスクの難易度を操作してみたり,というのは教育的示唆という観点でも有益でしょう。これらの要因は教師が操作することができるわけですから。一方で,現実的にタスク・ベースのコースを作ろうとシラバスを考え始めたとき,そのベースになるのはタスクを調整する変数ではなく,どのようなタイプのタスクにどのような順番で取り組ませるべきなのかということになるのではないかと思います。直感的に,意思決定タスクと情報伝達タスクを比較したら前者のほうが難しいから情報伝達が先にくるべきだろうのようなことは考えられます。ただし,タスクタイプの観点から見て,タスクの難しさやその要因を整理するということについていえば知見の蓄積がまだまだ乏しいように思います。

私が今関わって作っている教材もタスクタイプごとに整理していますが,タスクタイプという切り口は直感的に捉えやすく,異なるタスクの比較が見えやすくなります。そういうタスクのタイプという要因を正面から取り扱っているという点で,この後に続く研究が楽しみになってくるかなと思っています。ただし,従属変数のengagementについてはもう少し何か他の変数がないのかなということを思ったりしています。

おわりに

タスク系に正面からタックルした研究というのをなかなかできていないので,こういう論文を参考に何かできないかなと考えたりしています。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

 

参考文献
 
Pica, T., R. Kanagy and J. Falodun. 1993. Choosing and using communication tasks for second language instruction and research. In G. Crookes and S. M. Gass (eds.), Tasks and language learning: Integrating theory and practice, 9–34. Clevedon: Multilingual Matters.

 

Qiu, X. (2019). Functions of oral monologic tasks: Effects of topic familiarity on L2 speaking performance. Language Teaching Research. Advance Online Publication. doi:10.1177/1362168819829021

 

「意思決定タスク」の難しさ

ライティングの話が多かったので,今回はスピーキングの話。

タスクのタイプには情報伝達・ナレーション・情報合成・問題解決・意思決定などがありますよね。といってもわかりにくいかもしれませんが,一言でタスクと言ってもそれが求めることによっていくつかのタイプに分類できるのではないかなという話です。タスク・タイプの詳しい解説については,下記の論文をご参照ください。

松村昌紀(2017)「タスク・タイプの理論的基盤と学習者の言語使用」『中部地区英語教育学会紀要』46, 55–62. doi:10.20713/celes.46.0_55

意思決定タスクとして有名なのは「無人島タスク」で,「無人島に持っていくものをみんなで相談して決める」というもの。これが大筋で、どういう経緯で無人島に行くことになったのか,何個まで無人島に持っていくことができるか,その無人島は一体どんな場所なのか,などのコンテクストをうまく設定することで,リアリティを持たせるとともに議論に一定の方向性を持たせたり,持ち物を決める際のリーズニングのベースとして機能させたりします。

意思決定タスクのゴールは「合意」で,話し合いの中で意見を1つに集約することが求められます。無人島タスクなら,「1つだけ持っていける」という制限だとしたらその持ち物を1つに決めることができればタスクが達成できたと判断することになります。

私も授業でよく意思決定タスクをやることがあります。授業で使っているテキストに関連させた内容にすることが多いのですが,実際にタスクをやらせると,「合意する」というのは結構ハードルが高いのだなということを思い知らされます。だからこそ,タスクを配列することになった時には意思決定タスクは後ろの方にすることになるんですけどね(余談ですが,実際にゼロからタスクを構想したとき,1番作りやすいのは意思決定タスクだと個人的には思っています)。

例えば,「4人の教員採用候補者の中から1人選ぶ」というタスクをやるとします(R.Ellis, 2003に例が載っています)。この時,目の付け所って色んなところにあるんですよね。というかそうしないとそもそもタスクとして盛り上がらないわけです。みんながみんな「絶対この人でしょ」みたいになってしまえば,議論した上で合意形成するというプロセスが必要ないわけですから。ところが,そうやって意見が割れるように仕組むところまではうまくいっても,それをすり合わせるのはなかなか難しい。教員側としては、たくさん議論してほしいわけですから,簡単に誰かの意見に同意して議論を終わらせるみたいなことだけはどうしても避けたいと考えます。そうすると,「誰かの意見に簡単に同意できないからとにかく自分の意見を貫き通す」ことになってしまいます。しかし時間内にどこかで合意しないとタスク達成にならないので,どこかで誰かが折れて1つの意見を最終的に採用することになります。この「折れる」とき,採用される意見に納得していて,その意見を出した人がみんなを(または2人で取り組んでいるのなら会話相手を)説得したというのならそれでいいなと思います。ただし,やり取りを聞いていると,その議論がかみ合わずに平行線になって止まってしまい、埒があかないからどちらかが折れて合意するという流れが圧倒的に多いように感じています。

もちろんタスクの設定の仕方の問題もあるでしょうし,学生の言語的なレベルの問題もあるでしょうし,言語に関わらず議論するスキルの問題もあるかもしれません。原因が1つに絞られるとは思っていませんが,とにかくこの意思決定タスクというのは難しいということが,この1年間スピーキングの授業をやっていて思ったことです。合議によって意思を決定するというゴールに到達するためには,どのようなサブゴール(cf. タスクにおける”sub-goal”という概念)があるのかなというのも考えなくてはいけないかもしれません。それが明らかになれば,ある程度誘導が可能だからです。ただ,それを事前に教えるというのはタスクっぽくなくなってしまうので,それもやりながら徐々に浸透させていくような工夫が必要になるかなと思います。

