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”TOEIC730=TOEFL iBT 80”ってどっからきたの?

どうもこんにちは。昨日の記事の続きの論文レビューをやりたいところなんですが、タイトルのことが気になったのでちょっと書いておきたいなと思います。まず初めに断っておきますと、「そもそも試験の点数とか意味ないんで。実務できなきゃ意味ないんで」みたいな言説があるのはわかっていますしそういう人達の主張もまあわからなくもないです。まあそこはおいておいて、さらに両方のテストが作られた目的やなんのために用いられているのかも違うということは十分に承知しています。

その上で、これだけ英語に対する関心が高く、その中でもTOEICという言葉が関わりをもってくる人たちもどんどん増えてきている中で、「あくまで目安として」ではありますが、TOEICとその他の試験の点数の比較がなされることがよく見受けられると思いますし、TOEICとTOEFLのようなスコア型ではない英検であっても「TOEIC○○点=英検○○級」のように比較されることもあります。Googleで、「toeic toefl」と入力してみると、

http://www.google.co.jp/search?q=TOEIC&aq=f&sugexp=chrome,mod=2&sourceid=chrome&ie=UTF-8#hl=ja&gs_nf=1&pq=toeic&cp=8&gs_id=bx&xhr=t&q=toeic+toefl&pf=p&sclient=psy-ab&oq=toeic+to&gs_l=&pbx=1&bav=on.2,or.r_gc.r_pw.r_qf.&fp=6e6567d5bbe65e28&biw=950&bih=974

toeic toefl – Google 検索 via kwout

 こんな感じで換算っていうのが2番目にでてきたりして、まあ世間的な関心も高そうだなと思ったわけです。それで、タイトルの”TOEIC730=TOEFLiBT80″というのはなんかどっかで見かけた記憶があって、両方受けたことがある僕の実感にはどうも合わないんですね。もちろん「目安」であるのですが、それにしたってずいぶん違いやしないかねえという印象がどうしても否めないのです。大学に入ったときにTOEIC730取りましたけどじゃあそのときに海外の大学院で要求されるTOEFL80の英語力あったかっていうと「そんなはずねーだろ!だったらなんで今こんな苦労してるのよ」となるわけです。それに加えて、今とある統計に関する本を読んでいて、あるテストの点数と別のテストの点数の相関関係を調べて、片方のテストの点数からもう一方のテストの点数を予測するという回帰分析(この場合は単回帰分析になります)の話があったんです。

それで、「おお、これは」と思ったわけです。テストの点数の比較という点でTOEICとTOEFLの点数を比べるのも同じ事なのだから、どうやって上記の”TOEIC730=TOEFLiBT80″という換算結果が導き出されたかというのを調べてみようと思ったわけです。しかしながら調べてみると、公式にTOEICとTOEFLiBTの比較をしているような資料は残念ながら発見できませんでした。というのも、TOEICとTOEFLPBTの比較というのは、両者のテストを作っているETSという機関が公式に発表していたということがわかりました。しかしながら、現在はそのリンクがすでに存在せず、それを引用して掲載しているサイトしかありません。例えば、以下のサイトです。

TOEFLとTOEICの違い – TOEFLiBT®テスト対策カレッジ

上記のサイトでは、換算の公式も載せてあります。

TOEICスコア×0.348+296=TOEFLスコア

他にもTOEICとTOEFLの換算表を掲載しているサイトはたくさんありますが、僕が上記のサイトを引いてきたのは、とりあえず「ETS公式の見解に基づいている」という点です。公式サイトに掲載があったことや、それが既に存在しないものであるという説明はないものの、上記のようにTOEICスコアとTOEFLPBT版のスコアの比較のみを掲載しているという点では以下のサイトもまあ。ただ自社のテストとTOEICそしてTOEFLPBTをどうやって換算しているのかについては不明です。

GTEC FAQ – 個人受験者 – TOEIC・TOEFLとの換算方法

 ということで、まず第一点目として、

公式にTOEICとTOEFLの比較をかつてETSが発表していたが、そのリンクは今は存在せず、さらにそのTOEICの比較はTOEFLPBTとの比較であった。

ということがわかりました。ここまで詳しく説明はしてきませんでしたが、TOEFLというテストは、最初はPBT(paper-based test)として存在し、それが1998年に(日本では2000年より)コンピューター版であるCBTが導入されました。その後、2005年(日本では1年後の2006年)に現在最も主流であるiBT(internet-based test)になったという歴史があります(参考:TOEFLテスト | TOEFLテストの変遷)。ですから、ETS公式に、TOEFLの各テストスコアの換算表というのは存在しています。それがこちらのリンク先のPDFファイルになります。

http://www.ets.org/Media/Tests/TOEFL/pdf/TOEFL_iBT_Score_Comparison_Tables.pdf

TOEFLの各テストを比べるとiBTの最も大きな特徴は今までになかったスピーキングセクションが導入されたことでしょう。そして、ライティングセクションの形式もそれぞれに大きく異なっています。そのことは注意書きとして書いてありますが、テスト全体でのスコアの換算と、リーディング・リスニング・ライティングのセクションごとのスコア換算表がこのPDFには載っています。そして、これが現在最も流通しているTOEFLのスコア換算表です。例えば、タイトルのTOEFLiBT80というのはPBT版では550と等しいということになっています(※実際には79-80と550が同じ行にあります)。これは、IBT導入時の2005年に出されたようであるETSの公式の資料ではあるものの、残念ながらどうやら現在は公式のサイトからのリンクが消えているようなんです。googleで検索するとこのファイルは見つかるのですが、ETSのサイトからこの資料へのアクセスがなくなっているようなんです(もし僕の検索力不足でETS内にリンクあるようでしたら僕の勘違いですので訂正します)。もちろんETSが出している公式問題集のようなものにも載っているかもしれませんが…

