【宣伝】タスク教材のお披露目!(2020/10/25)

来週10月25日(日)にオンラインで開催される「言語教育エキスポ2020補講」というイベントで,私が微力ながら作成に携わってきたタスク教材が初お披露目されます!当日は様々な発表がされる予定となっていますが,その中の,「言語教育エキスポが自信をもって紹介する言語教育出版企画」の中のセッションで,著者全員で教材の紹介をする予定です。

教材のタイトルは,『コミュニケーション・タスクのアイデアとマテリアル−教室と世界をつなぐ英語授業のために−』で,三修社さんから出版される予定です。出版社のページには,目次と簡単な紹介が出ています。まだAmazon等には出ていないようですが,その準備も進めているとのことで,間に合えば25日までにはAmazonのページもできると聞いています(注)。

当日の発表の要旨を以下に引用します。

英語教育の現状での課題、そして妥当な目標のあり方とは──その解をもたらす一つの有効な鍵が、授業への「コミュニケーション・タスク」の導入であると考えます。そうした課題の基本的な性格をはじめ、課題の難易度の捉え方、適切な課題の選択や文法の導入方法、評価法など、書籍内の例を取りあげつつ紹介します。学習者にとってより魅力ある授業作りに役立つ「現実世界へのアダプタビリティの高いタスク」を有効に用いるためのヒント満載のブック・トークへ、どうぞおいでください。

イベントの参加申込はこちらのGoogle Formからお願いします。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdQT3W7PLyqp0rKuCUtiZYYUB1qBm-GH_IanZL4Bogx37Ij_w/viewform

私達の教材のトークセッションは15:50〜16:50の予定となっています。参加申込していただくと,主催者からZoomのIDとパスワードが送られてくるということになっていると思います。ただ,出版社のセッションは出版社がZoomのホストになるようで,私のところにもIDとパスワードが知らされてそれで入れるようになるので,参加申込を忘れてしまった!という方は当日でも私にTwitter等で話しかけていただければIDとパスワードこっそりお送りできると思います(こんなこと書いていいのかな?)。

ちょっとした裏話

著者は中部大学の加藤由崇さん,名城大学の松村昌紀さん,Paul Wickingさん,立命館大学の横山友里さん,そして,中京大学の小林真実さんです。月に一度名古屋で開かれている研究会のメンバーが中心になって,毎月1度のミーティング(計25回),そして2度の泊まり込み合宿等を経て,ようやく完成までこぎつけました。最終的に教材として掲載されるタスクを絞り込むまでに,その何倍ものタスクをそれぞれの著者が考案し,それらを相互に検討し,ボツになったタスクも数え切れないほどあります。つまり,掲載されたタスクは厳選に厳選を重ねた上で選ばれたものです。また,著者の誰かが自身の教室で実践した上で提案されていますので,そうした意味でも実践に耐えうる素材が掲載されています。ただし,著者は全員が大学教員ですので,大学の場での実践を経たということですが,この本に掲載されているタスクは必ずしも大学生向けというわけではありません。しかしながら,少なくともタスクのいくつかは難易度を調整することで初学者向けのクラスでも十分に機能するはずで,どの校種の先生方にも手に取っていただきたいと思っています。

当初は教科書の形で出版することを考えていましたが,色々あって「教材集」という形となりました。正直に言って,このタスク教材というのは私達にとってもチャレンジングなタスクでした。というのも,これまでに多くの教材集・アクティビティ集は出版されてきていると思いますし,なかには「タスク」という名のついたものもあると思います。しかしながら,Task-based Language Teachingの理念に基づき,単なる文法や文型のなどの形式の練習とは異なる目的をもった課題を中心に編纂されたものはおそらくなかったと思うのです。そのようなものは日本では受け入れられにくいのではないかという意見もありました。一方で,タスクの話をするたびに,「すぐに使えるタスクがほしい」という声も多く聞いていました。まさにTASK TALK Vol. 29「フジタクさんと語る①」の会で藤田先生がおっしゃっていたことともリンクしていて,実際にやってみて,うまくいかなかったら自分でアレンジするし,そもそも人のアイデアが自分の教室でそっくりそのままうまくいくなんて思ってない,みたいな話もあるわけです。そういう方々にとっては,それこそ「明日すぐ使えるタスクがほしい」という思いもあるだろうと。そういう声に応えるということもこの教材を世に送り出す目的だと思っています。

私としては,以前にタスクは取り入れられないなんていうタイトルのブログ記事を書いたことがあります。「明日すぐ使える」っていうのは,普段はタスク・ベースでやっていないけどタスクを「投げ込み」的にやってみたいということだと思います。私としては,それを良い授業にしていこうとすると,必然的にすべての授業がタスク・ベースにならざるを得ないのではないかと考えてそういう記事を書きました。その考えは今でもあまり変わってはいません。

じゃあなんでタスク教材集なんか出してんだよって思われるかもしれませんが,この本がどうやって世の中に受容されるかは未知数だと思っています。よって,投げ込み的にうまくタスクを取り入れた授業を展開する方もいらっしゃるかもしれませんし,帯活動的に授業にタスクを取り入れて授業を展開される方いるかもしれません。そのあたりの実際にこの本がどう利用されるかというのは,本当にこの本を手にとってくださった方々次第だというふうに思っています。私個人としては,この教材集に掲載されたタスクを自分なりに選んで配列してタスク・ベースの授業を構想して使おうと思っています。教科書が指定されていない授業を担当されている方は,そういった使い方も十分に可能です。

おわりに

といった感じで,著者の一人である私も,この新しいタスク教材というものが,日本で売れるのだろうか…というのは本当に全く予想がつきません。そんな教材集の出版を引き受けてくださった三修社の方々には本当に感謝しています。もちろん著者の一人として自信を持っておすすめできるものになってますので,こうやってブログで宣伝して一人でも多くの方のところに届いてほしいと思っています。まずは,本の内容を知ってもらうために,ぜひ25日のブックトークセッションにご参加ください。Q&Aの時間も設ける予定になっています。

また販売が開始される時期に改めて教材の宣伝記事を書きたいと思います。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

(2020/10/23追記)

注. Amazonでの予約販売も開始されています。書影も入りました。

slackの通話機能でスピーキング活動しよう(案)

はじめに

久しぶりのブログ更新になってしまいました。春学期中は色々slackを使って遠隔授業をどうやって進めていくかということを日々考えながら試行錯誤していたので,それをブログ記事に書くという動機も高かったわけですが,終わったら力尽きたというか,春学期のまとめを書く元気もなかったというのが正直なところです。

さて,私の勤務先では,来週月曜日(9/21)から秋学期授業が始まります。方針として原則対面授業ということになりましたので,久しぶりに教室で授業をすることになります。ところが,大教室で間隔をあけて授業できるというわけでもありません。授業は「試験定員で教室割当」となっていて,それだけを見ると普段より大きい教室が割り当てられそうな感じがします。ただ,実際には例えば机が1つずつ独立していれば収容人数=試験定員という考え方になっています。したがって,47人の教室でも47人以下ならセーフということになります。机が固定されていたり,長机の教室だと,3人がけのところを真ん中1つあけて着席ということになるでしょう。個人的には,屋外なのに客席を3つほどあけてJリーグの試合を観戦しているので,その半分くらいの距離しか空いていない上に屋内で,しかも発声がやむを得ない語学の授業を行うというのは換気を徹底するとはいえ心配です。

春学期のオンライン授業の際にはslackでテキストチャットさせるという手段でそれなりにうまくいっていたのですが,せっかく教室に集まったのにみな無言でテキストチャットさせるのかというと,ちょっとそこまで割り切るのは難しいなと感じています。かといって,「仕方ないよね!」といってコロナ禍前のようにペア・グループでのインタラクションを全面に押し出した授業をするという選択もしづらい。そんな悩みをここ一ヶ月くらい抱えていました。

解決策:春学期の蓄積を活かしてslackの通話機能を使ってみる

「教室で糸電話したらいいんじゃないの?」なんて言ってた同僚の先生もいたのですが,そういう使い回しのものは使用後の消毒が面倒になります。消毒するための費用を大学側が仮に負担してくれたとしても,そこに時間を割きたいとは正直思えません。よって,なにか学生が所有しているものを活かそうという考えになります。スマートフォンですね(注)。

授業内でZoomを使うか,という考えもあるかもしれませんが,zoomの利用は基本的に教員がホストで学生を招待という形がこれまで多かったはずで,学生同士が1対1ないしはグループでの通話を各自で行うというような使い方は導入のコスト(やり方の説明,ルールの統一,トラブル対応等)が大きいことが見込まれます。