授業で「意思決定タスク」をやるときに,気をつけているポイントはありますか?ということをみなさんにぜひ聞いてみたいです。

なにをゆう たむらゆう

おしまい。

タスクにおける”sub-goal”という概念

はじめに

下記の本を月例の研究会で1章ずつ読んでいます。

Recent Perspectives on Task-Based Language Learning and Teaching

Ed. by Ahmadian, Mohammad / García Mayo, María del Pilar

この本全体については,Cognitive-Interactionist, Sociocultural Theory, Complexity Theory, Pedagogic and Educationalという4つのperspectivesからなる12章の本で,個人的には通読するよりも気になった章だけつまみ食いするという読み方がいいかなと思います。正直言ってあまりおもしろくない(質があまり高くない)チャプターも結構ありますので。

 

第7章がおすすめ

この本の第7章は,Martin Bygateが書いた”Dynamic Systems Theory and the Issue of Predictability in Task-Based Language: Some Implications for Research Practice in TBLT”という論文です。タイトルにDynamic Systemsと書いてありますが,そこまでDSTを推しているということではなく,「タスクってさ,何かやらせてみてもどんなことが起こるかわからないしリアクティブに教えるのがいいっていうけどやっぱそういうの不安だもん」みたいな言説について,predictabilityが一応ありますよっていうことを言うための理論的基盤としてDSTを持ってきているという印象です。それをベースにして,ケーススタディ的にデータを見てみるというようなのがこの論文の流れです。

この章を読むまでは,「この本は失敗だったかもしれない」と思うほどがっかりさせられるようなものが多かったのですが,この第7章は面白いなと久しぶりにワクワクしました。もちろん,ちょっとそれはどうなのと思うところもあるにはありました。ただ,それを差し引いても面白かったです。

 

何がそんなに面白かったか

一言で言えば,この記事のタイトルにもしている”sub-goal”という概念を導入している点が個人的にはこの論文で一番inspringだと思ったところです。示しているデータはおそらく過去の研究のものでしたし,特に分析をしっかりしているということではないのですが,それでもこの”sub-goal”というものはTBLTの研究でいろんなことができそうだなと思えた,そう思わせてくれるような内容でした。もちろん,実践においても示唆があることだと思いました。

sub-goalとはなにか

TBLTをご存知の方には馴染みのあることだと思いますが,タスクにはゴールがあります。spot-the-difference taskなら2つの絵の間にある違いをすべて見つけ出すことがゴールですし,picture description taskなら絵(または写真)を見ずに口頭で描写し,もとの絵(や写真)にできるだけ近いものを完成させるというのがゴールになります。この章で例として用いられているタスクは,6コマ漫画を6人で分割して1人が1コマずつ持ち,見せ合わずに正しい順番に並び替えるというものです。この場合,「正しい順番に並び替える」というのがゴールになります(注1)。

Bygateが言っているのは,このゴールに向かう前の段階にいくつかのphaseがあるということです。どんなphaseかというのを説明する際にBygateは,pragmaticとかdiscourseとかいう言葉を説明の際に使っています。少し長いですが,このphaseについて説明している箇所を本文から引用します。

A phase was defined in terms of the pragmatic coherence of a stretch of discourse which while not in itself achieving the overall task goal, likely contributed to achieving a useful enabling sub-goal. For instance, descriptions of the individual pictures in random order would contribute to the sub-goal of sharing information about the pictures, but would not themselves achieve the overall goal of sorting out the sequence and telling the story (even if by chance the students did actually provide the descriptions in the exact sequence of the narrative). Similarly, discourse during which students exchanged information about what they thought was going on in their respective pictures could not be interpreted as ‘telling the story’ either. Where students spent time suggesting potential sequencing of the pictures (still without seeing them), possibly accompanied by brief justifications, this kind of talk too contributes to a potentially useful subgoal, but still does not constitute the ‘telling of the story’. Hence the macro-purposes of the different discourse phases were inferred in relation to the pragmatic criterion: what are the speakers jointly trying to do at this point? Identification of phases enabled an assessment of the trajectories that the groups followed (p.155).

上の引用中では,”(sorting out the sequence and) telling a story”というのがタスクの最終的なゴールで,そこに到達するために有効なやりとりや言語行為をphaseとしています。複数コマ漫画の並び替えならば,まずは個々人の持っている写真を描写することからスタートすると予測されるので,それが一つのphaseになるというわけです。そして,自分の写真とグループメンバーの写真についての情報を全員が持った状態で,それぞれの写真に描かれている情報の違いを見つけることになります。そして,「いったいどんなストーリーなのだろうか」という話をしながら前後関係を特定していくことになると予想されます。これらの段階もすべてphaseであると。そして学習者はこういった複数のphaseを経て,最終的なゴールに辿り着くというわけです。