もう今やiBTがかなり普及している以上、もはや旧テストとの比較をする重要性がほとんどなくなってきていることが原因かと思います。ですから、ETS内で”score comparison”と検索すると、上位の検索結果はほとんどがIELTSとの換算になっています。またCEFRとの換算表も掲載されています(参考:TOEFL: For Academic Institutions: Compare Scores)。まあ考えてみると、そもそも「TOEICなんてほとんど日本と韓国にしか受験者いないしなにが国際だよpgr」的言説はかなり一般的になってきていますので、TOEICとTOEFLのスコアを換算したがるのもほとんど日本人ばかりなんでしょうね。なのでETSでわざわざ換算表載せたりもしてないと。そもそも目的の違うテストですし。ということでじゃあ日本語サイトなら…というわけでTOEFLテストの日本事務局であるCIEEのサイトを見てみたのですが、スコアの換算というのを見ても、さきほどのPDF資料のリンク先があるだけでTOEICとの換算表はありませんでした。ちなみに日本のTOEIC公式サイトでも、TOEFLiBTとTOEICのスコア換算表は掲載していないようです(参考:TOEICテスト|公式データ・資料)。またよくある質問のQ1-8では「知名度の高い他の試験と比較できると便利です。例えば、英検の1級や2級はTOEICスコアでは何点位に相当しますか?」という質問に対して、

A1-8.テストは同質のものは比較できますが、異質の部分が多くなると比較は困難です。

TOEICと英検は英語のテストということでは同じですが、目的・内容に違いがあるらしく一概にTOEICスコア何点で英検何級合格とほぼ同じレベルとは言えないようです。また英検合格者が、いつその級に合格したのか、そしてその後も英語の勉強は続けていたのかあるいは日常・業務上で英語を使う機会があったのか等も考慮に入れる必要があります。また近年英検の試験内容が変更になったりもしていますので、それ以前と以後の英検合格者ではまた違ったものになると考えられます。(一財)国際ビジネスコミュニケーション協会ではこの件に対する受験者の関心が高いことから、’01年9月に実施された第86回公開テストの受験者に対しアンケート調査を行い、その中で英検資格の有無についてデータ収集をし、過去2年以内に取得された方々のTOEICスコアの分布結果を本ホームページの公式データ・資料の中で提供しておりますので、ご参考になさってください。ただし先に申し上げたように様々な要因が関係してくるため、この結果が常に当てはまるわけではなく、一つの調査結果、データとご理解ください。到達していなければその差を埋めるべく今後の学習の目安にしてゆけばよいのです。

という回答が掲載されています。というわけで、もうみなさんお気づきかと思いますが、TOEICとTOEFLiBTのスコア比較というのはちゃんとなされてないのにも関わらず、かつてのPBT版とTOEICのスコア表と、TOEFLの3つのテストのスコア換算表を勝手に横に並べて、「TOEICとTOEFLiBTのスコア換算は以下のようになります。」みたいな感じで無責任に掲載しているサイトがほとんどなんです。

 ここに挙げたのはあくまで一部ですが、多分ほとんどのサイトがそうだと思います。まああくまでも「目安だから」というのはあるでしょうけれども、それにしたって、PBT→iBTの段階でその予測がどれだけ正しいものかというのもあまり確かではない(ETSのリサーチページをざっと見ましたが、テスト自体の妥当性(リーディングセクションならリーディング能力を正しく測定できているか)や、「TOEICテストのリーディングとリスニングのスコアはスピーキング力・リスニング力とも相関があるか」などの研究はありましたが、このスコアの比較がどれくらい正確なものなのかという資料は残念ながら発見できませんでした。もしご存知の方いたら教えて下さい)のにもかかわらず、PBT・iBT・TOEICを並べてしまうのは少し乱暴すぎなんじゃないのかなと疑問に思いました。どうせならちゃんとiBTとTOEICで比べてみたらいいんじゃないのかなと(もしそういう研究をご存知の方いらしたら教えていただけるとありがたいです)。

タイトルと本文含め”TOEIC730=TOEFL iBT 80”という表現を使っていたわけですが、これも実はちょっとミスリーディングで、”1+1=2”の時の”=”とはちょっと違うんですよね。まず「TOEICの点数が高ければTOEFLiBTの点数も高い」という相関関係があることが前提でそれで高い相関関係にあるということがわかったとしてもまずそこで100%ではないですよね(高そうではありますが)。だから本当は=じゃないんですよね。いや、式で表すと=を使いますけど実際には「残差」と呼ばれる誤差が発生してしまいますし、その得点の信頼度も相関係数によるんですよね。

まあえらそうなこと言ってますが実はこれを読んでたらいろいろ今回みたいな疑問が湧いてきたんですよね。たぶんこれでもものすごく噛み砕いて丁寧に説明されているのでしょうけどもだんだん難しくなってきて、前の章やページをいったりきたりしながら読んでいます。でも本当に日本から取り寄せてよかったです。勉強になります。

外国語教育研究ハンドブック―研究手法のより良い理解のために

というわけでもうすっかり日が暮れてしまい午後8時半を過ぎました。そろそろ夜ご飯でも作ろうかと思います。このへんで。

では。

アメリカ New Hampshireより。

おしまい。

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