そこで,slackの通話機能を使ってみようかなと考えています。要するにスマートフォンでペアの相手と電話するということですね。話すことには代わりないにせよ,向き合って話したり声のボリュームをあげなくても十分に会話できるのではないかと思うからです。

slackの通話機能は,同じワークスペース内のメンバー同士なら自由に通話が可能です。グループ通話は有料版でしかできませんが,教室内でのタスクをペアだけに限定することだけ割り切れば,意外と使えるのではないかと考えています。なぜなら,私の英語の授業では外国語学部の中国語専攻の学生対象の少人数(5人)のクラスを除けば,すべてのクラスでslackのワークスペースを作成してあり,学生がslackの利用に半期の間馴染んできているからです。もちろん,再履修で秋学期から授業に参加する学生も各クラス数名ずついますが,slackへの参加方法や利用法はすでに春学期に資料を作成済みであり,その数名に個別に対応する手間はそこまで大きくありません。

slackの通話機能は,MacやWindows上であればビデオ通話をすることができますが,iOS, Androidなどのスマートフォンでは音声通話しかできません。私はこれも逆にいいかなと思っています。教室で学生が一斉にWiFiに接続してビデオ通話したらキャパオーバーになる可能性は十分にありますし,そもそも教室にいるのだから隣同士で会話することにすれば一応相手を見ることもできます。

操作も簡単で,通話を掛ける側は,DMを送る画面で相手の名前を検索し,見つけたら右上にある電話のマークをタップすれば通話が開始されます(初めて利用する際はマイクへのアクセス許可がでてきます)。通話を受ける側はアプリを起動していなくてもLINEで電話がかかってくるのと同じような通知がくるので,ワンタップで着信を受けることができます。私も実際に利用したことはなかったので,ワークスペースのオーナーアカウントとは別のメールアドレスでワークスペースに入り2つのデバイスを使ってどんな感じになるのか試してみたというところです。

音声通話のみですので,スピーカーホンにしていなければスマホを耳に当てて通話することになります。これのいい点はハウリングを避けられるということです。イヤホンが必須かなと思いましたし,そうするとイヤホン忘れた学生がいた場合にどうしようかということも考えましたが,その心配はなさそうです。

問題点

ぱっと思いついた問題点は,奇数になったらどうするかです。

特にこの話だけに限らないですが,1対1の通話しかできない場合,3人グループが作りにくいという問題があります。普段なら2対1でもとくに問題があるわけではありませんが,できれば1つのスマホで複数人が会話するようなことは避けたいです。なぜなら,物の受け渡しが発生したり,学生同士の距離が近くなるということで感染防止対策の観点で問題があるからです。

では,ということで教師が学生の相手となってこの問題を解消しようということも考えられますが,通常以上にトラブルが発生する可能性が高いので,できればその際にすぐ対応できるように教師はできるだけ教室全体を観察できる状態でいたいと考えます。

スピーカーホンにするとハウリングの問題が出てきてしまいますし,それならもはやわざわざ電話じゃなくていもいいのでは?となりますよね。有料プランもそこまで安いものでもない(一番安いものでも1人につき850/yen per month)ので,このためだけに導入するというのは厳しいです。Microsoft Teamsも勤務先では使えるので,グループ通話が可能なそちらのツールを使うということも考えられます。ただ,私自身がそこまで使い方に習熟していないことと,新しいツールをさらに導入することで学生にかかる負担(アプリのDL等)を考えると,それも躊躇してしまいます。

発想を変えて,ペアの相手がいない学習者は教室を歩き回ってクラスメイトの言語使用を観察し,活動後に全体に対して報告してもらう役目を与えるという解決策もあります(こういうのがどこまで許されるのかはわかりませんが…)。その場にいるとはいえ,電話越しで行われるやりとりを観察するのは割と高度な技だと思うので,これもこの役割になったときにどのようなポイントで観察をするのか,どうやって報告するのかなどのガイドライン等を設けることも必要になってきます。

おわりに

奇数になったらどうするかということを考えるだけで色々なハードルも見えてきました。時間はないですが,とりあえず教室内で全員が通話することがそもそもできるのかということも含めて試してみてからその後の利用も考えようかなと思っています。

通常,電話というのは電話番号なりLINEのアカウントなり,プライベートで使っているものを相手と共有しないといけません。その点,slackはあくまで授業のためのツールで学生も使ってますので,プライバシーに気を使うことなく利用できる点が気に入っています。LINEのオープンチャットもそういう思想だと思いますが,LINEのオープンチャットは通話機能がないんですよね。ということで全員で連絡を共有するツールとしてはできますが,個々人がつながるという点では使えません。悩ましいですね。

最後に,対面でできる授業の工夫としてもっと汎用性の高い情報(それこそ公立学校でもできる工夫)としては,下記のようなものもあります(宣伝)。有料マガジンの一部ですが,興味のある方はぜひ。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

注. ちなみに,そもそも私は大学しか想定してませんし,なんなら自分の授業のことしか考えていません。そのうえで,slack使ったらどうかなという記事を書いたら思いの外いろんな方に読んでいただいたのと同じように,どこかの誰かにヒットすればという思いでこの記事を書いてます。公立学校でそんなことできませんとかそういうのはどうかご遠慮ください。

Macの移行システムのあとDropbox沼にハマった

新しくMacbook Pro (13-inch, 2020, Four Thunderbolt 3 ports)を買いました。Macbook Air 2013 midからの乗り換えで,Macの移行システムを使ってデータ移行しました。MBA側でOSのアップデートがされていなくて何度も失敗したんですが,最新版にしたらWifiでもできました。Wifiでは無理っていう記事もたくさん見たんですが,5時間くらいで終わったと思います。私は基本的にファイルはOne DriveやDropboxに保存しているので,それらのファイルは移行対象から外して,あとで同期すればいいやと思っていました。

ところが,これがのちに問題になることに….

最終的に,下記の掲示板に掲載されているターミナルのコマンドを打ち込んだら解決しました。日本語では解決策を見つけられなかったので,英語ができてよかったと思いました。

https://apple.stackexchange.com/questions/128551/dropbox-asking-for-permissions-to-wrong-folder-after-changing-account-name

実は,このページに辿り着く前に,「まさにこの状況と同じ!」という相談内容が書き込まれていたページも見つけたんです。ただ,そこで示された方法を試しても解決されず。

https://www.dropboxforum.com/t5/Dropbox-files-folders/Can-t-start-dropbox-because-of-permission-error/td-p/22462

Dropboxの公式でも,上の掲示板で提案されているのと同じようにターミナルに打ち込む方法が書かれていたけど,それではうまくいきませんでした。

https://help.dropbox.com/ja-jp/installs-integrations/desktop/move-dropbox-folder

要するに,移行するときにアカウント名被りがあって,もともとは,Users/yu/~だったのに,Users/yu1/~というようになってしまっていたのです。そこで,アップルの公式サイトに書かれていた方法でyuに戻すという作業をしました。

macOS のユーザアカウントやホームフォルダの名前を変更する

変更はうまくいったものの,Dropboxを立ち上げるとUsers/yu1/Dropbox~というディレクトリを作ろうとして,「そんなものはないぞ」というエラーが出て詰んだということでした。

ターミナルから,Dropboxがディレクトリを作る場所を変更してあげることでうまくいったということですね(ターミナルのコマンドのそれぞれの意味はよくわかってない)。

なにはともあれ,解決してよかったです。また何年後かに同じ問題にぶち当たるかもしれないので,備忘録として。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

slackでテキストチャット型テストをやってみた感想

はじめに

以前,下記のようなブログ記事を書きました。

ペアやグループでの「会話テスト」もテキストチャット (Slack) なら効率的に回せるかもという話

この記事の中で,通常のスピーキングテストなら複数人と同時にやりとりはできないけれど,テキストチャットならそれが可能かもしれないという話を書いています。実際にいくつかの形式でテキストチャットで同時に学習者とやりとりする形のテストをやったのでどんなふうにやったのかと,その感想をこの記事では書きます。

やり方

クラスによって,いくつかのパターンでやってみました。

教師は複数のグループのやりとりを同時に観察するだけ

このパターンは,普段私が授業で使っているslackの使い方とほとんど同じです。この形式だけが,教師相手に会話するのではなく,学習者同士(3〜4人)で会話する形式でした。時間は60分間に設定し,全グループが同時にスタートする形としました。

お題はテスト開始と同時にリスニングで与えて,いわゆる悩み相談的なタスクにしました。悩みに対する解決策を示すというのがタスクのゴールです。

この形式だと,教師は学習者のやりとりだけに集中できます。よって,事前にルーブリックをグループごとに用意しておけば,ある程度はテスト中に評価をしていくこともできます。スピーキングテスト中に机間巡視するのとは違い,学生たちのやりとりはすべて教師に見えますので,どのようなプロセスを経て現在地にいるのかを逃すことがない点は便利です。