Bygateは,複数コマ漫画並び替えタスクでは次の5つのphaseがあるとしています。

  1. Description
  2. Comparison
  3. Interpreting gist
  4. Sequencing
  5. Narrative

ちょっとなんでだろうなと思ったことは,タスクの特性などから予測してこのphaseを導出したのではなく,実際の発話の書き起こしを分類してそれぞれのラベルを貼ったという点です。その後に,結果の解釈として,「複数のグループでタスクをやらせたけど,ほとんどのグループのタスク遂行中の発話に5つのphaseが見られた」みたいな議論に持っていっているのです。そして,このことから学習者たちのやりとりは予測可能なtrajectoryを通ってゴールに向かうという話につなげています。もともと発話データから導出した概念なのだから,導出に用いたものと同じ発話データにphaseが見られるのは,複数グループで見てみたとはいえある程度当たり前なのでは…という話です。さらに,もし仮にそこに違いがあり,違うグループでphaseの種類や用いられた数が異なっていたとすれば,最初に設定した5つのphase自体がそもそも分析に役に立たない枠組みだということになりますよね。この点については謎です。

また,個人的に気になったのは,最終的にタスクを達成できたかどうかと,用いられたphaseの数自体には関連が見られなかったという点です。例えば,分析している5つのグループのうちで3のgetting gistが見られなかったグループが1つ,5のnarratingが見られなかったグループが1つ,2のcomparisonと4のsequencingが見られなかったグループが1つという記述がありますが,この3つのグループはいずれも最終的なゴールである並び替えには成功しているというのです。この部分については,例えばcomparisonがなかったグループはもしかするとズルして絵を見せあっていたのかもしれないというような考察がなされています(このグループは終わるのも早かったらしいです)。しかし,もし仮にタスクの最終的な達成と何も関連がないのであるとすれば,このsub-goalという考え方自体がそんなに大事なものなのか?という疑問も湧いてきます。

さらに,言語使用面についてはphaseによって特徴的な部分が見られなかったと考察しています。つまり,同じphaseなら同じような言語表現が用いられるというようなことはなく,同じcomparisonというphaseでもグループごとに様々な表現を用いて行っていたと書かれています。ただし,”linguistic domains“については予測が可能かもしれないとしています。このdomainの例として,下記のようなものがあがっています。

the language for expressing impressions, inferences and approximations; the language of description and for identifying similarities and differences; the language for expressing motivations and consequences; the language for sequencing; and the language used for checking understandings (p. 160).

素人考えでちょっと微妙だなと思うのは,このdomainというのはほとんどphaseのラベルと同じようなものなのではということです。会話分析みたいなことに明るいわけではないのですが,ここまで抽象度があがってしまうと,それが予測できたことで何に活かされるだろうかということは疑問です。

 

sub-goalという考えのなにがそんなに大事?

さて,なんか,sub-goalってなんか別にそんな大事じゃないじゃんと思っておられる方もいるでしょう。私もここまでは批判的に書いてきています。ここからは,「そうはいっても結構色々なところに通じる概念じゃないかな」ということを書きたいと思います。

先ほど,「タスクの達成とは関係ない」という議論がされていると書きましたが,もし仮にそれがそうだったとしても,教室場面での教育介入を考えた際にはsub-goalという概念は大事だと思います。まずは,授業の準備段階でsub-goalは役に立ちます。

 

タスクの作成・計画段階で有益

これはタスクに限ったことではないのですが,どのような言語活動を仕組むにせよ,教師は活動を考え,その手順を構想し,最終的にどこに辿り着くことを目指すのかを思案しますよね。その際に,活動に取り組ませたときにどのようなことが想定されるかを全く考えない教師はいないと思うのです。「きっとこんなことが起こるだろうな」とか,「こういうことになったらどうしようか」などと考えながら,事前に準備しておいたほうがよいことについては仕込んでおき,指示の与え方や順序を工夫したほうがよさそうならそのように対策を打っておくはずです。このとき,例えば事前にタスクのsub-goalがわかっていれば,学習者が起こす行動の予測がつきやすくなるといえます。冒頭にも書きましたが,タスクは(特にやりなれていないものをやる場合は)出たとこ勝負の部分もあり,何が起こるかわからないから事前にあれこれ教えてこちらの想定内でやってほしいという教師の思いも理解はできます。しかし,今後sub-goalという枠組みで様々なタスク遂行中に発生するsub-goalsが明らかになってくれば,「このタスクをやる際にはおおよそA, B, C, Dのような4つのphaseを通過すると考えられます」みたいな提案ができますよね。これが事前にわかっていれば,自分の教えている学習者との兼ね合いで準備が必要な部分や,そのタスクに取り組む前にやらせたほうが良いことを前時にやっておくというようなことができるのではないでしょうか。もっと言えば,sub-goalが目標になるような”sub tasks” を用意して,それらのタスクに取り組ませた後のもっと大きなチャレンジとしてsub-tasksが複合的に必要となるような別のタスクを用意するというようなことも考えられます。このように,タスクを構想したり,授業の計画を立てたりする際に,sub goalsが明確になっているということは大事だと思っています。

 

タスク遂行中の介入指導で有益

次は,実際に教室場面での指導において,sub-goalがわかっているということが役に立つ場面を考えたいと思います。あるタスクを与えて,学習者がそれに取り組んでいるとき,なかなかうまく言っていないことに教師が気づいたとします。例えば,複数コマ漫画の並び替えタスクで沈黙してしまっているグループがあったとしましょう。このとき,どのように促せばタスクのゴールに向かえるでしょうか。このときも,sub-goalはヒントになり得ると思います。例えば,5つあるphaseの序盤でつまづいているようならば,「まずは全員の持っている絵について描写して,自分の持っているものと他のメンバーの持っている絵の違いがどこにあるかを特定してみよう」という指示ができると思います。つまり,descriptionとcomparisonというsub goalを明示するということです。その先の,みんなの持っている絵の違いはわかったけど,そこから先に進めないというグループがいたら,「全員の絵の情報を統合して,ストーリーを考えてみよう」という指示も可能でしょう。もちろん,phaseは順番にこなさなければいけないということではありませんが,指針としてその場で与える分には問題ないでしょう。

そんなめんどくさいことしなくても,「じゃあ最初から,『まずは描写,そして比較,あらすじの解釈,並び替え,ストーリーの完成』というphaseをすべて提示してそのとおりにやらせればいいではないか」という意見もあるかと思います。学習者のレベルによってはそうした道筋を示すことも必要になってくるかと思いますが,Bygateは,phaseに完全な順序があることや,まったくoverlappingがないということを否定しています。

it is important to note that the phases do not imply total predictability. For one thing, the phases sometimes occur more than once in a single transcript, with students going backwards and forwards between, say, finding the gist and trying out a sequence (p.160).

また,「たとえsub goalsが明示されなくとも学習者たちは多かれ少なかれphaseを経てゴールに到達する(=予測可能性がある)」ということを言っています。つまり,phaseは与えられなくてもある意味でタスク達成に向かう試行錯誤の中で創発するということですね。それを手助けしてやることはあったとしても,最初からこの通りにやりなさいというのはtoo much interventionかなと個人的には思います。「正しい手順」や「理想的な手順」のようなものがあると学習者が思ってしまい,それに囚われすぎてしまう可能性があるからです。例えば,2. comparisonからいきなり4. sequencingに入ることも十分にありえることです。「まって,私の絵ではりんごは食べかけで,Aくんの絵ではりんごは丸々1つあるから,きっと私の絵はAくんの絵よりあとにくると思う」のような発話が起こることは歓迎されるべきで,「まって順番考えるより先にストーリーをつかもうよ」となってしまっては学習者の自由な発想が抑制されてしまうかもしれません。よって,sub goalを与えてそれに沿ってタスクを行わせることは有効な手立てとは言えません。

つまり,事前に教えてそのとおりにやらせることができるから役に立つというわけではありません。そうではなく,リアクティブな指導がやりやすくなるということです。教師自身がsub goalsを把握した上でタスクを用いれば,そのグループの状況に沿って,またはぶつかっている困難点に合わせてリアクティブに介入を行うことができると個人的には思っています。

事後のフィードバックで有益

sub goalという考えは,事後のフィードバックにとっても有効かもしれません。もしも,時間内にうまく課題を達成できなかったグループがあったとして,そのタスクにおいてsub goalsをいくつ達成できたかという点で見てみると彼らの課題が見つかるかもしれないからです。Bygateの示したデータでは,すべてのグループがタスクを達成したため,「phaseとタスク達成の関係」は完全には明らかになっていません。タスクを達成できなかったグループがいたとして,そのグループがもし仮にすべてのphaseを通過したのにできなかったとすれば,phaseはirrelevantということになります。しかしもしかすると,どこかでつまずいたことが原因でタスクを達成できなかったという学習者がいるかもしれません。絵の微細な点について,描写しなかった(またはできなかった)けれども実はその点が他の絵との違いで,その情報を全員で共有していればタスクが達成できたかもしれないということはありえます。別のケースで,sequencingでつまづいて終了してしまったとします。このときに,follow, precede, come before, come after, first, next, then, before, afterのような前後関係を表す表現がうまく使えなかったので並び替えができなったということがわかれば,その学習者たちに必要なのはこうした前後関係を表現する言語リソースが足りていないということになり,そこがteaching pointになるでしょう。言語面については,varietyが大きすぎて一貫性は見られなかったというのがBygateの結論でしたが,具体的な場面での話に限定すれば指導のヒントにはなるでしょう。

研究への示唆

研究という視点では,このBygateの論文からもう少し発展させた研究が必要だと思います。例えば,他のタスク(意思決定タスクなど)でも同じようにphaseの共通性は高いのかどうかや,同一タスクでタスクの諸条件(複数コマ漫画並び替えタスクにおけるコマの数やグループの人数の組み合わせ)が変わってもphaseに変化はないのか,などが気になっています。

また,Bygateは会話の書き起こしからphaseを導出していますが,そうではなく,教える側があるタスク中に発生すると考えられるphaseを予測し,それがどの程度実際の会話で起こるのかといったこともpracticalな意味で関心があります。

あとは,少し非現実的かもしれませんが,実験的な操作を加えて群間比較するというデザインも思いつきます。たとえば,複数のphaseの中で特定の1つを禁止するような指示を与えてみて,そのグループがどれだけタスク達成に困難を抱えるかを比較することで,タスク達成に寄与しやすい(または必須かもしれない)phaseを特定するというようなこともできるかもしれません。

おわりに

以上,Bygateが提案した,taskのsub-goalという点について,批判的に検討し,その後に,意義があると思われる点についていくつか述べました。やはり,タスクの中身,つまりタスク遂行中に何が起こっているのか,そうしたことを,sub-goalという概念で整理することを試みたことにこの論文の意義があると思います。DSTの枠組みにうまくfitしているかという点についてもやや疑問があったのですが,あまり詳しく批判できるほどの知識を持ち合わせていなかったのでそのあたりはまた別の機会にということにしようと思います。ということで,今回は久しぶりにTBLTに関するお話でした。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