ただし,やはり複数のグループの評価を目的にやりとりを見ていると,なかなか教師がやりとりに介入していくのは難しいように思いました。積極的な介入を重視して評価はテスト後にするか,介入は極力控えて評価を優先するかのどちらかだと思います。もしもこの2つを同時にしようと思ったら,一度に観察するグループは3~5くらいが限界でしょう。

グループ対教師のやりとり

この形式は,3~4人の学習者グループが教師とやりとりする形式です。お題は教師に何かを提案する形式としました。例えば,「オンライン授業において導入してほしいツールの提案」や「この授業において,学生・教師・学生と教師が守るべきルールの提案」などです。これらのお題とグルーピングは事前に学習者には伝えていて,どのように提案するのか,もし提案を断られた場合や懸念を示された場合にどう対応するのかというところまで考えておくように指示しました。

当日は,授業時間を35分×2セッションに分けて,6グループずつとやりとりするようにしました。教師はあえて極端に提案を突っぱねる(もちろんロジカルに)ようにして,そこでの学習者の出方を見るようにしていました。この程度を調整することで,学習者のレベルをある程度判定できたように思います。例えば,こちらの反論に対してすぐに再反論や問題の解決策の提示ができるようだとさらに反論をしてみたり,あるいはこちらの反論に「ぐぬぬ」となってしまい有効な反論が出てこなければ,その点は深追いせずに別の論点を提示するなどしていました。

教師対学習者の1対1のやりとり

この形式は,いわゆるインタビューテストで,教師と学習者が1対1で会話する形式です。内容は,教科書のユニットごとに決まったテーマについてのフリートークで,学習者側にホスト役になってもらうようにしました。ただし,こういう役回りにすると事前に用意した質問をただただ投げるだけになってしまうので,echo, reaction, follow-up questionを使ってやりとりができているかどうかを評価の観点の1つとして取り入れました。

時間は17分で,90分を4つのセッションに分け,セッション間に5分間のインターバルを入れました。学生には事前にスケジュールを提示しておき,時間になったら教員にDMを送って会話をスタートするという形です。

42.5インチモニタを6分割表示設定にして,ブラウザを複製してslackを6箇所で開いてやりとりしました

5分間のインターバルがあるといってもほとんど休憩なしで,17分間ひたすら学生からのポストに返事をし続ける感じでした。少しの遅れでも学生の不利益になるので,とにかく返事は1分以内にすべて返すということを徹底しました。よって,めちゃくちゃ疲れました。

流暢さがある学生だと,だいたい15〜18ターンくらいはやりとりができました。もし仮に90分を24人で割ると1人3分くらいしか会話の時間は取れないことになります(それでもたぶん交代にかかる時間とか考えるとカツカツ)。3分で15ターンだと1分で5ターンなので,だいたい単純計算で12秒で1ターンくらいのスピードでやりとりする必要があります。レベルから言って口頭でそのくらいのスピード感で進むかと言われると厳しいかなというのが私の見立てなので,テキストチャットの利点をうまく生かして学習者とのインタビューテストができたなと思っています。

ざっくり感想

一度に6グループ(6人)なら全然いける

まず,6グループ,あるいは6人なら同時のやりとりも可能だなと思いました。もちろん最初は戸惑うことはたくさんありましたが,やはり学生の入力スピードとこちらの入力スピードだとこちらに圧倒的に分があるので,そのアドバンテージを生かしてやれました。ただ,1人とやりとりするよりはグループとのやりとりのほうが難しかったです。なぜなら,グループだとこちらの1の返事に向こうから2, 3の返事が返ってくるからです。論点がまとまっていればまだしも,たまに複数の論点に対してこちらが返答しなければならない場合があり,結構しんどかったです。1対1だとそういうことはあまり起こらないので,比較的ラクでした。

コピペを多用できる

複数の学習者を相手に同時にやりとりするのを可能にしたのは,コピペ戦法です。私はランダムにお題を与えていたので,お題がある程度被っているときと,ほとんど被っていないときとありました。お題が被っている場合,同じような質問だったりコメントだったりが学生から出てくることも多いので,その場合別のグループですでに答えたことを,同じお題でやってる別のグループにコピペして投稿するようなことも頻繁にやっていました。学生側からすると「ずるい!」となるかもしれませんが,こちらとしては同じ内容なら何度も同じこと書くよりコピペしたほうが早いから許してくださいという感じです。もしもセッションごとにお題を固定して,6人・6グループがすべて同じお題で取り組むのであれば,コピペの頻度はもっと高くなることが見込まれるので,より一層教員側の負担は減るかなと思います。

後から評価するにしても楽

学生と教師がやりとりするパターンの場合,やりとりしながら評価は無理でした。これやるのであれば,おそらく3人・3グループが限界でしょう。それ以上だと,いくらルーブリックを事前に練っていてもその場で評価だと絶対に返事のタイミングが遅くなってしまうと思います。

ただ,もしも評価をテスト後に行うとしても,音声を録音させたものを後から提出させ,それを聞いて評価するよりはよほど楽でした。なぜなら,すべてやりとりした記憶があるからです。

とくに,学習者同士のやりとりを録音させるようなケースだと,ほとんど内容はわからない状態で音声を聞いて評価をしますので,頭から最後まで聞かないと評価できないケースがほとんどです。

一方で,自分がやりとりの相手だった場合,「あーそうだこのグループはちょっとこの話題で詰まってたところあったよなー」とか「○○がほとんど話題に入ってこれてなかったなー」とかいうエピソード記憶的なものがやりとりの断片を見るだけですぐに思い出せます。また,音声を聞くより文字を眺めるほうが圧倒的に早く全体を処理できますから,評価にかかる負担感は間違いなくテキストチャットのほうが低いと思いました。

オンラインだからこそ待ち時間を有効に使えた

ちょっと話はそれますが,もし教室内で,グループ,個人ごとに教師のところに来させてテストしようと思うと,待ってる間をどうするかが問題になります。

同じ教室内でリスニングテスト受けてもらおうにも,会話がワイワイ盛り上がったらリスニングテスト受けている人たちに迷惑ですし,かといってコソコソ話すのもなんか違う。2教室用意して別室でLMSでリスニングテストさせているなんていう話も同僚の先生から聞いたことがありますが,ちょっとハードルが高いですよね。その点,LMS上での課題に慣れていて,なおかつ全員が同じ場所にいる必要がない今のような状況だからこそ,待っている時間はLMSで別のテストやっててねというのが何の違和感もなくできたなと思いました。

秋学期に対面授業になったら大教室で少人数で授業みたいな環境になる大学もあるかもしれません。そうすると,ある程度離れた場所で普通のボリュームで会話していたらリスニングテストの邪魔にはならないのかもしれませんが。

おわりに

この記事では,slackを使って,学習者同士,学習者グループ対教師, 学習者個人対教師の3つのパターンでテキストチャットテストをやってみたという報告のようなものを書きました。秋学期にどのような形態の授業になるのかうちの大学はまだわかりませんが,テキストチャットでインタラクティブな側面を評価するテストをやるというのはオプションの一つとして使えるなと思いました。今後,対面のスピーキングテストは難しいなぁという場合に活用していこうと思います。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

slackを利用して,「全員の前で」スピーチさせるスピーキング活動

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はじめに

先月,先々月で記事をいくつか投稿していますが,一般教養英語の遠隔授業(オンライン授業)で,slackを活用してます。

今まで書いてきた記事は,基本的にテキストチャットスペースとしてのslackの使い方の話でしたが,今回はスピーチをメインにした活動の話です。タイトルをおおげさにつけましたが,やってることは目新しくもなんでもありません。ただ音声ファイルを投稿してコメントし合うような活動です。

活動の概要

私は,現在受け持っている一般教養英語の授業の全4クラスでslackを利用しています(すべてが違う科目・レベル)。そのうち2クラスで,ペアやグループ活動ではなく,個人で1分程度のスピーチを録音したものを投稿してもらうという課題を出しました。そして,任意の人数にコメントをし,コメントをもらったら必ず返信をすることも求めました。時間はいつものペア・グループワークに費やしているのと同じ時間で,授業開始30分後から授業終了10分前までの50分です。

これまでの3, 4週は基本的に事前にペアやグループを作っておき,その中でなにかしらのタスクを与えるようにしていました。ただ,一応テキストに関連付けたタスクを毎回考えているので,教科書の内容によってはタスクを作りづらい場合もあります。たまたま2つのクラスがそういう状況で,どうしようか考えあぐねていたときに,別にペア・グループワークに拘る必要もないし,スピーキング&リスニングのクラスなんだからスピーキングさせる機会,そしてそれを聞く機会があってもいいよねというのがきっかけでした(もちろん,LMS上で音声ファイルを提出させたりリスニングの課題を出したりはしています)。

いつも,LMS課題の最後にslack上でやる課題の簡単な指示を日本語の資料として載せているのですが,そこにいつもとは違って今回はスピーチを録音したものを投稿する課題にするということを事前に連絡しておきました。また,私がサンプルとしてスピーチを録音したものを課題の公開と同時にslackにアップロードすることで,どういうスピーチをすればいいのかわからないという場合に,言語面や内容・構成面などで役立ててもらうリソースを提供しました。

この活動をやるにあたって,私の教師としての狙いはいくつかありましたが,ぱっと整理すると次のようにまとめられます。

  • 全員の前でスピーチをするわけではないにしろ,全員が聞ける場所に音声ファイルを投稿するのだから,普段教師だけにファイル提出するよりも緊張感がある(ので普段よりクオリティにこだわるはず)
  • クラスメートのスピーチから学ぶことが多くある
    • 内容的に(そういう意見あるのかとか,単純に面白いなとか)
    • 言語的に(発音が上手とか,真似したい表現とか)
    • delivery的に(聞きやすい喋り方はどんなものか)
  • 純粋に,クラスメートの「声」を聞けるだけでも今はプラスになるはず
  • グループワークにもそろそろ慣れとともに飽きがきてるかもしれないので,ここで少し違ったものを挟んでおきたい
  • リスニングすることに意味づけができる(内容を理解してコメントしないといけないので集中して聞くため)

このような活動をするのに,やっぱりslackは適しているなぁと思いました。

なぜslackが適しているか

ダウンロードしなくていい

まず,slackは音声ファイルをいちいちダウンロードしなくても再生ができます。パソコンであれば,タイムライン上で再生が可能なので,教師としても聞いてフィードバックをしたりするのが楽です。スマホアプリだと,再生するための画面に切り替わりますが,それでもいちいちファイルを保存しないといけない制約がないだけで聞くのはずいぶんと楽になります。

自分のペースで聞ける

これは,slackの良さというよりも,対面で人のスピーチを聞く課題ではないからこその良さと言えると思います。誰か1人のスピーチを聞き直したり,一時停止したりすることができるので,聞き漏らす心配をする必要がありません。もちろん,本当にスピーチを聞く際には聞き漏らさずに聞く必要があるわけなので,そこがゴールである以上はこの課題はあくまで”simplified version of the target task”と言えます。

もう一つ,自分で聞きたい人のものを,好きな順番で聞けるという意味での「自分のペース」というのもあります。これは例えばポスター発表的な形式をとると自由度が確保されていますが,全員またはグループの中で誰か1人が話すという形式では聞く側には順番を選ぶ権利はありません。これも前段の話と同様で,そもそもスピーチを聞くときに選ぶことができないのが普通なんです。そこは私も理解しています。その上で,ある程度学生側に選択が委ねられているというある種の「ゆるさ」は授業の中に持たせておきたいというのが個人的な信念です。とくに,今は状況が状況であるがゆえに,極端にガチガチのルールに縛られた授業か,そうでなければ無法地帯のように学生に丸投げされる授業に二極化しているような印象があります(あくまで印象です)。その中で,学生がsecured and comfortableな心理的状態で授業に臨むためには,学生の側に選択権がある状況というのも意味があると考えています。

スレッド機能とメンション機能

この記事の最初の方でリンクを貼っている記事でも書いていますが,音声ファイルの投稿に対してスレッド形式でコメントが書き込まれることで,チャンネルのタイムライン上では音声ファイルが並びます。そして,何件コメントが有るのかも一目瞭然なので,コメントがあまりついてないファイルを探してコメントすることも簡単にできます。

もらったコメントに返信をするときにはメンション機能を使えば,誰のコメントに返信したのかを明らかにすることができるので,会話の流れも追いやすくなります。

私が驚いたことは,スレッドへの書き込みをチャンネルのタイムラインにも流す機能を意図的に使っていた学生がいたことでした。チャンネルのタイムラインへの書き込みは,クラス全体への通知にもつながる(もちろん通知切ってれば来ないですけど)ので,「みんなこれ面白いよ!」的なコメントをメインのタイムラインに流していたようでした。

目印としてのreaction

slackには絵文字でリアクションすることができます。学生のコメントに対して,「いいね」の意味で絵文字をつけることもありますが,私が重宝している使い方は,チェックしたという目印です。いつものペアワークをやる際も,タスクが完了して,私がOKを出したスレッドには目の絵文字(👀)をつけて,終わっていないのがどこのグループかがわかるようにしています。今回のスピーチは聞いたら耳(👂)で,課題として私がこういうことを含めるように,という条件を満たしたスピーチをしていたら100点(💯),スピーチはしているけれど,その情報が含まれていない場合にはなにもつけないというようにしました。こうすることで,その場で簡易的に採点しておくことができますし100点(💯)がついていない学生に対してはその情報がないことをフィードバックすることも簡単にできました。

今回の課題の最初の部分。一番上が私のサンプルの音声で,音声ファイルを聞いたら耳(👂)のリアクションをつけ,課題の要件を満たしたスピーチの場合に100点(💯)のリアクションをつけています。

学生からの感想

学生からの感想を読んでいると,概ね上記の私の狙い通りに活動ができたのではないかと思っています。

例えば,質問しないといけないのでより注意して聞くし,他の人が質問していないことを考えるのに頭を使ったというようなコメントがありました。ただ質問するだけではなく,他の人の質問を読んだ上で質問を考えるのは,実は今回が初めてではありませんでした。授業の初回で実施した自己紹介タスクでも,音声ファイルではなく書き込む形でしたが,自分の自己紹介を投稿してコメントを○人につける,という課題をやったので,そこで必要だったスキルと同じです。もしも,他の人が聞いていないことをコメントすることに対するハードルが高いと感じられれば,自然と時間的にあとの方に音声が投稿されていて,まだコメントがついていない学生のファイルを聞いてコメントすればいいので,何も指示しなくても自然とある程度コメントがばらつくようにはなっていました。

基本的には早く投稿すればするほどコメントが集まりやすいので,早く投稿して自分が思った以上にコメントが集まって返信が大変だったという「嬉しい悲鳴」も聞こえました。でもやっぱり,自分が言葉を使ったことに対して,レスポンスがもらえるっていうのは,誰でも嬉しいことだと思うんですよね。そういう経験をしたことで,この活動に対してポジティブな印象を抱く学生が多かったのかなと思っています(注)。

私がサンプルとして音声を投稿していたのが参考になったという意見もありましたし,何をコメントすればいいかわからなかったけど,他の人のコメントを参考にすることができたというコメントもありました。この,他の人の取り組みを参考にできるのがslackを利用する際のメリットだというのが,私がまさにTASK TALK で話したことでした。

タイトルにつけたように,全員に聞かれるということを考えて録音するのはすごく緊張したというコメントや,(自分のパフォーマンスが未熟なので)恥ずかしかったというコメントもありました。この事自体はネガティブに捉えられるかもしれませんが,普通に30人の前で話すことよりはハードルが低いはずで,しかも録音なのでやりなおしもできます。前述の通り,全員の前で話すことをゴールだとしたら,その前の練習課題として,ここで紹介したような活動は効果的かも知れません。

おわりに

この記事では,slackにスピーチを録音したファイルをアップロードし,それに対してコメントし合うスピーキング活動を紹介しました。今回は全員が同じチャンネルで活動しましたが,いくつかの大きなグループに分けた上で別々のチャンネルでやらせることもできると思います。また,ファイルをアップロードする順番や時間を指定すれば,それこそ全員がほとんど同時に同じスピーチを同時に聞くような状況を作り出すこともできるかもしれません。

slackはテキストチャットメインで使っていましたが,残り半分の中であと何回かは今回のような形式の課題を取り入れてみようかなと思っています。

注. そもそも,授業後にコメントをわざわざ残すような学生はengagement高いだろうというツッコミはあるかと思いますし,それは差し引いた上で考える必要はあると思っています。ただ,一応苦情・改善要求なども受け入れるようにしていて,最初の数週間は改善要求コメントもかなり多くありました。それと比較してポジティブなコメントが多いので,控えめに見積もってもそれなりには機能したんだろうなと考えています。