注1. もちろん,仮にオリジナルのストーリーとは違う順番であったとしても,こちらの想定を超えたイマジネーションで別の順序でも筋の通った物語になるということがあれば,そしてそれを説明できれば,「正しい」順番ではなかったとしてもタスクのゴールを達成したと評価することもできると思います。

 

KELESセミナーでいただいたコメント・質問に答えます(後半)

この記事の続きです。途中まで書いていたのに,前半の記事をアップしてから2週間以上が経ってしまいました。この記事で私がいただいた質問・コメントにはすべてお答えしています。


コメント①

大学の授業で中学の教科書のような乗り換え案内の内容をやる一方で,入試や高校の教科書の内容は整合性がないように思えます。

お返事①

コメントありがとうございます。私がセミナーの中でお話した,私の担当する授業に関することの中に,乗換案内の話が出ていましたね(スライドでいうと8ページ目から)。補足しますと,私の非常勤先には英語の入試はありません。それでも「大学生」ですし,「英語」の授業を受けています。「大学生」に「中学の授業のような」課題をやらせるなんて,とお思いかもしれませんが,現実に,それが目標となる「大学生」を私は教えているという現状もあります。もちろん,大学が違えば学生が違いますので,大学が変われば私も「中学教科書のような」課題はやらないと思います。それができないので,まずはそのレベルの課題を,ただの会話パターンを暗記して話すような活動としてではなく,自分の言葉でなんとかやりきる力を身に着けさせたい,というのが,私の教師としての思いです。

質問者の方に満足していただけるかはわかりませんが,私からのコメントは以上です。

コメント②(①と同じ方からです)

生徒の言語リソースが蓄積されずとも現実に進級できる中,どうやって高次の活動を行わせれば良いでしょう?

お返事②

コメントありがとうございます。なぜ蓄積されないのに進級が可能なのか,私には不思議に思えて仕方がないのですが,本当に「ゼロ」(何も学んでいない)ということなら,進級させるのはおかしいと思いますし,「進級できないのでは」という時点で何かしらのサポートが必要になるのではないかと思います。別の可能性として,「本当はゼロではない」のに,ある側面からしか見ていないと「ゼロのように見える」ということもあるかもしれません。この場合は,彼らがどんな英語の力を持っているのか,多角的に評価してあげる必要がありますし,それらを活かしてより高度な課題が遂行できるように手助けしてあげられると良いのではと思います。

コメント③(①と同じ方からです)

やり方次第なのは承知していますが,タスク・ベースの授業を積み重ねれば,授業だけで東大・京大にはいることができるようになりますか。なると思いますか。

お返事③

コメントありがとうございます。どうでしょう。まず,「授業だけで」,つまり学校の授業時間のみの学習と,学校の教員が課す授業外学習のみで,本人の意志による自習や塾・予備校などでの学習を一切行わないで,東大・京大などに入学する人がどれくらいいるのかが気になりますね(そういう学習者ももちろん数としてはいることは間違いないでしょうが)。質問の意図が,そういうことではなく,「入試対策的または入試を意識した授業をそっくりそのままタスク・ベースの授業に変えても,生徒は東大・京大に入れるのか」であるとしたら,私には「できるようになる」とは言えません。わかりませんとしか言えません。

「なると思うか」については,「なるんじゃないか」と思いますが,そのときに,それが「タスク・ベースの指導の効果があったからか」と問われると,それもわかりません。上で述べましたように,今,入試に受かる英語力をつけた学生のその力のどの程度が「授業だけ」や「教師の指導方法だけ」の効果(他の要因を統制したときの影響)によるものなのかわからないからです。もちろん授業の効果は大きいのではないかと思いますが(調べたらそういう研究があるかもしれません),授業のやり方が変わることによって入試の合否が変わるほどの影響があるのかはわかりません。入試が変わらなかったとしたら,「入試対策」的なものが授業の外で何かしらの形で行われるようになるかもしれませんので。歯切れの悪いコメントで申し訳ありません。

コメント④(①と同じ方からです)

正直,現役の高校教員としては時間がなく,工夫工夫と言われても自分は良くても同リョウ[原文ママ]にはまだ求める事ができません。ぜひ教科書,シラバスとしてシステムで提供してください。

お返事④

コメントありがとうございます。「教科書やシステムで」というのはごもっともであると思います。しかしながら,なぜ現時点でそうしたものがないのかについては,いくつか考えられる理由があります。1つ目は,中学校あるいは高校を卒業する時点で身につけておくべき能力についての合意形成ができていないことではないでしょうか。CAN-DOリストは学校ごとに作るようになってい(ると思い)ますし,その中で教科書としてタスク・ベースのものを作るのは困難です。2つ目は,例えなんらかの基準に基づいてタスクを選定し,その配列を決めた教科書やシラバスを作っても,商業ベースで売れない(利益が出ない)ということがあるかと思います。

そこで可能性として考えられるのは,様々なレベルの,様々な種類のタスクが豊富に掲載された教材集を作ることです。その教材集を参考に,先生方自身にタスクを選んで配列してもらうことで,目の前の学習者に合ったタスク・ベースのシラバスを作るということはできるかもしれません。私自身の数少ない経験では,「教科書」があることで逆に教科書に縛られてしまい,タスク・ベースの授業を展開しづらいということになってしまうと感じています。