Slackを授業で使ってみてわかった課題

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はじめに

ちょうどオンライン授業だなんだということで,様々なツールの授業利用の情報がネット上に溢れ出した頃,私は下記のような記事を書きました。

オンラインで語学の授業をする際に取り入れたい「やりとり」のためのSlack活用

Slackを授業で使ってみて,色々課題が見つかったので,どんなふうに使っているのかということと,どんな課題があるのかということをここに書いておこうと思います。

基本的な利用方法

  1. 学生は授業開始時間になったらLMSにアクセスし,教科書に沿った課題を順番にこなす
  2. LMSでの課題が終わったら,slackに移動し,#discussionというチャンネルに投稿されたトークテーマでペアと会話する

おおまかな授業の構成はこの2点です。1の部分では基本的にリスニングやリーディングベースの課題をやります。その内容に基づいたペアまたはグループのインタラクションをslackでやるというのが2の部分です。slackでのやりとりについては,下記のような資料をLMS上にアップして見れるようにしています。slackでは英語でしかinstructionを出さないことにしているので,ポスト機能を使って英語版の資料を投稿しています。

1. 10時より前にここまでたどり着いた人は,一旦休憩してください。

2. 10時になったら,Slackを開いて,ShufflからのDMを確認しましょう。DMが一緒に来た人が今日会話するメンバーです。

3. まず,はじめましての挨拶だけして,誕生日を確認しましょう。誕生日が一番早い人が,最初に#discussionのチャンネルに投稿をして会話のスレッドをスタートさせます。例えば,”Let’s talk, @AAA and @BBB!”のように投稿してみましょう(AAAとBBBには同じグループの人の名前を入れます。こうすることで,どのスレッドに自分が参加すればいいのかグループメンバーがわかりやすくなります)。

4. グループの中で一番誕生日が遅い人は,司会役として会話をうまく回す役です。まず誰の話から聞くかなどを考え,全員が均等に発言できるように工夫しましょう。目安としては,1人が5回以上発言することが最低ラインです。

5. グループの中で誕生日が真ん中の人は,会話のまとめ役です。全員が5回以上発言し,話題も出尽くしたなと思ったら,会話を終わらせます。この合図は,”Shall we invite Mr. Tamura to this thread?”です。みんなが,同意したら,私にメンションをつけて会話が終わったことを教えて下さい。”@Yu Tamura We finished!”みたいに。この投稿があったら,私が確認しに行きますので,少し待っていてください。私からOKをもらったら,グループワークは終了。この日の授業は終わりとなります。グループメンバーにお礼を行って終わりましょう。出席登録だけ忘れないようにしてください。

25名以上のクラスはShufflというappを使ってペアリングまたはグルーピングをしています(注)。ただこのappは平日の指定した曜日の午前10時にDMを送るという仕様なので,1限の授業(私は全学教養英語の4つの担当のうち3つが1限)だと授業時間中に自分がだれとワークするのかを知ることになります。1限だと,9:00-10:00でLMSの課題,10:00-10:30はslackでコミュニケーションタスクという分け方にしています。

見えてきた課題

時間配分の問題

上記の方法でやって最初に困ったのは,グループの指定が10時で,そこから役割分担決めて話し始めるまでに10-15分くらいかかってしまうという点です。もちろんこれは慣れの問題で,回を重ねれば解決するのかもしれませんが,始まるまでの時間が長くかかると,やり取りの時間が実質短くなってしまい,授業時間中にタスクを完遂できなくなってしまいます。また,グルーピングの時間に余裕をもたせておかないと,グループが集まらなかったときに話をスタートできない人ができてしまいます。教室のときのように自分のペアの相手,グループのメンバーが欠けている(欠席orLMSの課題が遅れていて間に合ってない等)というときに,slack上での課題に入れないことになります。教室であれば,グループやペアができていないことは見れば一目瞭然ですが,なにせこちらも学生から報告されないとわからないので,問題の発見,報告,対応も対面授業に比べて遅れてしまいます。自分の相手と連絡がつかなかったときのガイドラインは作っておいたほうが良さそうです。例えば,

  • 3分経って相手から連絡が来なかったら教員に連絡
  • 連絡の際は,「ペアの人がいません」とかではなく,「私の今日の相手は○○さんですが,XX時XX分にこちらから連絡をしましたが反応がありません」のように情報を伝えること
  • 教員からの指示を待って,Shufflで指定されたペアとは違う人とタスクをやるように指示された場合,自分につけられたメンションを確認し,会話に参加すること

というような感じです。appを使ったペアリング・グルーピングは,こちらで誰と誰が組んでいるのかわからないため,「相手がいません」と言われても教員は対応ができません。そこで,「相手誰?」と聞くので1ターン分のロスが生まれてしまいます。最初に相手がわかれば,LMSのログイン状況や課題の進捗を見て,そもそもLMSの課題をやってなかったら欠席の可能性が高いし,課題をやっているのであればあとどのくらいでslackに来そうかもある程度予想がつきます。グループであれば,情報が分割して与えられているようなジグゾー系のタスクでない限りは人数が欠けていてもとりあえず,スタートはできます。ペアだと相手がいなければどうしようもないので,すぐに対応しないと待ちぼうけで時間を無駄にしてしまいますので,対応方法は明確にしておく必要があります。

おそらくですが,slackのやりとりだけで1時間くらいの余裕をもたせても良いのかなと思いました。実際にやりとりが始まってから終わるまでは,平均して30-40分くらい,投稿数としてはだいたい20-30 per threadくらいでした。ただ,始まる前の時間を確保し,その上である程度余裕を持って終了するためには(そうでないとやり取りを急ごうとしてしまうので機械的に終わらせようとしてやりとりが無味乾燥になる),1時間くらいの余裕を持ってやるのがいいかもいしれないなと思いました。むしろもっと長くてもいいかもしれません。これが慣れによって改善されるのかどうかはもう少し回数を重ねてみないとわかりませんが,少なくとも30分という時間設定では不十分であることは間違いありません。

となると,shufflの指定を前日10時にしておいて,前日にはメンバーがわかっていて,役割分担も確認できていて,10時になったらすぐに対話をスタートさせられるようにしておいたほうがいいのかもしれません。slackで行う対話の内容自体はLMSでのインプットベースの課題に基づいているので,LMSをやってからslackへという流れだけは変えたくありません。つまり,LMSはアクセスの時間を1日中,あるいは1週間可能にして,slackだけ授業時間中にやるというのはしたくないしできないと思っています。ただ,LMSの課題を1時間で終わらせるのが厳しい学生もいるようでした(こちらとしては授業開始と同時にスタートすれば30分程度で終わると見込んで作っています)。

時間配分問題の解決策

1. 授業開始即slack

大幅な仕様の変更になってしまいますが,授業開始と同時にslackを始める仕様にするという手があります。 そうすると,グルーピングについて2つの方法が考えられます。1つは,shufflでグルーピングするタイミングを前日に設定しておき,役割分担も授業開始時点では完了するように指示するというもの。2つ目は,こちらであらかじめ毎週のグループ(ペア)リストを作って公開し,それを見て各自がグループDMを作って役割分担をしておくというものです。リストの中でグループDM作る人を指定しておき,グループDMの始め方の資料も作っておけばなんとかなりそうですが,学生がどこまでできるのかは未知数なので不安があります。

上記いずれの方法を取ったとしても,授業開始時点からslackをするのであれば,授業開始前にインプットタスク部分であったりoutputのpreparation部分(自分の考えを決める等)が終わっている必要があります。それが可能となるためには,前週から授業週までの1週間で準備となる課題を終えて(これについては授業時間内に終わらせなくていいこととする)おくように授業計画を変更することが必要になってきます。

むしろ,前もってグループがわかっていれば,役割分担の確認も前もって終えた状態で授業に臨めるので,会話スタートまでの時間をタスクそのものに費やすことができるかもしれません。そうなれば,これまで通りの時間でも十分にタスクを完遂できる可能性もあります。

授業時間後にすぐslackスタートという案は大幅な授業計画の変更になりますが,その一部分であるグループ(・ペア)リストの公開は考えてしまってもいいかもしれません。

2. slackは授業時間内でなくても良いとする

2つ目の解決策は,slackのやりとりを授業時間内で終わらせることに限定せず,むしろLINEのグループチャット的な使い方(時間のあるときに返信する)とするものです。こうすれば,なにかトラブルが発生してもそれに余裕をもって取り組めますし,時間を空費してしまうリスクは抑えられます。一方で,ライブ感が損なわれてしまいます。また,学生がslackの通知設定をどうしているのかに依存してしまうので,「返事忘れてました」となる可能性もかなりあります。

逆に,24/7でslack課題から逃れられないというプレッシャーを与える可能性もあります。これは,亘理先生が先日ブログで書いていた授業内外の話にもつながりますが,授業の時間内という縛りをなくすことによって,slackの課題が他の日常生活の時間や学生が受講している他の授業との競合を迫られることになります。場合によっては昼夜問わずにslackの返信が迫られる(ように学生が感じてしまう)かもしれません。もちろん,学生が自分で様々なことに費やす時間の管理やタスク管理をできれば問題はありません。ところが,「社会人」とか「オトナ」であってもタスク管理の本がわんさか世に溢れ,そのためのアプリケーションやライフハック術を求める人がたくさんいるわけです。つまり,かなりレベルが高い,身につけるのが難しいスキルなわけです。自律的学習者の育成という意味では大学生のうちにそういったマネージメントスキル的なものを身につけてもらいたいという思いもある一方で,それをすべて学生側に投げることもあまり誠実とはいえないような気がします。

以上のような理由で,2つ目の解決策はメリットもありますが,個人的にはデメリットも大きいなと思っています。

教師の介入のタイミング

時間配分の問題は,どちらかというと授業の運営上の問題でした。2つ目の問題は,むしろ指導技術に関わるものです。それは,学習者同士の会話にどうやって介入するか,どのタイミングで介入するのかという問題です。

私は先週の授業である「失敗」をしました。その日のslack課題は,「教科書の登場人物の情報を読み取り,その人達が参加するパーティに自分も招待されたとしたとき,誰と一番仲良くなりたいと思うか?その人にどんな話題で話しかけるか?」を考えるというものを各自で考えて,意見交換するというものでした(合意形成は必要なし)。

この課題に対して,いきなり”What’s yoru hobby?”とペアの相手に話しかけているペアがいたのです。私はそれを見て,「しまった。課題が正しく理解されていないぞ」と判断して,”Why are you two talking about hobbies?”ってすぐ突っ込んでしまったのです。ところが私のその投稿の直後に,メインの話題に入ろうかという言う話になっていたのです。その時に「あ,そういうことか。趣味の話はconversation starterだったのか」となったんです。その意識が自分にはまったくなかったので,反射的に流れを乱してしまったことを反省しました。ランダムに話す相手決めてるので,いきなり話すんじゃなくなにか最初にアイスブレイクじゃないけどそういう会話を入れるというのを,誰にも何も言われていないのにできるというのは素晴らしいことですよね。もちろん,そこでいきなりWhat’s your hobby?が適切なのかっていうのはあります。ただ,コミュニケーションとして大事な要素を意識してやりとりしようとしたという行動に何か水差してしまったなぁと思いました。

教員側としては,勘違いして変な方向に行ってしまうのはなるべく早く止めて軌道修正してあげたいとは思うわけです。ただし,それを仮に教員が指摘しなくても自分たちで「あれ?この話でいいの?」などとやりとりしながら,「先生!この話であってますか?」とか「もう一回インストラクション読み直そう!」とかいうやりとりをして自分たちの力で軌道修正ができるのだとしたら,それ最高っていうかそれが英語でできるというのは素晴らしいことだと私は思います。むしろ,それこそが私が身につけてほしい「英語力」だと思っています。その学びを奪うことは絶対にしたくありませんが,かと言ってそれを黙って見てるのももどかしいというのがジレンマです。

また別の視点で見れば,合いの手を入れるタイミングもテキストチャットは独特です。誰かがタイピングしている最中であればそのことがSlack上で表示されるとはいえ,何十人も同時にやっているので自分がコメントしようとしてる学生が何か書いてるのかまでは把握できません。そうすると,スレッドが止まっているのは沈黙なのか,はたまた書いてる最中だから止まってるのか,ということはわかりません。沈黙しているから何か会話を促すような投稿をしてみよう,と思って何か質問を書き込みんだらその直後に次の話題に移行するような投稿がされてしまって逆に対話の流れをそいでしまったりということもありました。意外にというか,教師の介入は結構難しいなというのがリアルタイムのインタラクションをテキストチャットでやらせてみての正直な感想です。

このように邪魔をせずに何かしらのメッセージを伝える方法としては,reactionの活用も可能かもしれません。つまり,絵文字でレスポンスすることですね。slackには豊富な絵文字があるので,いくつかに絞ってフィードバックを関連付けておけば,会話を邪魔せずに何らかのフィードバックを与えることもできそうです。

また,このリアクションをうまく利用して成績に反映させる事も考えられます。今のところ,「いいね!」と思った投稿には100点のマーク(:100:)をつけておくようにしています。それをあとからslackのAPIを利用してログを取得して,どの学生が何回そのマークをもらったかを集計するというものです。このことはまた別の記事で紹介できればと思います。

おわりに

とりあえず,slackを利用して何回か授業をやってみてわかった課題と,それをどうしたら解決できそうかについて書いてみました。前回の記事を書いたときは,まだ実際に実践をしてみる前の段階でしたので,この記事に書いたようなことは見えていませんでした。これからまた授業を重ねるごとに,新しい問題が出てきたり,あるいはここに書いた課題を克服できたりといったこともあるかもしれないので,また時間をみつけて記事を書こうと思います。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

注. ちなみに,Shufflは無料でも2人,3人,4人と人数が選べます。一方で,donutだと時間の設定やhostをペアリングから外す等の設定は便利ですが,無料版では2人しか選択できないので,Shufflとdonutは一長一短という印象です。

オンライン授業での「顔出し問題」(2)

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前回(といっても正確には2つ前の記事)の記事の続きです。オンライン授業で,zoomみたいな同時双方向型でやるときに,カメラをオンにしないといけないという話への反論みたいなところです。前回の記事では顔出ししない理由や,不正についての私の考えを書きました。今回は,前回書ききれなかったコミュニケーションの問題について書きます。

まず前提として,コミュニケーションは顔が見えてなんぼだみたいなのがあるみたいなんですよね。そのこと自体については否定しないし,私もポッドキャストの収録なんかをやっているとやっぱり相手が見えない状態で,声だけでコミュニケーションするのって難しいなと思うことはよくあります(特に3人以上の場合)。ヒトのコミュニケーションは非言語的なものも含まれますし,それが重要な役割を担うことは否定しません。「顔が見えないようではグループワーク時にコミュニケーションが取りづらい」というのもそれ自体はそのとおりだと思います。

この記事では,むしろその状態を逆手に取って授業を構成するのもアリなんではないか,顔出しをしない(できない)からこそ教えられることもあるのではないか,ということを考えてみたいと思います。

何が顔出しコミュニケーションを円滑にするのか

私達は,ジェスチャーだったり顔の表情だったり,そういう非言語的な情報も使ってコミュニケーションしています。例えば1対1の状態で考えても,アイコンタクトでいろんなことを伝えられますし,複数人のやりとりのときに顔や体をある特定の人に向けることで,「あなたの話を聞く態勢です」というメッセージになったりもします。そうやって,相手が見えている状態と見えていない状態のコミュニケーションで何が違うのか,顔が見えないとやりとりしづらいと感じるのはなぜかを考えてみるというのも,大事なことなのではないかなと思います。普段の授業だと,コミュニケーションをメタ的に見るのって意識してもなかなか難しいと思います。今の状況ならむしろ,「顔出し」しないとなんかやりにくい,みたいなことをきっかけにして,コミュニケーションを考えさせることができるように思います。

顔出ししないからこそ言語でのやりとりが大事になる

これは私の個人的な考えですが,顔が見えない状況だからこそ(これはテキストチャットでも当てはまると思いますが),言語というツールしかない状況でのコミュニケーションを円滑に進めるためには,言語で伝える情報というのは普段以上に大事になってきます。そう考えると,いつもは非言語的な情報に頼ったコミュニケーションでごまかせた部分がごまかせなくなります。だからこそ,言語コミュニケーションのスキルを今磨いておけば,それはきっと対面のやりとりをも円滑にすすめることに役に立つはずだよと言ってあげたら,顔出ししない状態でうまくコミュニケーションを成立させることに意欲的に取り組ませることもできるのではないでしょうか。

非言語的情報でのやりとりを言語化しないといけない

私がポイントかなと思うのは,非言語的な情報を言語化できる(する)ことです。わかりやすい例でいえば,相手が何かを言ったとき,眉間にシワを寄せて少し首を横に傾けたりすることで,「話が理解できてません」というようなことを伝えていたとしたら,それをはっきり言わないと表情が見えない状況では相手には伝わりません。じゃあ,ということでそれをどう伝えるのかが次に問題になります。

I don’t understand.

I don’t know

I’m sorry but I don’t think I’m following you.

What did you say?

Sorry?

Could you say that again?