もう1つの可能性は,単一の授業実践ではなく,シラバスレベルでタスク・ベースの実践を共有していくことです。大学レベルでは,タスク・ベースの実践をされている方は国内でもいらっしゃいますので,そうした方々が,シラバスとして半期または年間でどのように授業を計画しているのかということは,他の先生方がタスク・ベースのシラバスを構築するヒントになるかもしれません。ただ,他の方の実践はそのまま自分の環境に当てはまるわけではありませんので,やはり何かしらの改変は必要になります。結局のところ,タスク・ベースのシラバスとはtailor-madeのシラバスになりますので,どの環境でも同じようにできるタスク・ベースのシラバスというのは難しいのかもしれません。だからこそ,どうしても,今現在先生方がされている実践をベースに「工夫を」ということになってしまいます。この点については,今後の課題とさせていただけませんでしょうか。私からのお返事は以上です。コメントありがとうございました。

コメント⑤

ご自身の普段のエピソードも交えてお話いただき,とてもわかりやすかったです。

2020年以降の入試改革で,中・高の授業はどのように変わっていくと思われますか?または,どう期待されますか?

お返事⑤

これは難しいですね。私としては,スピーキングやライティングも含めた4技能の入試になることでいい意味で波及効果としてスピーキングやライティングも授業の中で扱わないわけにはいかなくなってくるという点では期待しています。しかしながら一方で,そのスピーキングやライティングの扱いが「試験対策」的なものになってしまうことは危惧しています。そうなると,結局ライティングやスピーキングの「型」や「パターン」を覚えてその型どおりにうまく書いたり話したりできることが入試で高得点を取ることにつながってしまうかもしれないからです。これは全部悪いというわけではなく,何もできないよりは型どおりにでも書いたり話したりできる方が良いに決まっています。ただし,行き過ぎると「型通りにしかできない」という学習者を大量に生み出してしまうという可能性もはらんでいます。入試というか,客観的な測定を突き詰めるとどうしても得点の高い学習者のパフォーマンスと得点の低い学習者のパフォーマンスを弁別できるようにせざるを得ず,そうなるとそこに一定の傾向なり,「型」が生まれることになってしまいます。外部試験を運営している方々にはそうしたことに出来る限り配慮したパフォーマンス評価が求められると思いますし,教員側としても「型」の練習になってしまわないような試験対策が求められるのではないでしょうか。

コメント⑥(私に対しての質問かわかりませんが…)

もっとinputを増やしたい!!と思った生徒に対して,特別な宿題を出すなどはされているのでしょうか。

お返事⑥

今期は多読をやろうということで毎週1冊多読用の本を読んで感想を書くという活動をやっていましたが,そういうことではなしに「宿題」を出すことは今のところはありません。もし仮に個別に相談があったら,学習者のレベルに合わせてどんな方法でインプットを増やしたらよいかはアドバイスすると思います。

コメント⑦

I’m sorry your talk wasn’t so interesting to me. Your messages weren’t so inspiring either. Sorry

お返事⑧

率直なご感想をお聞かせいただきありがとうございました。interestingかつinspiringなtalkができるように精進したいと思います。また,このテーマにつきまして,どのような内容であれば,またどのようなメッセージであればinterestingでinspiringだと思っていただけたのか,今後のためにご教示いただければ幸いに存じます。

 


ここまで読んでいただいた方,また,この記事を御覧頂いているかわかりませんが,コメントを書いてくださった方,ありがとうございました。未熟者の私を講演者としてお呼びくださった関西英語教育学会の先生方にも改めて感謝申し上げます。この経験を無駄にしないようこれからも授業・勉強・研究に邁進したいと思います。今後共よろしくお願い申し上げます。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

KELESセミナーでいただいたコメント・質問に答えます(前半)

先月のKELESセミナーでは,最後にフロアからの質問やコメントを紙で受け付けて,それに各講演者が答えていくというようなセッションがありました。その場でうまく答えられなかった質問もありましたので,ここで改めていただいた質問やコメントについて,私なりの回答を書いておきたいと思います。質問に答える順番は単純に今持っている用紙を上から順番に書いていきますので,特に他意はありません。


コメント①

You need to study more and experience teaching English before giving your presentation in a seminar.

The data on 言語活動 might be rubbish if you don’t define 言語活動 clearly.

What you said today sounded sharrow [原文ママ] or fake.

It’s waste of time for us to listen to you. Sorry to be harsh but it’s quite true.

お返事①

大変率直なご意見をお聞かせいただき,ありがとうございました。講演のお話をいただいたときから,「私のようなものに講演者が務まるのだろうか」という不安はありました。その不安が的中してしまったようです。年末の貴重な土曜日のお時間や参加費が「無駄」になってしまったこと,大変申し訳ありませんでした。

さて,言語活動の定義についてですが,補足させていただきたいと思います。投影資料の11ページ目からになりますが,授業時間における言語活動の割合というお話をさせていただき,中高で比較して,中学校の方が多いということを申し上げました。言語活動は学習指導要領においては概念的に定義されているというよりも,具体的な活動として示されていると私は理解しています。また,中学校で求められる言語活動は,高等学校で求められる言語活動よりも基礎的・基本的なものも多いです。その意味で,高等学校での言語活動の割合が低いというのは,言語活動という言葉でカバーされる活動がそもそも中学校の方が多いので,授業時間内に占める言語活動の時間の割合が高くなっているのかもしれません。質問者の方のコメントが私が推測したような論理に基づいているのだとすれば,その点についてはご指摘のとおりかと思います。

ただし,もし仮にそうであったとしても,中学校と高等学校で全く同じ内容の指導が行われるのだとすれば,それは中学から高校へとあがっても教科内容が発展していないことになります。その点で,高校でより発展的なことが言語活動として設定されることは自然なことだと思います。もちろん,現実には中学校での内容が身についておらず,高校でもまた中学校の内容から,という場合も多いかと思います。それは理解した上であえて申し上げるならば,「これは現実として仕方ないのだ」としてしまうのではなく,松村さんが指摘したように,英語教育が「どこで躓いて落ちるかのゲーム」になってはいないだろうか,と考えることもできるかと思います。

このように考えると,言語活動が指し示すものが中学と高校で異なっていることや,そのことで言語活動の割合が変わることは事実かもしれませんが,それだけで私がお話した内容が”rubbish”になるとは思っていません。なぜなら,言語活動の話はその後の19ページ目からの教員の意識という話と接続していくからです。高校での言語活動の割合が低いから高校教員はダメなんだ,というようなことを私はお話したかったわけではありません。また,最初にお断りしたように,大規模調査の結果は日本のすべての教室の現場と100%一致するわけではありません。言語活動をたくさん取り入れた授業をしておられる先生方も多いかと思います。私が言語活動の話や教員の意識の話を持ち出したのは,「ざっくりと」現状を見て,言語活動の割合が低下したり,音読・発音練習・文法説明が行われる頻度が高かったりするとき,それが必ずしも教員の意識改革だけで達成される問題かという部分に焦点をあてたかったからです。ある指導の選択に関わる要因は教員のビリーフだけではありません。つまり,どれだけ優れた指導力があって,タスク・ベースの言語指導にシンパシーを感じても,それが実行に移せないケースもあるということです。その状況で,どれだけ理念を説いたり理解を促そうとしても,「できないものはできない」となってしまいます。これは,研究者1人が何か研究をすることで,あるいはそれを広めることで打開できる問題ではありません。しかし,だからといって,いわゆる「現場」への介入や干渉を求めるような外国語教育研究者が無視していい問題でもありません。

質問者の方に満足していただけるかはわかりませんが,私からのコメントは以上です。これからもっと勉強して,また,指導の経験も積んでから出直してきたいと思います。ありがとうございました。

コメント②

学習者の自由度を保障することと,学習者が発案した言語形式・表現形式(インターランゲージであっても)を形式的に評価すること,コミュニケーションが成立した事例を相互分析して次のタスク達成へのヒントとすることで,学習に発展が期待できるのでは?

お返事②

コメントありがとうございます。「形式的に評価」というのがどのレベルでの評価かはわかりかねますが,学習者が使用した言語形式や表現と,タスクが成功したか否かを分析するというのは意義があると思います。タスクの達成の鍵となるのは言語にかぎらず非言語的ストラテジーである場合もありますが,タスクの後のフィードバックでは基本的に「どのようにしたらタスクができたか,あるいはもっとスムースにできたか」といった点に焦点をあてるようにしています。質問者の方のご指摘のとおり,自由にやらせてみて,そのあとに「こういう質問をしてたけど,でも質問の仕方をこういう言い方にしたら相手も答えやすかったんじゃないかな?」というような具合です。

研究的に考えると,タスクの達成と非達成を分ける言語的要因を探るということになるかと思います。これは,言語形式を細かくみるということではないですが,例えば流暢さ,正確さ,複雑さの要因のうち,プロダクトの全体評価を予測する要因は何か,といったようなかたちでの研究はすでに行われています(e.g., Plakans, Gebril, & Bilki, 2016)。これを,あるタスクを達成したかどうかと,言語形式の使用という観点で見ていくというのは面白そうです。ただし,このアプローチの問題点の1つは,帰結として,タスク達成のためには「この形式を使えば良い」ということになり,それはつまり会話パターンを覚えて使えばよいということになってしまいます。これは,タスク・ベースの言語指導のもつ理念とは相容れないものです。

だからといって,あるタスクを達成するためにどんな言語的・非言語的リソースが役に立ちそうかというフィードバックを一切与えないわけにもいきません。大事なことは,どんなときでも「それを選択する」機会が保障されていることかなと思います。つまり,あるタスクが与えられたとき,自分が持つリソースの中からそのタスクでusefulな言語的表現をその場で学習者自身で選んで使えることを保障したいということです。

コメントをいただきありがとうございました。

コメント③

本日はお話ありがとうございました。教員が感じている課題に対し,発想の転換を提案していただき,考えさせられました。

少しずつでもタスク・ベースを取り入れていける様,努力したいと思います。

お返事③

コメントありがとうございます。少しでも私の話しを肯定的に捉えている方がいらっしゃってホッとしています。実践のことについてはタスク本をご参照ください(宣伝。ただしリンクは貼りません)。