Excuse me, can you repeat what you just said?


どの言い方が相手にどんな印象を与えるのか,相手に何を要求しているのか,そういう言葉の機能的な面に注意を向けさせることができるように思います。そして,それって対面のやりとりだと結構おざなりになってしまうというか,あまり意識しなくてもなんとかなってしまう,無意識になんとかしているようなものでもあります。しかしながら,言語のみのコミュニケーションであれば,その言語が持つ機能的な側面を意識せざるをえません。

そして,そこでの失敗だったり,コミュニケーション・ブレイクダウンが原因となって発生する意味のやりとりもまた,言語習得上重要な要素がたくさん含まれることになるでしょう。

ほかにも,ターンテイキングも普段より難しくなることが予想されます。ビデオチャットは若干の時差がある場合もあり,それが原因で同時に話し始めてしまうというようなこともよくあるかもしれません。ただ,そういうことがまったくない状態であったとしても顔が見えないとターンテイキングはとても難しくなります。顔が見えていれば,相手が話し始めるのは口元を見ていればある程度わかります。それがないと,1対1であってもどのタイミングでこちらが話し出せばいいのかは結構難しい判断が伴います。「あ,少し間があいたからいまだ!」と思って話しだしたら,実はまだ相手は話の途中だったり,一区切りついて新しい話題を出してくるかもしれません。また,3人以上になると,「割って入る」のも難しくなります。どうしても,誰かと誰かがやりとりをしているのを聞いているばかりになってしまい,自分が会話に参加するのが難しくなるわけです。顔が見えていたって難しいわけですから,顔が見えていなかったらハードルは余計あがります。このようなことを避けようとすると,明示的なターンの移行を推奨するのもひとつの手かもしれません。意見交換だったら,自分の意見を言い終わった後に,”That’s what I think.”のように終わりだとわかるようなセリフを入れたり,あるい言い終わったら”What do you think, Ann?”のように誰かに必ず振るようにしたり,という工夫です。

こういうのにあまりに縛られすぎると本来の会話のダイナミクスみたいなのが失われるような気もするので,それは難しいところだったりします。ただ,普段そこまで表面化しないようなことが,顔が見えないからこそ表面化する,そのことは実はコミュニケーション上指導する意味のあることをたくさん含んでいるように思われます。

おわりに

この記事では,オンライン授業において「顔出し」しない,つまり顔が見えない状態でのコミュニケーションは語学の授業においてマイナスの影響しかなく,良い授業を行うためには取り除かなければいけない問題なのかということを考えました。私の考えは,むしろ逆で,その状態だからこそコミュニケーションとか,言語の機能的側面をメタ的に考えるいい機会になるというものです。そしてそれは,実は通常の対面授業ではあまり扱われてこなかった,だけれども言語教育上は意味のあることなのではないかなと思っています。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

ペアやグループでの「会話テスト」もテキストチャット (Slack) なら効率的に回せるかもという話

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はじめに

今まさに思いついたことをブログ記事に書いてしまうシリーズ(そんなシリーズがあったのかどうかはわかりません)。顔出し問題の続きがまだ公開できてませんが,それよりこっちを先に出してしまいます。表題のとおりで,今定期テストのことを考えていたら振ってきたアイデアです。

スピーキングテスト実施の大変さ

対面授業のときにスピーキングテストしようと考えると,その選択肢の1つに授業時間内でテスト実施&評価を終わらせるというパターンが出てきます。クラスを半分に割って,1ペアずつ教員のところに来て….とかやるような形式です。40人のクラスをペアにしても20ペアもできてしまうわけで,90分をフルに使ったとしても入れ替えとかも考えて3分できればいいほう。だけど3分の対話って結構短いんですよね。特に,用意してきたものを話すのではなく,その場で即興で話させようと思うと特にそうなります。もっとこうstruggleしながらその中でことばを道具として使って意思疎通するというその醍醐味を味わってほしいと考えると,3分じゃ間違い探しみたいな簡単なのすらできないかもしれません。

じゃあもう評価は授業外でやろうということになると,授業内では録音させるという選択肢になります。私は昨年度はこのパターンをやっていて(過去記事参照),しかも学期中に4回もテストしてました。だいたい1クラスが18ペアくらいで,1ペア10分なので1回で合計180分(3時間)の会話を聞いて評価することになります。これを中間で2回,期末で2回なので,合計12時間を費やして評価していたことになります。

いや厳しいですよね。今考えるとよくやってたなと思います。

テキストチャットならテストできそう?

オンライン授業になったので,基本的にインタラクションはslackでやっていこうと思っています(過去記事参照)。それで,このテキストチャットを使ったら,授業時間内でもテスト実施できるのではないかと思いました。なぜなら,ある程度「複数ペアの同時評価」も可能だからです。

口頭産出のやり取りを評価しようと思ったら,2ペア同時に呼んで,同時に聞きながら評価するって相当訓練積んでもかなり厳しそうですよね。口頭発話は聞き逃したら終わりだからです。また,同じタイミングで話してたら両方聞いて意味理解するのはかなり難しいと思います。ところが,テキストチャットは少し遅れてもやりとりは残っていますので,会話に追いつくことがそれほど難しくありません。どんなにタイピングが早い人のやりとりであっても,一方が投稿して,それを読んで,そして返答を考えるというのは口頭発話よりも確実にタイムラグが生じるので,会話の流れ自体も緩やかになることが予想されます。学生はそこまで英語のタイピングに慣れていないでしょうから,ペースはさらに遅いでしょう。同時性の点でも,もし仮に同じタイミングで投稿があってもどちらかを先に読んでどちらかをあとに読むこともできます。これはスピーキングなら絶対に不可能なことです。

そうなれば,デバイスが3つ(PC,タブレット,スマホ)あればリアルタイムで3ペア(あるいはグループ)の会話を同時に追いながら評価することも意外にできるかもしれないと思いました。デバイスを複数使わなくてもthreadを行き来すればいいわけなんですが,見やすさは1デバイスにつき1スレッドだと思うので,それがいいかなと。

なんなら私の今の在宅ワーク環境は,Mac mini, HP Spectre x360, iPad pro 10.5インチ,iPhone8 Plus,の4つのデバイスでSlackを使えるので,4組いける可能性もあります。試したことないのでわかりませんが,ブラウザで同じワークスペースに複数タブでログインして表示すれば,別に複数デバイスでやる必要もないのかもしれませんが。

普通の口頭のやり取りとは違うので,テキストチャットのやりとりに合わせて評価の観点だったりルーブリックだったりは改変しないといけませんが,テキストチャットでインタラクティブなスピーキング(?)テストをやることにしたら,授業内で時間を分割すれば全員がテストを受験することもできるかもしれません。

ここまでの話は学生同士のテキストチャットを第三者として教師が評価する想定でしたが,教師対学習者の1対1のやりとりをするような面接型のテストも,複数人と同時にやりとりすることが可能かもしれません)。評価するのはかなり工夫しないと難しいかもしれませんが,テキストは残るので,あとで見直しての評価もできそうです。録音してもらったのを提出するときのように,自分が初めて全部のやりとりを聞いて評価する方式に比べれば,自分がしたやりとりを振り返りながら評価するのであれば評価にかかる時間と労力も格段に減るでしょう。

問題点

もちろん,すべてがハッピーというわけではありません。やりとりに時間がかかるということは,テスト時間も口頭でのテストよりは長く確保する必要があります。口頭なら10分もうけていればよかったのが15分や20分になるかもしれません。このへんは,タスクの難易度を少し下げてあげるのも手かもしれません。そうすればタスク達成にかかる時間が短くなるはずなので,そこまで長い時間かけなくてもテストとして成立しそうです。

また,そもそもそれスピーキングじゃねぇよっていう話もあります。もちろんそうで,やってることは「ライティングのコミュニケーション」です。スピーキングという技能の代替手段であって,「やりとり」を重視しているのでテキストチャットにしていますが,音声言語のやりとりとは違うものだという自覚はあります。ただ,こういう特殊な状況で,手近に使えるボイスチャットツールもないですし,zoomのようなものも導入できないスピーキングのクラスはどうしてもあります。その限られた状況の中で,「ましな」そして「実現できそうな」テストの形を考えたらテキストチャットのテストもありなんじゃないかなと思いました。

おわりに

時間の設定や課題の難易度については,授業の中でテキストチャットのやりとりをさせながら感覚をつかんでいくことになりそうです。テキストチャットをオンラインでやらせるという試みをまだ始めたばかりなので,アイデアとして面白いかもしれないという程度で実際にやろうとしたらいくつも超えなければいけない壁もあるような気がしています。

とりあえず授業をやりながらテキストチャットテストで複数ペア同時評価をして授業時間内に終わらせる,ということができるのかどうか模索していこうと思います。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

オンライン授業での「顔出し」問題 (1)

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はじめに

今,オンラインの授業で「顔出し」問題がちらほら聞かれます。要するにビデオ会議システムを利用する際に,ビデオをオフにして音声のみで参加するということです。1対1のやりとりであれば,それこそもともと電話って音声だけのやりとりだったわけでそこまで違和感あるものでもないと思います。ただ,人数が多くなったときに音声のみだと,「話聞いてるのかわからない」とか,「本人であることが確認できない」という問題を指摘する人がいたり,「顔が見えないようではグループワーク時にコミュニケーションが取りづらい」「そもそもコミュニケーションは顔が見えてなんぼ」ということを指摘する人がいるようです(私の周りでは)。この記事では,この2つの問題点ついて考えてみます。

そもそも「顔出し」しない理由は?