コメント④

本日はありがとうございました。御著書を事前に拝読してから,今日のお話をうかがったので,より理解を深めることができました。

  • PPP型の授業より,かなり教員の指導力(手腕)が問われるかなと感じます
  • ”何ができるようになったか”生徒自身に言語化させる(ふり返らせる)時間はやはり取るべきでしょうか?
  • タスク型の自宅で取り組む課題を考える時,留意すべき点はありますか?(T-S,S-S間のinteractionは授業中の活動のように行えないので)また,例としてどのようなものが考えられますか?
お返事④

コメントありがとうございます。タスク本をお読みいただいたとのこと,誠にありがとうございます。3つの質問とコメントについて順番に答えさせていただきます。

1つ目,教員の手腕ということですが,「よりも」かどうかは明確に言えないかなと個人的には思います。PPP型であっても,oral introductionやpattern practiceをスムースに展開したり,最後の言語活動をどう構成するかやどう取り組ませるか,についてはそれなりの指導力が必要かと思います。ですから,PPP型で良い授業をされる先生は仮にタスク・ベースでこんな指導やってみてもらえませんかとお願いしても,うまくやれるのではないかと思います。

どのような指導形態であっても,英語力や学習者への臨機応変な対応などはよい授業を作るために教師に求められる能力だと思います。ただし,事前に準備したり,学習者の対応を予測しづらいというのはタスク・ベースの方が少しあるかもしれません。ただどんな授業でも予測できないことが起こるのが教室という場所だと思いますし,それをうまく学びに変えたり,教師自身が楽しめるのが大事かなと思います。

2つ目,振り返りの時間のことですが,これはやったほうがいいと個人的には思います。どんな授業をやったとしても,その日になにを学んだかや次の授業にどんな目標をもって臨むかということを少しでも考えてもらわないと,学びが蓄積されていかないのではないかなというのが個人的な考えです。特に,学習の成果が教科書やノートを見ればわかるようなものではなく,その日に教室で自分がした行動が学習の成果になるわけですので(もちろんワークシートに何らかの軌跡は残るでしょうが),それを蓄積していく手段をなんらかの形でとらないと,「なんかやって楽しかった」,で終わってしまうと思いますし,最悪の場合「結局なにもできなかった」,となってしまうかもしれません。

振り返りをするにも,ただ単にふり返らせたり,できたこと・できなかったことを自由に書かせると有意義な振り返りにならないこともあるので,その授業時間の目標を明確に提示して意識させたうえで,場合によってはそれを学習者自身に書かせた上で,それが達成されたかどうかを書かせたり,達成されなかったとしたら原因はどこにありそうかを考えさせたりという方法で最初はやっていくのがよいかもしれません。

3つ目,自宅学習についてですが,自宅学習でタスクと考えるのではなく,授業の構成を考えて,教室場面でしかできないことと,教室でなくてもできることに分けてみて,教室でなくてもできることを自宅学習に回すと考えるのが良いのではないかと思います。例えば,メインのタスクに入る前の事前タスクとして何かを読んでくる,あるいはキーワードの意味を調べてくる,といったようなことを自宅学習の課題にするという発想です。こうすれば,メインのタスクのために十分な時間を授業内で確保することが可能ですし,タスクを繰り返し行うことにもつなげられるかもしれません。また,話した内容について,事後タスクとしてのライティング課題を宿題として書かせてくるということも考えられます。個人的には,教室に学習者が集まっているからには,その中で1人1人が黙々と個人で作業する時間はもったいないと思ってしまうので,そうした時間を自宅学習に回すようにと考えています。ただし,1人ではできないというケースもあるかもしれませんので,授業でいきなり全員が事前タスクをやっている前提で始めたりせず,まずはペアやグループ,隣近所で確認したり教え合ったりする時間を少し設けることも必要かもしれません。事前タスクが渡された授業を休んでいたという場合も,ここでcatch upさせてあげられます。

もう1つ考えられるのは,どうしても文法演習や単語学習,音読などを含む,「既存」の英語授業と併用してタスクベースの授業を運営しなければならず,授業時間が足りないという場合に,文法演習やその解説を自宅学習にまわしてしまうということも考えられます。今風の言葉でいえば,「反転学習」とも言えるでしょうか。私は昨年度後期から,教科書の文法演習のセクションについてはすべて宿題として,授業用ウェブサイトにアップロードした自作の解説動画を見て答え合わせをさせるようにしています。もちろん,このことによってほとんど宿題をやらないというケースも出てくることは危惧されますよね。そこで,その対応として,やった「証拠」として,答え合わせ後のページを写真に撮って提出させています。これを見れば,「全部赤で書いてあるやん」とか「答えを全部書き写してから全部○したな」とかすぐにわかってしまいます(たまに答えを間違えているのに○されていたりとかしますので)。もちろん,これだけで全員に100%で取り組ませることはできていないかもしれませんが,それは教室内で時間を取って解説したり問題を解かせたりしても同じことかなと割り切ってしまっています。

ということで,自宅学習については事前タスク・事後タスクとして1人でもできる部分があるものを自宅学習課題として位置づけるという方法が1つです。もう1つは,文法演習や単語学習,音読課題など,既存の英語授業で行っていた活動を授業外の学習にあてるという方法です。

ご質問にうまく答えられているかわかりませんが,私からのお返事は以上です。コメントありがとうございました。


あと4枚残っているのですが,ここまででだいぶ長くなってしまったので,後半は別の記事としてアップしたいと思います。ここまで読んでいただいた方,また,この記事を御覧頂いているかわかりませんが,コメントを書いてくださった方,ありがとうございました。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。