「顔出し」の問題を自分にとって都合の悪い問題だと考える人って,「顔出し」しない側について配慮することが足りない場合もあると思っています。顔を出さない理由がなぜなのか,考えましょうよっていう。

プライバシー

とくにオンライン授業でZoomなどのビデオ会議システムの利用が盛り上がり始めた当初,この問題を指摘する人もいたと思います。インターネット上で実名顔出ししてる人って少ないですよね。それをしたくないと思うのと同じ理由で顔出ししたくないと考える人はいると思います。

通信量の問題

ビデオをオンにした状態は,音声のみの場合よりも通信量がかかります。学生側の環境をあまり把握せず,または把握したけど大部分は大丈夫そうだからとZoom等の利用に踏み切った場合,このケースが該当するかもしれません。「顔出し」したくても通信量の問題を考えてできない,あるいはできるだけ控えたいと考える学生がいてもおかしくありません。家にWi-Fi環境があったとしても,親や兄弟姉妹もインターネットを使って仕事をしたり授業を受けたりしていれば,通信が遅くなったり途切れたりしやすくなり,だったら音声だけのほうがトラブルが少ないので音声のみにするという選択をすることもあるかもしれません。

画面の問題

この問題もあるかもしれません。スマホしかデバイスがない場合の問題です。そうなると,スマホでZoomに参加しつつ,スマホで授業の資料を見ないといけないかもしれません。バックグラウンドでもZoomは動きますが,この場合ビデオはオンにできませんので音声のみでの参加を強いられてしまいます。教科書や授業資料がデジタルファイルとして配布されていて,それを自宅で印刷できない,コンビニのネットプリントの使い方もわからない,という状況だと,スマホで完結させざるを得ないのかもしれません。ただでさえ教員には質問しづらいものなのに,この状況ではそのハードルも普段以上に上がっていると思います。そうした学生にも顔を出しなさいというためには,スマホはzoomだけを使っていればよいという状態にするのは教員の仕事だと思います。それがめんどくさいと思うなら,安易に顔出し強制とは言えないでしょう。

「話聞いてるのかわからない」問題

これはもうしょうがないとしか言いようがないと思います。というか,ビデオがオンになってたら話聞いてるとも言えないと思います。話聞いてるかどうかは,話の内容を理解していないとできない課題をあとでやらせるとか,話の内容をメモさせるようにしてあとで提出させるとか,そういう部分で確認していくしかないと思います。

「本人であることが確認できない」

これについても前節と同じで,ビデオがオンでも本人かどうか確かめることはできません。それこそ入試のときのように受験票の写真をチェックしたり,あるいは定期試験で学生証の写真をチェックしたりしなければ,なりすましを防ぐことはできません。対面授業のときだって,名前を呼んで,手を挙げた人がその学生に間違いないと信じて授業をしていますよね。わざわざ一人ひとり本当に本人かどうかを確認しているのでしょうか。それをしていない時点で,ある程度学生を信頼して授業しているということだと思います。オンライン授業になった途端に,本人かどうかを疑うのはなぜなのか理解できません。そもそも一度も会ったことのない,名簿の名前しか知らない学生相手に授業をするわけですから,ビデオがオンになっていて顔を見ても本人かどうやって判断するのでしょうか。

ただ,この本人確認問題はLMSで課題をやらせるときなんかでも問題視されますよね。一応IPアドレスは残るので怪しいのを特定することは可能ではあると思いますが,100%防げるかというと難しいかなと思います。

こういう不正に繋がりうる問題があることも一因で,成績のつけ方をこれまでと同じにしていて問題はないのかという意見も出てきていると思います。この「本人確認問題」を重要な問いとして研究している分野もあると思うので,今後成績とか試験どうすんだという問題をもっと真剣に考えないといけなくなったときに(今もそうかもしれませんが),そういう分野の方々の知見がいきてくるのかなと思います。

おわりに

この記事では,オンライン授業のなかで,とくに同時双方向型の授業をするとき,Zoomなどでビデオをオフにして参加する学生がいるということについて,その問題ってほんとに問題なのかなということを書きました。長くなってしまったので,コミュニケーションに関わる問題点については,また別の記事で書きたいと思います。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

「(オンラインになって)授業の質が下がるのではないかと不安」という学生さんへ

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はじめに

タイトルのようなコメントを自分が担当しているクラスの受講生からもらいました。授業が始まる前にインターネット環境等について尋ねるアンケートをして,その中の自由記述の設問に対しての回答でした。色々不安に思っていることがある中で授業の質に関心を持っている学生がいることにまず感謝したいなと思います。

で、まあそもそも「授業の質」ってなんなんだろうなとか,学生が思う授業の質ってなんなんだろうかとか,教員からみた授業の質ってなんなんだろうかとか,二つはどれくらい重複する概念なんだろうか,みたいなことを考えるのも面白いんですが,今回はこれはしません。

授業の質は下がらないんじゃないかということを言います。

なぜ授業の質は下がらない?

ここでは,とりあえず思いついた2つの点について考えてみます。

教室で見えないものが見やすくなる

例えば,教室ではスピーキングをさせても,そのすべてを見ることは教員にはできませんよね。オンライン授業でスピーキングの形が変わるとしても例えばオンラインで録音したものを提出させるようにしたとすれば,その音声ファイルを教員は全員分聞くことができますよね。それについてどんなフィードバックを出すかは教員次第ですが,少なくとも教室内の1/40と,課題の1/40は全然違うと思うんです。課題だと厳密には1対1×40ですからね。その状態であれば,教員側も教室では注意が向かなかったものに気づける可能性もありますし,気づいたことをフィードバックする可能性も教室内よりも高くなるのではないかと思います。研究とかやったら面白いかもしれませんね(簡単に言うけどちょっと考えただけでいくつもの問題が思い浮かびますけども)。

授業外での個別対応が増える

個人的には,対面の授業がない分個別対応の重みが増して,特に語学の授業は逆にクオリティがあがるのではないかなと思ったりしています。対面の授業だと,授業が終わったらみんな終わりって感じになるし,それは教員もそういうケースが多いのではないかと思います。

ところが,オンラインだと例えばオフィスアワーみたいなものの概念もなくなると言ってもいいですよね。そりゃ24/7で学生対応することが教員に求められているということではないんですが,学生からのコンタクトがあればオンライン上でなら対応するという教員は少なくないのではないでしょうか。また,普段はメールかアポ取って研究室しか選択肢がないけれど,オンラインだから学生からの質問を受け付けやすくしている(手段を複数用意して提示している)教員も多いかもしれません。

学生もオンラインのやりとりに否が応でも慣れてくるはずですので,メールだったり掲示板だったり,質問する手段を使うハードルも低くなるような気がします。そうすれば,対面授業のときにはあまり教員にコンタクトをとったり質問したりしなかったような学生も個別対応での教育機会が増えるかもしれません。

また,教員側も,オンライン授業の鍵は学生へのフィードバックである(というかこれがないのではだめだとさえされている)というのは重々承知の上で授業をデザインしているはずですから,いつもよりもフィードバックにリソースを割くのではないかと私は思っています。もちろん,準備の時点で燃え尽きてしまうようだとフィードバックまで手が回らないということになる可能性も考えられますが,授業に費やしているエネルギーがフィードバックにいく可能性は十分にあるのではないかなと。この点は異論がある方もいらっしゃるかもしれませんけど。

おわりに

というわけで,授業の質が下がるかもしれないと思っている学生さんに言いたいのは,とにかくわからないことはガンガン教員に質問しようということですね。教員から与えられるものを待っているだけでは,授業の質が下がるということもあるかもしれません。したがって,自分から学習機会を積極的に確保しにいく姿勢が,通常時以上に求められていると言えるでしょう。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。